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慢性閉塞性肺疾患(COPD)の症状 ~息切れ、咳、たんが続く場合は医療機関へ相談を~

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の症状 ~息切れ、咳、たんが続く場合は医療機関へ相談を~
三島 渉 先生

横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック 理事長

三島 渉 先生

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COPD(chronic obstructive pulmonary disease:慢性閉塞性肺疾患)は、これまで慢性気管支炎肺気腫と呼ばれていた病気の総称で、喫煙や大気汚染などが原因となり閉塞性換気障害(通常より息が通りづらくなること)が現れることが特徴です。

COPDの大きな原因は喫煙で、COPD患者の約90%に喫煙歴があり、喫煙者の15~20%がCOPDを発症すると考えられています。また、40歳以上の8.6%、約530万人の患者がいると推定されていますが、多くが未診断かつ未治療だと考えられています。

COPDは数年かけて進行し、初期症状は痰が絡む軽い咳が出る程度であるため、見過ごされて気付かないうちに進行することもあります。本記事ではCOPDの症状について詳しく解説します。

COPDは数年かけて進行するため、症状が徐々に悪化することがあります。時期ごとの具体的な症状は以下のとおりです。

COPDの初期症状の1つは、透明なたんが絡む軽い咳です。これらは起床直後に悪化することが一般的で、そのまま一日中続くこともあります。さらに、坂道や階段をのぼる程度の運動で息切れすることもあります。

また、この時期に気管支炎や肺の感染症にかかることで息切れの症状に気付くこともあるとされています。COPDの患者が気管支炎などにかかった場合、咳の回数やたんの量が増え、たんの色も透明や白っぽい色から黄色または緑色っぽい色に変化します。

40~50歳代頃に発症した場合、60歳代後半になるまでは息切れがさらに激しくなり、喘鳴(ぜんめい)(ぜいぜいする)、発作的な呼吸困難のほか、肺炎や体重減少、喀血(咳とともに血が出ること)などが起こることもあります。

肺感染症と息切れ

喫煙者の場合は特に、運動時の息切れがより激しくなりやすいといわれています。さらに、肺炎をはじめとする肺感染症が発生することも増え、その際は安静にしていても息切れが激しくなり、感染症から回復しても着替えや入浴程度の動作で息切れが続く場合があります。

また、COPDが進行するにつれて特殊な呼吸法が習慣となることもあります。特に肺気腫を併発した患者の場合は、息を吐くときに口をすぼめたり、立った状態で台に手や肘をついたりすることで呼吸筋の動きがよくなり、呼吸が楽になることがあるためです。

頭痛や皮膚の変色

呼吸が正常にできなくなり血液中の酸素量が低下すると、さまざまな症状が現れます。たとえば睡眠中は特に呼吸が少なくなるため、起床時に頭痛が見られることがあります。さらに、チアノーゼ(血液中の酸素量が低下して皮膚が青黒くなること)の状態になることもあります。

気胸

何らかの原因により肺から空気が漏れ出し、肺がしぼむことを気胸といいます。COPDにかかっている場合、肺がもろくなって部分的に破裂し気胸になることがあります。この状態になると突然痛みや息切れが起こり、漏れた空気を胸から抜くための緊急処置が必要となることもあります。

体重減少

COPDが進行すると体重減少が見られることがあります。原因ははっきりしておらず人によっても異なりますが、息切れによって食事が困難になる、血液に含まれる腫瘍壊死因子(しゅようえしいんし)(不要な細胞の排除、感染防御、腫瘍に対抗する作用を持つ物質)の濃度が上昇することなどが要因として考えられています。

その他

ほかにも、以下のような症状が現れることがあります。

  • 脚のむくみ:肺性心(肺の中の血圧が高くなることで心臓の自分から見て右側が拡大した状態)によって腎臓への血流が少なくなり、尿が減って体内に水分がたまることで起こります。
  • 喀血:気管支の炎症によって咳とともに何度も血が出ることがあります。この場合は肺がんの可能性もゼロではありません。
  • 樽状胸:肺に空気がたまり続け、膨張して胸が樽のように大きくなった状態です。

COPDが重症化して血液中の酸素量が低下すると、血液中により多くの赤血球が放出され、二次性赤血球増多症につながります。さらに、心臓から肺へ続く血管が収縮して血圧が上昇し、肺高血圧、肺性心につながることもあります。

また、COPD患者は不整脈や肺がんのリスクも高いといわれており、COPDが直接の原因かどうかは分からないものの、骨粗しょう症うつ病、冠動脈疾患、筋萎縮、胃食道逆流症などのリスクも高まるとされています。

COPDを診断する際はまず問診が行われます。喫煙歴が長い、慢性的な咳やたん、労作時呼吸困難(日常生活の中の軽い動きでも呼吸が困難、または違和感や不快感を覚えることがある状態)が見られる場合にCOPDが疑われます。

さらに、診断を確定するには呼吸機能検査(スパイロメトリー)が行われます。これは、息を最大限吸った後に吐ける全体量(努力性肺活量)とその際の最初の1秒間に吐ける量(1秒量)を測定するもので、1秒量÷努力性肺活量の数値(1秒率)が目安となります。さらに、気管支拡張薬を吸入した後の1秒率が70%未満かつほかの病気を除外できた場合にCOPDと診断されます。重症例ではX線やCT検査で異常が見られることもありますが、初期には異常が発見されないこともあります。

COPDの初期症状は咳やたん、運動時の息切れなどであり、風邪や加齢、体力低下などと勘違いされて見過ごされることがあります。しかし、進行すれば肺炎や肺高血圧などにもつながり、不整脈肺がんのリスクも高まるとされています。特に喫煙歴が長い場合はCOPDのリスクが高まるため、気になる症状がある場合は内科(主に呼吸器内科)の受診を検討するとよいでしょう。

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