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ヒルシュスプルング病とは?症状や検査方法について

ヒルシュスプルング病とは?症状や検査方法について
内田 広夫 先生

名古屋大学大学院医学系研究科 小児外科学教授

内田 広夫 先生

目次
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この記事の最終更新は2018年12月07日です。

生まれつきの病気であるヒルシュスプルング病は、生後早期から嘔吐やお腹の張り、便秘などの症状が起こります。

今回は、ヒルシュスプルング病とはどのような病気であるのか、名古屋大学大学院医学系研究科 小児外科教授である内田広夫先生にお話を伺いました。

ヒルシュスプルング病の手術治療については記事2『ヒルシュスプルング病の治療法 手術の方法や合併症について』をご覧ください。

ヒルシュスプルング病とは、腸内の一部またはすべてにおいて食べ物などを運ぶための蠕動運動(ぜんどううんどう)に関わる「神経節細胞(しんけいせつさいぼう)」が生まれつきない病気です。

神経節細胞がない部分の腸管(=蠕動運動ができない腸管)は食べ物をうまく通過させることができません。そのため、病変部の手前の正常な腸管で食べ物が止まってしまい、便として排出することが困難になります。また、正常な腸管が拡張し、神経節細胞がない腸管が細くなる特徴もみられます。

赤ちゃんがお母さんのお腹の中で成長するとき、腸管の神経節細胞は必ず小腸→大腸→肛門というように、上から下に順番に降りてくるように発生します。このとき、何らかの原因で神経節細胞の発生が途中で止まってしまうことで、ヒルシュスプルング病を発症します。

つまり、ヒルシュスプルング病による病変(神経節細胞がない腸管)は必ず肛門側から連続して発生します。そのため、検査では腸のいちばん下を調べることで、ヒルシュスプルング病を診断することができます。

ヒルシュスプルング病 腸の画像

ヒルシュスプルング病は、神経節細胞の発生がどの段階で止まってしまったかによって、いくつかのタイプに分かれます。

ヒルシュスプルング病の多くは、肛門からS状結腸までの神経節細胞がないタイプです。中には、大腸のすべてに神経節細胞がないタイプや、小腸にまで病変が及んでいるタイプもあります。

ヒルシュスプルング病の発生頻度は、約5,000人に1人といわれています。男女比は3:1で男児に多くみられます。また、神経節細胞がない範囲が長い病態になると男女差はなくなることも分かっています1)

ヒルシュスプルング病の原因は、遺伝による「家族性」のものと原因不明の「孤立性」のものに大別されます。

遺伝的にヒルシュスプルング病を発症する原因のひとつとして、RET(レット)遺伝子の変異が挙げられます。神経節細胞が発生する段階で、RET遺伝子に変異が起こると、神経節細胞の発生が止まってしまうことが研究で分かっています。

そのほか、エンドセリン受容体の異常などでもヒルシュスプルング病を発症することが分かっていますが、多くの方は遺伝性とは関係なく発症しています。

ヒルシュスプルング病の症状の中で、生まれてすぐにみられる特徴的な症状は、主に以下の3つです。

  • 生まれてから1日たっても排便がない
  • お腹が張っている
  • 胆汁性嘔吐(たんじゅうせいおうと)(緑色の嘔吐)がある

生まれてすぐの赤ちゃんにこれらの症状がみられる場合には、ヒルシュスプルング病または小腸閉鎖症を疑います。

赤ちゃんによっては、生後すぐに先述のような症状がみられないことがあります。その場合には、生後しばらくしたあとにみられる重度の便秘によってヒルシュスプルング病が疑われます。

通常、赤ちゃんは1日のうちに頻回に排便をしますが、ヒルシュスプルング病の赤ちゃんは1日に1回も便が出ないことがあります。

離乳食が始まると、便秘症状はさらに顕著になります。新生児期に便秘の症状がなくても、1〜2歳で起こる重度の便秘症状によって初めてヒルシュスプルング病と診断されるお子さんもいらっしゃいます。

冒頭でもお話ししましたが、ヒルシュスプルング病では、神経節細胞がない部分の腸管は細く、その手前にある腸管は拡張する特徴があります。ヒルシュスプルング病が進行すると、大きく拡張した腸管が圧力に耐えきれず破裂し穴が開く、新生児大腸穿孔(せんこう)が起こることがあります。

近年、ヒルシュスプルング病は進行する前の早期に診断できるようになってきたため、新生児大腸穿孔の発症数は少なくなってきていますが、突然大腸穿孔が起きるような病態の場合は、ヒルシュスプルング病を念頭において手術を行う必要があります。

これらの症状からヒルシュスプルング病が疑われる場合には、一般的に以下の3つの検査を行います。

<ヒルシュスプルング病の検査方法>     

  • 注腸造影検査
  • 直腸肛門弛緩(しかん)反射検査
  • 直腸吸引粘膜生検

注腸造影検査とは、肛門からバリウムを注入し造影して、大腸の形を確認する検査です。ヒルシュスプルング病では、神経節細胞がない腸管が細くなっていて、その手前の腸管が大きく拡張している特徴があります。これをキャリバーチェンジ(caliber change)といい、注腸造影検査を行うことでキャリバーチェンジの有無を確認します。

通常、便が直腸に到達すると、肛門管にある外肛門括約筋(肛門を取り囲んでいる肛門を締める機能を持つ筋肉)が一瞬ゆるみ、すぐにまたもとに戻ります。これを弛緩(しかん)反射といいますが、ヒルシュスプルング病の方にはこの反射がありません。そのため、ヒルシュスプルング病が疑われる場合には、直腸肛門弛緩反射検査で弛緩反射の有無を確認します。

検査ではまず、外肛門括約筋の圧力を測定するための圧力計と、直腸を膨らませるバルーンを肛門から挿入します。

正常な場合には、バルーンで直腸が膨らむと、外肛門括約筋が緩み肛門の圧力が下がり、しばらくすると圧力は元に戻ります。しかし、ヒルシュスプルング病では、バルーンを膨らましても外肛門括約筋の圧力に変化がみられないため、この圧力の変化を確認します。

直腸吸引粘膜生検とは、直腸の一部を採取して、採取した組織を染色(アセチルコリンエステラーゼ染色)し顕微鏡で確認する検査です。

ヒルシュスプルング病では腸管に神経節細胞がないために、神経節細胞に対してはたらきかけるシナプスというサインだけが出続けてしまいます。すると、結果的にシナプスの繊維が腸管に増殖します。この繊維は、アセチルコリンエステラーゼという酵素で染色される特性を持つことから、採取した組織をアセチルコリンエステラーゼで染色して、繊維の有無を確認します。

これら3つの検査をすべて行い、ヒルシュスプルング病であると確定診断されたら治療を行います。引き続き、記事2『ヒルシュスプルング病の治療法 手術の方法や合併症について』ではヒルシュスプルング病の治療法についてお話しします。

 

【参考】

1)高松英夫・福澤正洋. 標準小児外科学第7版.医学書院.2017

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