院長インタビュー

科学の進歩に沿った医療の提供に励む公益社団法人鹿児島共済会 南風病院

科学の進歩に沿った医療の提供に励む公益社団法人鹿児島共済会 南風病院
貞方 洋子 先生

南風病院 理事長

貞方 洋子 先生

目次
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この記事の最終更新は2019年01月28日です。

公益社団法人鹿児島共済会 南風病院は、鹿児島県鹿児島市にある急性期病院です。がんの診断・治療・研究に力を入れており、全身を一度に検査できるPET/CTを使った画像診断や、手術支援ロボットを使った腹腔鏡手術など、鹿児島県がん診療指定病院として質の高いがん医療の提供に努めています。

「地域の人たちが、楽しく、笑って、毎日過ごすお手伝いをしたい」とおっしゃる、理事長の貞方洋子先生にお話を伺いました。

南風病院の外観

当院は1954年に結核療養所として誕生しました。当時は、戦後の混乱期にあり、結核患者が多くいました。医師4名、看護師17名による、内科・呼吸器科の2診体制で診療を開始しました。開院当時は、ほとんどの病床が結核病床でした。しかしその後は、消化器科、脳神経外科、腎臓内科、循環器科、心臓血管外科と、地域のニーズに合わせて徐々に新しい診療科を開設してきました。

2018年1月時点現在は、診療科数19科、病床数338床(2018年1月時点)を有する急性期病院として、地域の皆さんに向けてよりよい医療の提供に努めています。

現在、当院の診療の中心的機能は、がんの予防・診断・治療・緩和ケアです。2009年には、5大がん(肝臓がん、肺がん胃がん、結腸がん、直腸がん)を対象とした症例数が認められ、鹿児島県がん診療指定病院に指定されました。

2014年10月から消化器疾患の救急患者さんを24時間体制で受け入れており、地域の救急医療の充実に貢献できるように取り組んでいます。救急車の受け入れ台数は、2015年度1,880件、2016年度2,033件と、年々増加しています。また、2016年度の当院への患者さんの紹介率は75.2%であり、当院からの逆紹介率は104.6%と共に高い数値を示しています。当院は2005年8月に地域医療の中核を担う地域医療支援病院にとして承認されました。、地域の医療機関との連携を密にし、地域医療の充実をめざしています。

当院に入院されている患者さんのなかでもっとも多い病気疾患は、「がん(悪性腫瘍)」です。いわゆる5大がんの患者さんが多く、「すこし未来の、やさしい医療を。」をモットーに、がんの予防、検診、診断・治療、そして緩和ケアまでを提供できる診療体制を構築しています。

胃がん大腸がんなどは、消化器内科・消化器外科が連携した消化器病センターが診療に取り組んでいます。女性医師が行う大腸内視鏡検査やCT検査も開始しました、毎年受診者が増えています。また、消化器がんのなかで予後が悪いとされているすい臓がんについては、当院の医師と地域の先生方とが連携して「すい臓がん早期発見プロジェクト」を立ち上げ、診断・治療に積極的に取り組んでいます。また早期発見の難しい食道がんに対しては、食道がんの危険因子を評価する問診票を用いて可能な限り早い発見に努めています。

2016年1月には、手術支援ロボットによる消化器がん手術(胃がん・大腸直腸がんの手術)を行いました。2016年度の実績は、胃がん9例、直腸がん26例と徐々に症例数を増やしています。これからは消化器のみならず泌尿器科・産婦人科でもこの手術支援ロボットを利用し、前立腺がんや子宮頚がんの手術にも積極的に利用していこうと考えています。

手術支援ロボットを利用した手術の様子

消化管の早期がんに対して、開腹せずに腫瘍を切除する治療法としてESD(内視鏡的粘膜下層剥離術(以下、ESD)が、開発されました。これは、リンパ節転移の可能性のきわめて低い粘膜内にとどまるがんを対象にしています。内視鏡を操作しながら高周波ナイフを使ってがんの周りの粘膜を切開し、がんよりも下の粘膜下層のレベルで病変を剥がし取る手技です。

消化管のがんにおける治療法のなかでは患者さんの体に負担が少ない治療として、胃がんにおいては2006年、食道がんでは2008年、大腸がんに対する治療方法としてでは2012年に、それぞれ保険適応となり普及してきました。当院でも、このESDによる治療は2009年にESD実施機関として承認されて以来、2017年12月現在までに1,000例以上を実施しています。

当院は、20015年8月に鹿児島県より地域医療支援病院の承認を受け、地域の中核医療を担う急性期病院として、専門的な医療を提供しています。地域の医療機関の先生方から検査や手術のご紹介をいただき、当院で適切な治療を実施します。その後患者さんの症状が安定したら、地域の医療機関の先生方に紹介いたします。

当院は急性期病院であるため、発熱・脱水・低栄養といった急性期には該当しない症状での入院依頼については、これまでは受け入れが困難でした。しかし、地域の医療機関の先生方から、特にご高齢の患者さんの入院に対するニーズが高く、柔軟に対応できるよう、2017年9月に地域包括ケア病棟(31床)を設置しました。急性期ではないが入院が望ましいしたほうが安心な患者さんや、当院で手術を終えたあと、すぐの在宅復帰が難しい患者さんに対して、できるだけ当院に入院していただき、医師・看護師・リハビリスタッフ・MSW(医療ソーシャルワーカー)などがチームとなって在宅復帰に向けたリハビリテーションや退院支援を行います。地域包括ケア病棟の設置をきっかけに、さらなる地域医療支援機能を充実させていきたいと思います。

当院から30kmキロほど離れたところに姶良市立北山診療所という診療所があります。同診療所が位置する姶良市周辺は過疎化、高齢化の進んだ地域で、専門性の高い医療を受けることが難しい状態でした。当院はこの北山診療所に消化器内科や循環器科・整形外科の担当医を派遣し、定期的に診察を行っています。

内視鏡検査や心臓超音波検査も実施しており、病気疾患の早期発見に努めています。これらの活動から、2012年12月にへき地医療拠点病院に指定されました。

北山地区の皆さんからは、住み慣れた地域で専門的な医療を受けられると、非常に喜ばれています。当院の医師も、自分の医療技術が役に立ち、患者さんに喜ばれていることを肌で実感し、とてもやりがいを感じています。

地域住民の高齢化にともない、1998年には「訪問看護ステーションみなみ風」、1999年には「居宅介護支援事業所みなみ風」、2011年には「療養通所介護事業所みなみ風」を開設しました。ご自宅で安心して療養していただけるよう、当院との連携はもちろん、地域の医療機関や関連機関と連携して在宅療養でのトータルケアに取り組んでいます。

当院の訪問看護師は、医師の指示による診療の補助やリハビリテーション、医療機器の着脱や点滴・チューブ類の管理、ターミナルケアなど、さまざまな業務を行います。末期がんの患者さんには医療依存度が高い方が多いため、24時間365日いつでもご自宅に駆け付けられるようにしています。ご家族や地域の医療機関の先生方からも信頼いただけていると感じています。これからも、患者さんやご家族が安心して自宅で過ごしていただけるようサポートしてまいります。

2017年10月に「南風はつらつ健康クラブ」を立ち上げ、第1回目の実施では34名の地域のみなさまが参加してくださいました。歯科衛生士からの口腔ケアの話、言語聴覚士からの誤嚥性肺炎を防ぐ嚥下体操、そして院長からの健康にまつわる講話を行い、最後は参加者全員で健康弁当をいただきました。参加者同士も健康管理の話などに花が咲き、和気あいあいとした楽しい会になりました。これからも地域の高齢者の皆さんの生きがいづくりをサポートし、健康維持・増進につなげていきたいと考えています。

「南風はつらつ健康クラブ」講話の様子

患者さんには、なるべくご自宅にいるような感覚になっていただけるように、さまざまなところに気を配っています。たとえば、夕食の配膳時間など細かい部分にも目を向け、病院のホスピタリティを上げる努力をしています。職員には「自分の家族を入院させたいと思える病院をめざそう」といつもいっています。

また当院は、がんの予防・診断・治療をはじめ、救命救急医療救文急医療、高度急性期医療をご提供し、地域とともに発展し続ける病院でありたいと思っています。これからも地域の医療機関の先生方と連携しながら、地域の皆さんが楽しく、元気に過ごせるよう、あたたかく思いやりのある医療の提供に努めてまいります。