肝臓

肝硬変(かんこうへん)

肝硬変とは

肝硬変とは、本来は柔らかい組織である肝臓が、線維化と呼ばれる変化をきたした結果として肝臓全体が硬くなる状態を指します。肝硬変を引き起こしうる原因としては、B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスを代表とするウイルス性疾患、長年のアルコール摂取、自己免疫の異常、薬剤など多岐に渡ります。

肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれることがあることからもわかるように、肝硬変を発症した初期であれば、必ずしも明確な自覚症状はありません。しかし肝硬変の状態が増悪すると、出血や腹水、意識変容などの重篤な症状が出現し、命に関わる可能性が出てきます。

肝硬変が進行すると、多くの場合には元のような健康な肝臓には戻りません。さらに、病初期の肝硬変から肝不全、肝臓がんといった重篤な病態に陥ると、よりいっそう治療は困難になります。したがって、肝硬変を来しうる原因疾患を明確に同定し、早期の段階から適切な治療介入を行うことが大切です。

治療に困難を極めることがある肝硬変ですが、近年では肝臓以外の細胞を用いて肝臓の細胞を再生・移植する治療方法も研究・開発されています。よりいっそう治療の安全性を高めることを目的の一つして、治験も実施されており、今後の肝硬変治療の新しい展開となることが強く期待されています。

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原因

肝臓に対して何かしらの障害が持続すると、肝炎、肝硬変へと徐々に病状が進行します。肝硬変になると、「線維化」と呼ばれる変化を起こしていることになります。「肝硬変」という病名からも推定されるように肝硬変に陥った肝臓は硬く、健康な状態であれば柔らかい肝臓と比べると大きく異なる様相を呈することになります。

肝硬変の原因として大きな割合を占めるのが肝炎ウイルスです。具体的には、約65%がC型肝炎ウイルス、約15%がB型肝炎ウイルスといわれています。残り約10~15%がアルコールによるものとされています。その他残りの10%の原因としては、ウィルソン病やヘモクロマトーシスなどの代謝性疾患、自己免疫性肝炎、胆汁うっ滞、うっ血などがいわれています。また最近では、非アルコール性脂肪肝炎 (NASH: nonalcoholic steatohepatitis) も肝硬変に発展する恐れがある疾患として注目されています。

症状

肝臓は沈黙の臓器といわれるように、自覚症状が出現しにくいことで知られています。肝硬変になった場合も例外ではありません。 肝硬変による症状は、肝機能がある程度保たれている「代償期」と、肝機能が低下した「非代償期」とで異なります。

代償期

病初期では取り立てて目立った症状がでないこともまれではありません。みられることがある症状としては、足や手、手指などの筋肉がつる「筋攣縮」がよくみられます。また、掌の膨らんでいる部分だけが赤くなり、そこに赤紫の小さな斑点が混じる「手掌紅斑」もたびたび指摘されます。またアルコール性肝硬変の場合には、上胸部から背中にかけて赤い小さな斑点とそこを中心に蜘蛛の足のように拡がった毛細血管がみられる「蜘蛛状血管腫」が認められることが多いです。

非代償期(黄疸や腹水の症状が出たとき)

非代償期になると、黄疸や腹水などの重篤な症状がみられるようになります。黄疸と関連して意識がぼんやりとしたり、皮膚がかゆくなる掻痒感(そうようかん)を引き起こしたりします。また腹水ではお腹が張った状態として認識され、腹水の程度がひどくなると呼吸にも影響が及び、息苦しさを覚えるようになります。

その他、非代償期に認められる症状としては、浮腫、肝性脳症、肝性脳症による「羽ばたき振戦」が代表的です。肝性脳症とは、肝臓が本来持つ解毒作用がうまくいかないことから引き起こされる状態であり、見当識(自分がどこにいるかなど基本的な状況がわからなくなること)に問題が出ます。また、昼夜逆転、意識変容などの症状がみられる場合もあります。この他にも多彩な症状が現れ、肝臓でのホルモン代謝が悪くなることから、男性の女性化 (女性化乳房など)、女性の男性化がおこることがあります。

検査・診断

肝硬変に陥ると、正常な肝細胞の機能が低下することになります。肝細胞の役割のひとつとして、タンパク質や凝固因子(血液を固める際に重要な物質です)を合成するというはたらきがあります。肝硬変における機能低下を反映して、血液検査にてアルブミン、血液凝固因子の値が低下していることが確認されます。その他、肝硬変に陥ると黄疸のもとであるビリルビンの値が高くなります。また、肝硬変になると脾臓が腫れてその機能が亢進することから、血小板数が減少します。

肝硬変では、超音波検査や腹部CT検査、腹部MRI検査といった検査を行い、肝硬変でみられる変化(表面がでこぼこしている、肝臓自体が小さいなど)を確認することも重要となります。

また上部消化管内視鏡検査を行うことで、食道静脈瘤といった異常血行路の形成状況を確認します。

治療

肝硬変の治療に際しては、肝硬変の原因になっているものに対してのアプローチと、肝硬変により引き起こされている症状に対してのアプローチの二つに大きく分けて考えることができます。

肝硬変の原因に対する治療としては、肝炎ウイルスを原因とした肝硬変に対しては抗ウイルス療法、アルコール性肝硬変の場合には断酒がすすめられます。このなかでも日本における肝硬変の原因として多いC型肝炎ウイルスに対する治療の進歩に伴い、肝機能の改善が期待できるようになりました。以前はインターフェロンを中心とした治療が行われていましたが、その副作用から高齢者などでは使用が難しく、また半数程度しかウイルスの排除ができませんでした。しかし近年使用が可能となった経口剤により、高い確率でウイルスを排除できるようになったことから、肝硬変の改善にも役立っています。

また、症状に対しての対症療法としては、浮腫や腹水に対しての利尿剤や血液製剤の投与、肝性脳症に対しての抗生物質やラクツロースの投与などを例に挙げることができます。

食事療法

肝硬変を発症すると食事について気をつける点も出てきます。

病初期の肝硬変であれば特に食事制限はありませんが、非代償期になると浮腫や腹水が出現しやすくなります。浮腫や腹水は、過剰な塩分摂取をすると増悪するため、塩分を控えることが重要です。

病状が進行した肝硬変においてはタンパク質をうまく代謝できなくなるため、タンパク摂取についても注意を払うことが求められます。タンパク質にはその特性上「窒素」が必ず含まれており、体内で代謝されることから体にとって毒となりうる「アンモニア」が産生されることになります。本来はこのアンモニアを代謝して無毒化させるはたらきを持つ肝臓ですが、肝硬変ではこの解毒作用がうまくいかなくなります。その他さまざまな影響もあり、タンパク質を摂取しすぎることから肝性脳症が生じます。このことを避けるために、非代償期にある肝臓に対しては少しでもタンパク質の負荷を減らす必要があり、タンパク摂取量を控えることが求められます。肝性脳症と関連して、便秘があると症状が増悪します。そのため、便秘を避けるような生活習慣、食事内容が重要です。

なお、「肝臓にはシジミがよい」といわれることがありますが、実際は過剰摂取を避けることが肝要です。

肝硬変に対するその他情報

  • 原発性胆汁性肝硬変(現:原発性胆汁性胆管炎)について

肝硬変という名称がつく疾患として、「原発性胆汁性肝硬変」が知られています。原発性胆汁性肝硬変は、自己免疫に関連した肝障害のひとつであり、自分自身の免疫機能が誤って自身の肝臓(肝臓内に存在する胆管)を破壊することから生じる病気です。中高年以降の女性に多いことで知られる病気であり、日本においては難病指定を受けている疾患のひとつです。

原発性胆汁性肝硬変に対しての根本的な治療薬はありませんが、「ウルソ」と呼ばれる薬剤がうまく反応することが多いです。ウルソをもちいることで胆汁の流れが改善され、症状改善に効果を示します。

原発性胆汁性肝硬変では病名に「肝硬変」という文字がみられるのですが、実際に肝硬変を発症することは少ないです。むしろ無症状のまま経過し、肝硬変を発症することなく過ごされる方も多くいらっしゃいます。そのため、「肝硬変」という言葉から引き起こされる誤ったイメージを避けることを目的として、2016年4月「原発性胆汁性胆管炎」と病名の変更がされました。

  • アルコール性肝硬変について

肝硬変の原因として、その他アルコールも看過することはできません。アルコールは肝臓で代謝される必要があるため、長期間大量に摂取を続けることはすなわち、肝臓に対して持続的にはたらくように酷使している状態を意味します。肝臓が長期間にはたらき続ける結果、アルコール性肝硬変に至ることがあります。アルコール性肝硬変では、アルコール以外の原因で発症する肝硬変と同様の症状が出現しえます。

実際にどの程度アルコールを摂取すると肝硬変になるかという摂取限度については個人差があります。すなわち、飲酒量や性別によってもアルコール性肝硬変に至るまでの期間は異なります。

アルコールは、肝硬変そのものの原因となるだけでなく、肝臓がんを引き起こす可能性も指摘されています。肝硬変や肝臓がんなど、アルコール関連の疾患を予防・治療をするためにも、適切な飲酒・禁酒がとても重要になります。

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