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膵臓がんとはどのような病気? 主な治療法と早期発見のためにできること

膵臓がんとはどのような病気? 主な治療法と早期発見のためにできること
竹村 信行 先生

国立国際医療研究センター病院 肝胆膵外科 医長・診療科長

竹村 信行 先生

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膵臓(すいぞう)がんは、治療が難しく生存率の低いがんの1つです。進行するまで症状が現れにくい、がんの悪性度が高く再発しやすいなどの特徴があります。治療は手術、薬物療法、放射線治療、緩和ケアを組み合わせて行われますが、進行した状態で見つかると治療の選択肢が限られるため、可能な限り早期の発見が望まれます。今回は、国立国際医療研究センター病院 肝胆膵外科医長・診療科長の竹村 信行(たけむら のぶゆき)先生に、膵臓がんの特徴や主な治療法についてお話を伺いました。

膵臓がんとは、膵臓の膵管上皮細胞(膵管の内側をおおう細胞)ががん化したものを指し、生存率が低く予後の悪いがんといわれています。症状が出にくいため早期発見が難しく、進行した状態で見つかるケースが多いのが実情です。また、がん自体の悪性度が高く再発しやすいという特徴があります。

膵臓がんのほかにも、膵臓に発生する病気には、膵神経内分泌腫瘍(すいしんけいないぶんぴつしゅよう)膵管内乳頭粘液性腫瘍(すいかんないにゅうとうねんえきせいしゅよう)、SPT(Solid Pseudopapillary Tumor)などがあります。

膵神経内分泌腫瘍は、膵臓の内分泌機能(血糖値を調節するインスリンなどのホルモンをつくり分泌する機能)を担う細胞の異常な増殖により起こります。膵管内乳頭粘液性腫瘍は、膵管の中に増殖して膵管を拡張させる腫瘍で、進行するとがんになる可能性があります。SPTは若年女性に比較的多くみられる腫瘍です。

国立国際医療研究センター病院では、これらを含めさまざまな膵臓の病気に対応しています。

膵臓がんの直接の原因は分かっていませんが、一定の割合で家族性膵臓がんが起こるといわれています。家族性膵臓がんとは、親子あるいは兄弟姉妹に2人以上の膵臓がんの患者さんがいる家系の方に発症するものです。このため、血縁の方に、2人以上の膵臓がんの患者さんがいる方、または50歳未満の若年の膵臓がんの患者さんがいる方は、膵臓がん発症のリスクがあるといわれています。

そのほか、喫煙糖尿病などもリスク因子とされています。糖尿病が急に悪化した場合には膵臓がんの発症が疑われますので、詳しい検査を受けてください。

膵臓がんでは、一般的に早期に症状が現れるケースはまれですが、胆管(胆汁が流れる管)に近い膵頭部にがんができると胆汁の流れが遮断され、黄疸(おうだん)*が出ることがあります。一方、胆管から遠い膵体部・尾部にがんができると、お腹や背中の痛み、食欲不振や体重減少などの症状が現れることがあります。

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また、がんによって膵管を通る膵液の流れが閉塞(へいそく)することで膵炎(すいえん)**が起こると、お腹や背中の痛みが起こったり、糖尿病が急速に悪化したりすることがあります。

当院の例をお話しすると、膵臓がんの患者さんの半数以上が、上記のような症状が現れたことをきっかけに受診されます。そのほか、健康診断や別の病気で画像診断を受けた際に異常が見つかり来院されるケースもあります。

*黄疸:胆汁に含まれる色素が血液中に蓄積し、白目や皮膚が黄色くなったり、尿の色が濃くなったりする症状。

**膵炎:膵臓に炎症が起こること。

膵臓がんをできる限り早く発見するために、黄疸や、お腹あるいは背中の痛みなどの症状があったり、糖尿病の急速な悪化がみられたりする場合には早期に受診してほしいと思います。また、急激な体重減少がみられる場合は、膵臓がんのみならず重篤な病気の可能性が考えられますので、迷わず受診してください。

血縁のあるご家族の中に膵臓がんの患者さんがいる場合には、発症のリスクが高まると考えられるため、腹部超音波検査やMRI検査を受けるとよいと思います。さらに人間ドックなどでも腹部超音波検査やMRI検査、腫瘍マーカー検査*を受けるなど、定期的に詳しく調べておけば安心でしょう。これらの検査で膵臓がんが疑われた場合、CT検査を行います。

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提供:PIXTA

また、血縁のあるご家族の中にがんの患者さんがいる、いないにかかわらず、病気の早期発見のため、中高年以上の方には定期的に健康診断を受けることをおすすめしています。

*腫瘍マーカー検査:採血した血液から、がん細胞の特異的物質を調べる検査。

当院では、膵臓がんが疑われる場合、造影剤を使用した腹部造影CT検査を行います。特に、DynamicCTによって、臓器の状態を詳しく把握します。DynamicCTとは、造影剤注入後、短時間のうちに腹部を数回スキャンして変化を観察する検査です。さらに、MRI撮影により得られたデータをもとに膵管の走行や途絶などの状態を確認するMR胆管膵管撮影検査(MRCP)を行います。

これらの検査で腫瘤(しゅりゅう)(こぶ)が確認され、膵臓がんが疑われる場合には、超音波内視鏡下穿刺(せんし)吸引法 (EUS-FNA)を行います。この検査では、超音波内視鏡下で腫瘍に細い針を刺し細胞を採取し、その検体を調べて診断をつけます。

膵臓がんの治療には、主に手術、薬物療法(抗がん剤治療)、放射線治療、緩和ケアといった選択肢があり、がんの進行の程度や体の状態により検討されます。

がんの切除が可能な場合(手術+薬物療法)

手術でがんを切除できると考えられる場合は、治癒を目指して手術を行います。しかしそれだけでは再発率が高いことが知られているため、再発予防のために手術後の抗がん剤治療が必須とされています。また、がんの進行を抑える目的で手術前に抗がん剤治療を行うケースもあります。

がんの切除が難しい場合(薬物療法+放射線治療、緩和ケア)

手術によるがんの切除が難しい場合は、まずは抗がん剤治療を行います。抗がん剤によってがんが小さくなり、当初は切除困難だったものが切除可能となるケースもあるため、切除を目指して抗がん剤の治療を行うこともあります。

がんが限られた場所にとどまっているものの切除が困難な場合には、抗がん剤治療に加えて放射線治療を行うこともあります。また、病気が進行して痛みを伴う場合には、痛みや苦痛を和らげる緩和ケアを行います。

上述の治療法に加えて、今後はがんゲノム医療も期待できると考えています。がんゲノム医療とは、患者さんのがんの遺伝子変異を明らかにして、一人ひとりの体質や病状に応じた治療を行うものです。今後、それぞれの患者さんに適した抗がん剤開発が見込めると思っています。

また、2020年に膵臓がんに対するロボット支援手術が保険適用となり、当院でも導入を検討しているところです。ロボット支援手術には、手術による傷が小さい、体の深いところでも操作しやすいといったメリットがあるといわれています。開腹手術と同等の成果を得られるか、またどの程度の進行がんまで適応になるかなどの課題もありますが、今後さらに発展する可能性の高い手術だと考えています。

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