脊髄性筋萎縮症(SMA)について

長い間治療法がなかったSMAですが、近年では研究が進み、新たな治療法がいくつか登場しています。早期の発見・診断によって、治療の可能性が広がる可能性があるため、「SMAかな?」と思ったら、できるだけ早く小児神経科を受診しましょう

脊髄性筋萎縮症(SMA)とは?

脊髄性筋萎縮症せきずいせいきんいしゅくしょう(SMA)とは、運動神経細胞の異常によって体幹や腕・脚などの筋力低下、筋肉萎縮、筋緊張低下(神経や筋肉の異常により全身の筋肉が柔らかくなった状態)が起こる病気です。海外における発症頻度は1万人に1人、日本では乳幼児期に発症するSMAは10万人に1~2人と推定されています。SMA発症の頻度に男女差はありません。

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筋緊張低下とは

SMAは、発症の時期と症状の重さにより4つのタイプに分けられます。

タイプ 発症年齢 重症度 獲得できる運動機能
I型 生後0〜
6ヶ月まで
重症型 支えなしで座ることが難しい
II型 生後7ヶ月〜
1歳6ヶ月まで
中間型 支えなしで座ることはできる、自力で立つことは難しい
III型 生後1歳6ヶ月
〜20歳まで
軽症型 1人で歩くことができる(次第に歩けなくなることがある)
IV型 成人期以降 ケースにより異なる 1人で歩くことができる(症状の進行は緩やか)
参考:難病情報センター/小児慢性特定疾病情報センター

I型(別名:ウェルドニッヒ・ホフマン病)

I型は生後6か月までの乳児期に発症する重症型です。生後数週間のうちに運動機能が急激に低下します。支えなしに座ることができません。また、ミルクや水を飲むことが難しく、舌や指先には細かい震えがみられることがあります。多くのケースで呼吸不全を伴い、生命を維持するためには人工呼吸器が必要になります。

II型(別名:デュボビッツ病)

II型は1歳6か月までに発症する中間型です。支えがないと立ったり歩いたりすることは難しいです。神経が障害されることによる舌の小さなけいれん、手指の震えなどがみられます。成長するにつれて関節のこわばりや背骨の歪みが現れ、また、肺炎や無気肺(肺の空気がなくなる)になって呼吸不全を起こすことがあります。

III型(別名:クーゲルベルグ・ウェランダー病)

III型は1歳6か月以降、20歳までに発症する軽症型です。ある時点までは立ったり歩いたりできますが、徐々に立てない、歩けない、転びやすいといった運動症状が現れます。腕を挙げることが難しい場合もあります。

IV型(成人型)

IV型は成人期以降に発症するタイプです。軽度の筋力低下が現れます。認知機能の低下、呼吸器症状、消化器症状などはみられません。基本的に発症の年齢が高いほど進行のスピードは緩やかですが、症状には個人差があります。

筋緊張低下を疑ったときの症状チェックリスト
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SMAはどのように診断するの?

運動機能の発達の遅れ、筋力の低下などがみられる場合、神経の病気を調べる診察や血液検査、そのほか必要に応じて画像検査などを行うことがあります。赤ちゃんで発症するI型とII型は、乳幼児健康診断(いわゆる乳児健診)で筋緊張低下などの症状があり、異常を指摘されることもあります。
検査の結果SMAが疑われる場合には、遺伝子を調べる検査を行い、SMAに特有の遺伝子変異があるかどうかを確認します。

「SMAかな?」と思ったらなるべく早く小児神経科へ

SMAは進行性の病気です。治療をしなければ病状は進行し、運動機能の発達に影響を及ぼす可能性があります。治療を始めるタイミングが早ければ早いほど治療の効果が高いため、早い段階で発見し、適切に治療することがとても大切です。

参考:Sumner CJ, Crawford TO. Two breakthrough genetargeted
treatments for spinal muscular atrophy: challenges
remain. J Clin Invest 2018;128:3219–3227.

長い間根本的な治療がなかったSMAですが、近年では研究が進み、新たな治療法がいくつも登場しています。早期の発見・診断によって、治療の可能性が広がる可能性があります。「SMAかな?」と思ったら、小児神経科などの専門の医療機関の受診を検討しましょう。

脊髄性筋萎縮症(SMA)のお子さんが、早期に診断され、治療を受けるサポートとなる情報を紹介しています。詳しくはこちら

SMA(脊髄性筋萎縮症)は治療介入時期が予後を左右する――異変を感じたらすぐに行動を
東京女子医科大学病院 小児科 准教授
石垣 景子 先生
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SMAの原因とは?

SMAは脊髄の運動神経細胞の異常によって起こります。原因となるのは運動神経細胞生存(survival motor neuron:SMN)遺伝子です。SMN遺伝子に異常があると、運動神経のはたらきを維持するのに必要な「SMNたんぱく質」が不足し、筋力低下、筋肉萎縮、筋緊張低下などの筋肉の変化が起こるのです。

I型、II型のSMAではSMN遺伝子の異常が9割以上にみられ、遺伝子診断も可能です。 また、III型のおよそ半数、IV型の1~2割にSMN遺伝子の異常があることがわかっています。近年実用化された治療薬の中には、SMN遺伝子の機能欠損を補うことで患者さんの運動機能を改善するものがあります。

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監修医からのメッセージ

国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター
トランスレーショナル・メディカルセンター長
小牧 宏文 先生

治療研究が進み、これまで薬物治療が難しかったSMAの治療が大きく変わってきています。その治療効果をあげるためにはできるだけ早く診断し、治療につなげることが重要です。本記事も参考にしていただき、お子さんに病気が存在する可能性が否定できないと思われる場合には、小児神経科など、乳児の発達を専門に診ることができる医療機関への受診をおすすめします。