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潰瘍性大腸炎ー新薬登場で明らかになってきた病態学とは
潰瘍性大腸炎は難病に指定されている疾患です。近年、潰瘍性大腸炎の病態解析が大幅に進んだことで、治療法のさらなる進歩が期待されています。本記事では、潰瘍性大腸炎について札幌医科大学消化器・免疫・リ...
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潰瘍性大腸炎ー新薬登場で明らかになってきた病態学とは

公開日 2017 年 02 月 08 日 | 更新日 2017 年 12 月 15 日

潰瘍性大腸炎ー新薬登場で明らかになってきた病態学とは
仲瀬 裕志 先生

札幌医科大学医学部消化器内科学講座 教授

仲瀬 裕志 先生

潰瘍性大腸炎は難病に指定されている疾患です。近年、潰瘍性大腸炎の病態解析が大幅に進んだことで、治療法のさらなる進歩が期待されています。本記事では、潰瘍性大腸炎について札幌医科大学 消化器・免疫・リウマチ内科学講座 教授の仲瀬裕志先生に解説いただきました。

潰瘍性大腸炎の病態解明の重要性

病態を明らかにすることで、治療の可能性が広がる

潰瘍性大腸炎では、免疫システムに異常が起き、サイトカインが過剰に生産されることによって、大腸に炎症が生じます。すなわち、大腸の炎症が現れる前には、大腸の粘膜でサイトカインのバランスの崩れが起きます。一般的に、潰瘍性大腸炎の患者さんは腹痛や発熱など、体に症状が現れてから医療機関を受診しますが、疾患自体は症状が発現する前(サブクリニカル)の状態から始まっているのです。

そのため潰瘍性大腸炎の治療には、症状が現れる前、つまりサイトカイン過剰分泌の病態学を明らかにすることが重要です。これが明らかになれば、今とは違った治療アプローチができる可能性が出てきます。

潰瘍性大腸炎の病態研究が進展したきっかけ 

新薬の治療効果の差から「患者背景の違い」が見えてきた

潰瘍性大腸炎の病態研究が大幅に進んだ背景には、生物学的製剤の登場があります。

生物学的製剤は近年登場した新薬であり、潰瘍性大腸炎の治療を大きく変えた薬剤です。生物学的製剤は既存の治療薬とは機序が異なり、サイトカインを標的とします。例えば、現在日本で使用されている生物学的製剤「インフリキシマブ」「アダリムマブ」は、サイトカインの一つであるTNF-αの過剰な産生を抑制します。これらの薬剤の効果は既存薬と比較すると有用である例が多いため、潰瘍性大腸炎治療を飛躍的に進歩させました。

しかし、これらの生物学的製剤では治療が効きにくい例があることがわかってきました。その原因を検討したところ、TNF-α以外のサイトカインに異常が起きていることが原因ではないか、と考えられるようになりました。つまり同じ潰瘍性大腸炎でも、TNF-αが発症の原因になっている患者さんと、TNF-α以外のサイトカインが原因になっている患者さんが存在し、このことが薬剤効果の違いに現れているのではないか、と予想されたのです。

最新の研究で明らかになった潰瘍性大腸炎の病態学

同じ潰瘍性大腸炎でも、患者によって異なる「サイトカインのプロファイル」

潰瘍性大腸炎の病態には、いくつかのサイトカインが関与していることが分かっています。その中で最も有名なものがTNF-αですが、そのほかにもIL-6、IL-12/IL-23、IL-10などのサイトカインの関与が示唆されています。

そして近年の研究で、同じ潰瘍性大腸炎でも、患者さんによってそれぞれサイトカインの過剰分泌量が異なることがわかってきました。つまり、患者さんのなかでもTNF-αが優位、IL-1bが優位であるケースがあります。また一種類のサイトカインのみが過剰になるのではなく、TNF-α、IL-6、IL-12/IL-23、IL-10、それらすべてが軒並み過剰分泌されていることもあります。このように多種のサイトカインが過剰になる場合は、サイトカインの合成を担う転写因子に異常があるケースだと考えられます。

このように同様の疾患であっても、症例ごとのサイトカインのプロファイルは全く異なることがわかってきています。

潰瘍性大腸炎はそれぞれの「サイトカイン病」と捉えることができる

このような知見から、潰瘍性大腸炎はひとつの名称でひとくくりにできるものではなく、TNF-α disease(TNF-α病)、IL-1b disease(IL-1b病)など、それぞれのサイトカイン病という疾患概念で捉えることができると思います。そして、それぞれのサイトカインのプロファイルに基づいた治療方針を組み立てることで、より適切な治療が可能になるのではないでしょうか。

最新の病態学に基づいた潰瘍性大腸炎の治療とは

仲瀬先生

サイトカインのプロファイルに基づいた治療を展開する

私は、このような最新の病態学に基づいてサイトカインのプロファイルに基づいた治療を展開していくべきだと考えます。

現在の日本で使用できる生物学的製剤はTNF-αを標的としたものに限られ、どのような症例であっても抗TNF-α抗体製剤が使われるのが現状です。もちろんこれらの薬剤によって多くの症例が寛解へと導かれますが、サイトカインのプロファイルを調べ、TNF-α以外のサイトカインの産生が過剰になっている場合には、それぞれのサイトカインを標的とする治療が選択されるべきでしょう。

患者さんにとって適切で、近道な治療を

目の前にいる患者さんはいったい何が原因で症状が引き起こされているのかを考えることで、患者さんにとって最も適切で、より近道な治療を提供することが医師の務めだと思います。

一昔前までの潰瘍性大腸炎治療は、ステロイドによって炎症を抑える方法が主流でした。しかし生物学的製剤が登場したことで、根本的な病因に迫った治療が可能になりました。そして病態学が明らかになりつつある今、これからは根本原因を突き詰め、個々の病態に沿った治療を展開することが私たちの責務だと思います。これからはサイトカインのプロファイルを調べ、Patient-oriented therapy(個々の患者を意識した治療)が行われる時代になるでしょう。

潰瘍性大腸炎では特にオーダーメイド治療が重要視される

潰瘍性大腸炎と似た疾患である「クローン病」も、小腸や大腸に炎症がおこる疾患で、大腸粘膜組織のサイトカインの産生異常が発症や増悪に関与します。しかし興味深いことに、クローン病の場合には非常に多くの症例で抗TNF-α抗体製剤による治療が奏効するのです。このことからも、炎症性腸炎のなかでも特に潰瘍性大腸炎は、個々の病態に合わせたオーダーメイドの治療が必要だといえるでしょう。

病態に基づいた治療を展開するために

オーダーメイド治療をより簡単にできるようにする必要がある

潰瘍性大腸炎の病態学に基づき、オーダーメイドの治療法を普及させていくためには、より簡便に患者個々の病態を明らかにする検査方法が必要です。

近年では興味深い検査法が出てきています。ヨーロッパにおける事例ですが、薬剤投与中の患者から採取した血清に、専用の試験紙を浸すだけで、患者の血液中の生物学的製剤濃度を簡便に調べる方法が確立されつつあります。薬剤の血中濃度を明らかにできることで、個々の患者さんの状態に応じ、薬剤の投与量を検討することができます。

このような治療に反映させることができる簡便な検査方法は、患者個々の病態に合わせた治療を実演する上では必要不可欠です。この潰瘍性大腸炎治療の領域でも、オーダーメイド治療の実現に役立つ簡便な検査法を生み出せたら良いと考えています。

研究結果を治療法の開発へと結びつけていくことが重要

病態解明は大幅に進んでいますが、その結果を実際に患者さんの治療へと活かしていくには、薬剤を開発し治験を行う必要があるため少し時間がかかります。しかし昔に比べれば薬剤開発のスピードは早くなっています。さらに海外ですでに使用されている薬剤を日本で使えるようにする手続きも、昔に比べると格段に早くなっています。研究の結果が実臨床に活かされるまでの期間は確実に短くなっているため、今後の成果が期待されます。

潰瘍性大腸炎(仲瀬裕志先生)の連載記事

炎症性腸疾患の病態研究における第一人者。炎症性腸疾患とサイトメガロウイルスの関連など世界に先駆ける最先端の研究のみならず、消化器内科分野における外科、放射線科、化学療法部との密接な協力体制により患者さんのよりよいQOLのための高度先進医療を目指す。

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