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お腹の不調は腸内細菌の乱れが原因? 腸内細菌と大腸がんの関連、食事療法について

お腹の不調は腸内細菌の乱れが原因? 腸内細菌と大腸がんの関連、食事療法について
泉 千明 先生

医療法人山下病院 消化器内科医長(健診センター兼務)

泉 千明 先生

目次
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「腸内細菌」という言葉を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。原因不明の便秘や下痢が続いたり、ガスが溜まりやすかったりといった症状が続く場合、腸内細菌のバランスを整えることで症状が改善することがあります。また、腸内細菌と大腸がんなどの病気の関連についても、近年少しずつ明らかとなってきています。

今回は、山下病院 消化器内科医長である、泉 千明先生に腸内細菌についてお話を伺いました。

腸内細菌とは、口から入ってきた食べ物や飲み物をエサとしながら、腸に生息している細菌のことです。人間の腸内には、1,000種類ほどの腸内細菌が生息しているといわれています。その数は、人間の体を形成している細胞よりも多く、報告によって異なりますが、約500〜1,000兆個であるといわれています。

また、腸内細菌がびっしりと腸内に生息している様子は、「(くさむら):植物の群れ」にたとえて、腸内フローラ腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう))と呼ばれています。

2019年現在、腸内細菌については明らかになっていないことも多くあります。しかし、日進月歩で研究が進められている分野であり、どんどんと新しいことが分かってきています。

腸内細菌には、大きく分けて以下の3つのタイプがあります。

  1. 体によい影響を与える有益な菌(生きるためのエネルギーを生成したり、免疫力を高めたりするはたらきを持つ)
  2. 体に悪い影響を与える有害な菌(腸内で腐敗してガスを発生させたりする)
  3. 状況によって体に与える影響が変わる菌

それぞれ、1は善玉菌、2は悪玉菌、3は日和見菌(ひよりみきん)と一般的に呼ばれてきましたが、最近はその概念も変わりつつあります。

先述した腸内細菌は、さまざまな種類の菌が雑多に存在していることが望ましいといわれています。ですから、たとえ有益な菌であったとしても、その数が極端に多すぎると、体に悪影響をもたらすことがあります。

実際に、便秘や下痢、腹痛といったお腹の症状がある方の腸内細菌のバランスを調べてみると、健康な方の腸内細菌のバランスから大きく逸脱していることが分かっています。

また、腸内細菌のバランスの乱れが、糖尿病がんといった全身の病気を引き起こす可能性も示唆されています。ただし、詳しいメカニズムについては明らかになっていないことも多いのが現状です。

腸内細菌の中には、大腸がんの発症リスクとなる腸内細菌がいることも分かっています。

これまでの研究では、「フソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)」という細菌の数が、大腸内に多く存在していると、大腸がんや大腸ポリープといった、大腸腫瘍の発症リスクが上昇することが分かっていました。

さらに2019年6月には、大阪大学を中心とした研究チームが、フソバクテウム・ヌクレアタム以外の、大腸がんの発症にかかわる細菌を特定したことを発表しており、これから先、さらなる研究が進んでいくと考えます。

今後の研究結果によっては、検便で腸内細菌を調べるだけで、大腸がんのリスクが判定できる時代が来ることも期待されます。

冒頭でお話しした通り、腸内細菌は、口から入ってきた食べ物をエサとしながら生息しています。そのため、食生活が乱れると、腸内細菌のバランスにも乱れが生じ、便秘や下痢、腹痛といった腹部症状を引き起こすことがあります。

このような腹部症状には、以下のような食事療法が有効な場合があります。

腸内細菌①

プロバイオティクスとは、「腸内細菌のバランスを整え、体によい効果を与える生きた微生物」のことです。代表的なものに、乳酸菌、ビフィズス菌、納豆菌、麹菌(こうじきん)酪酸菌(らくさんきん)があり、上図に示す食品に多く含まれています。

プロバイオティクスは、毎日摂取することが大切です。なぜなら、プロバイオティクスは、大腸を通過している間は体によい効果をもたらしますが、大腸に定着することはなく、最終的には便と一緒に排出されてしまうためです。腸内細菌を調べる検査で、数の少ない腸内細菌があれば、それを補うような食事指導を行います。

腸内細菌②

プロバイオティクスは腸内細菌そのものですが、プレバイオティクスは腸内細菌のエサとなる食品のことを指します。具体的には上図に示したような、水溶性食物繊維、オリゴ糖、糖アルコール、レジスタントスターチといった食品が、腸内細菌が好んで食べるエサとなるといわれています。

プロバイオティクスやプレバイオティクスを摂取しても腹部症状がなかなか改善しない場合には、反対に不要な腸内細菌を減らす食事療法が有効な場合があります。

それが、「FODMAP(フォドマップ)」と呼ばれるものを除去した食事療法で、一部の過敏性腸症候群IBS*の患者さんにおいて効果が期待されます。

FODMAPは、以下の食品の略称です。

------------------------

Fermentable(発酵性の)

Oligosaccharides(オリゴ糖:はちみつ、大豆製品など)

Disaccharides(二糖類:牛乳、ヨーグルト、海藻類、きのこ類など)

Monosaccharides(単糖類:果物など)

And

Polyols(ポリオール:ガムなどの菓子類など)

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一般的に、これらは体によい影響を与える腸内細菌を含む食品として知られています。

しかし、IBSの患者さんの中に、FODMAPをうまく処理できないために、大腸内で腸内細菌が異常に発酵してお腹の張りがみられたり、腸内の糖質濃度の上昇によって腸内に水分が引き込まれて、下痢の症状がみられたりする方がいらっしゃいます。

*過敏性腸症候群(IBS)……検査を行っても炎症や潰瘍といった器質的疾患が認められないにもかかわらず、下痢や便秘、腹痛、腹部膨満感などの下腹部の不快な症状が持続すること(厳密には診断基準があります:RomeⅣ)

泉先生

当院では、腸内細菌の数や種類について調べることのできる外来を開設しています。お腹の症状が持続しているにもかかわらず、できる限りの検査を行ってもどこにも異常がみつからない患者さんに対して、検査を受けてみるか相談しています。

具体的には以下のようなことを調べることができます。

  • 菌の多様性
  • 主要な細菌(乳酸菌、ビフィズス菌、酪酸産生菌)の割合
  • 腸内の菌構成                 
  • エクオール産生菌の有無

など

これらを調べたうえで、管理栄養士による食生活の指導を行います。

当外来の受診にかかる費用は、腸内細菌の検査と管理栄養士による食事指導で、税別17,000円です(保険外診療のため自費)。また、本当に腸内細菌の問題なのか、他疾患のスクリーニングができているか確認のため別途医師による診察を受けていただきます。

腸内細菌については、まだまだ明らかになっていないことも多いです。そのため、腸内細菌を調べれば、必ず症状が改善できたり、病気が予防できたりするわけではありません。しかし、腸内細菌を調べて、それに合わせた食生活を送ることで、お腹の症状を改善できる場合があります。全身を調べても何も病気がないにもかかわらず、なかなかお腹の症状がよくならない方の一助になれば幸いです。

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