むこたとうしょう

ムコ多糖症

最終更新日:
2020年03月24日
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2020/03/24
更新しました。
2020/03/06
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概要

ムコ多糖症とは、“ムコ多糖”と呼ばれる物質の分解に必要な酵素が生まれつき不足、または欠損しているため、体内にムコ多糖が蓄積する病気のことです。非常にまれな病気で、日本での患者数はもっとも多いⅡ型で約330名、次に多いⅠ型で約100名と推定されています。(2013~2016年厚生労働省調査)

ムコ多糖とは、私たちの体を構成する一つひとつの細胞を取り囲むように存在し、潤滑油・緩衝材としてのはたらきを持つ物質です。また、細胞に栄養を運び、細胞内で作られた老廃物を受け取って排泄を促す大切な役割を担っています。しかし、ムコ多糖が必要以上に体内に蓄積してしまうと、全身にさまざまな影響が現れます。

なお、私たちの体内にあるムコ多糖にはいくつかの種類があり、それぞれ分解する酵素が異なります。このため、不足、欠損している酵素の違いによってムコ多糖症は七つのタイプ( I~IV、VI、VII、IX型, なおV、VIII型は欠番)に分けられています。それぞれのタイプによって現れる症状は違い、同じタイプであっても人によって症状の程度などは異なるのが特徴です。

この病気は一般的には、時間をかけてムコ多糖が蓄積していくため乳児期に症状が現れることは少なく、3~5歳頃に発達の遅れ、低身長、骨の変形、心疾患中耳炎などの症状が現れ、重症な場合には10歳前後で自力での歩行や呼吸が困難になるとされています。

治療は、諸症状を改善するための“対症療法”を行いつつ、生まれつき不足、欠損している酵素の補充療法などが行われ、Ⅰ型、Ⅱ型の早期では骨髄移植が行われることもあります。

原因

ムコ多糖症は、体内のムコ多糖を分解するための酵素が生まれつき不足、欠損していることによって引き起こされ、その酵素の発現に関わる遺伝子の変異が原因とされます。

また、上でも述べたように、ムコ多糖症は不足したり欠損していたりする酵素の種類によって七つのタイプに分けられており、それぞれ原因となる遺伝子の変異は異なります。

たとえば、ムコ多糖症の中でもっとも患者数が多いとされているムコ多糖症Ⅱ型(ハンター症候群)では、X染色体(性染色体の一種)上のIDSという遺伝子の変異が原因で正常な酵素が発現されないことが分かっています。

このように、ムコ多糖を分解する酵素が不足、欠損することで体内にムコ多糖が蓄積すると、多くの臓器や骨格などがダメージを受けて全身にさまざまな症状が現れるようになるのです。

症状

ムコ多糖症は不足、欠損する酵素の種類によって七つのタイプに分けられており、それぞれ現れる症状が異なります。

ムコ多糖症の症状は大きく分けて精神運動発達の遅れ、骨の変形、関節の異常、特徴的な顔貌(大きく開いた口、大きな舌、短い首、歯の異常など)、肝臓と脾臓の腫れ、目の異常(角膜混濁、緑内障など)が挙げられます。七つのタイプとも大なり小なりこれらの症状が現れることが多く、そのほかにも慢性中耳炎睡眠時無呼吸症候群心臓弁膜症鼠径(そけい)ヘルニア水頭症など全身にさまざまな合併症が起こりやすくなるとされています。

原因となる酵素の不足が軽度である場合は、症状が軽く進行も緩やかです。しかし、重症な場合には症状が強く現れ、治療しないと10歳前後で自力での歩行や呼吸が困難となり、寝たきり生活を強いられるようになるとされています。なお、精神発達遅滞など中枢神経系の障害はⅢ型の全例とⅠ、Ⅱ、VII型の重症例で見られます。

検査・診断

ムコ多糖症が疑われる症状があるとき、または兄弟などの近い親族がムコ多糖症を発症していることが分かった場合は必要に応じて次のような検査を行います。

尿検査(尿中ムコ多糖量測定)

尿中に含まれるムコ多糖量を測定する検査が行われます。ムコ多糖症では尿中に分解されないまま多くのムコ多糖が排出されるようになるため、尿中のムコ多糖量の異常の有無が診断の大きな手掛かりとなります。

尿検査は簡便に行うことができるため、まずは尿中ムコ多糖量測定を行い、必要に応じて精密検査を行うのが一般的な検査の流れです。

血液検査(酵素活性測定、肝機能測定など)

血液検査でムコ多糖を分解するための酵素の活性を調べる検査も診断の重要な手掛かりとなります。

画像検査

ムコ多糖症は全身の臓器や骨格にさまざまな合併症を引き起こします。このため、ムコ多糖症による症状がすでに出ているような場合には、X線検査、CT検査、MRI検査、超音波検査などが必要に応じて行われ、合併症の有無や程度を評価する必要があります。

肝臓や脾臓の腫れの程度も超音波などで正確に評価できます。

遺伝子検査

ムコ多糖症は遺伝子の変異が根本的な原因となる病気であるため、どのタイプのムコ多糖症か確定するためにも遺伝子検査が行われます。また無症状であっても、兄弟などの近い親族にムコ多糖症の患者がいる場合には、発症の可能性を探るため遺伝子検査が行われることもあります。

治療

ムコ多糖症の治療法はタイプや重症度によって異なりますが、主に次のような治療が行われています。

対症療法

ムコ多糖症では根治療法として以下に挙げる酵素補充療法、骨髄移植がありますが、治療範囲の限界や重篤な副作用などのため完全な治療法とはいえず、さまざまな合併症を改善し生活の質を上げる対症療法が重要な部分を占めます。

具体的には、水頭症に対するシャント手術、角膜混濁に対する角膜移植、心臓弁膜症に対する手術など、それぞれの症状や病状に合わせて治療が適宜行われます。

酵素補充療法

ムコ多糖症Ⅰ型、Ⅱ型、、IV、 VI型に対しては不足、欠損している酵素を補充する治療が行われています。原因となる酵素を点滴により時間をかけて静脈注射することで、病気の進行を抑える効果が期待されています。しかし、治療は毎週受けなければならず、さらに発熱などの副作用が現れることも少なくありません。また、骨の変形や心臓、脳などに対する効果は乏しいとされています。

骨髄移植(造血幹細胞移植)

発症早期では骨髄移植が行われることがあります。これは、血液のもととなる正常な幹細胞が移植されることで、そこから分化するいろいろな細胞が酵素を発現するようになり各臓器に蓄積したムコ多糖を分解する効果が得られると考えられているからです。主にムコ多糖症Ⅰ型とⅡ型で行われ、2歳未満で行われれば中枢神経症状の進行防止にも有効とされますが、効果は症状により差があります。またヒトのほぼ全ての細胞に存在する免疫に関与する組織適合抗原(HLA)の型が合わないと、骨髄提供者の細胞が患者の細胞を攻撃して重大な症状を引き起こす副作用(GVHD)が起こる頻度が高くなります。

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