胃がん

ほかの病院では全摘をすすめられていた60歳代男性

最終更新日
2021年04月16日

がん研有明病院で胃外科部長を務める布部創也(ぬのべそうや)先生に、胃がんの症例について伺いました。

ほかの病院では全摘をすすめられていた60歳代男性

こちらの患者さんは胃の上部にがんが生じていたのですが、比較的がんの範囲が不鮮明で、切除範囲を決めるのが難しい状態でした。ほかの医療機関では胃の全摘をすすめられたそうですが、当院ではなんとか少しでも胃を残すことができないだろうかと頭を悩ませました。幸い、内科の医師がかなり詳しく検査をしてくれたおかげで、病変の位置や広がりが分かり、これなら胃亜全摘術で胃の一部を残せると判断されたため、胃亜全摘術を行うことになりました。

術後の後遺症も少なく退院

こちらの患者さんの胃亜全摘術は腹腔鏡下手術(ふくくうきょうかしゅじゅつ)によって行われました。無事にがんを取りきることができたほか、胃の一部を残すことができたため、術後の後遺症も少なく元気に過ごされています。現在手術からおよそ2年が経過しますが、今のところ再発はありません。このように胃がんでは内科の正確な診断力、外科の技術が伴ってこそ、根治性があり術後の生活の質を保てる治療が行えるのだと思っています。

がん研究会有明病院

〒135-8550 東京都江東区有明3丁目8-31 GoogleMapで見る

前の症例

がん研有明病院で呼吸器外科部長を務める文敏景(むんみんぎょん)先生に、肺がんの症例について伺いました。 初期の段階で発見された90歳代の高齢患者さん こちらの患者さんは、ほかのがんの治療後に胸部CTを撮影したところ、肺に初期のがんが発見された方です。発見時すでに90代でご高齢の方でしたが、体力もあり、肺の機能も正常だったため手術を行うことが検討されました。 低侵襲手術によって速やかに回復 こちらの患者さんの場合、完全胸腔鏡下手術で右の上葉を取り除く肺葉手術が行われました。完全胸腔鏡下手術は低侵襲(ていしんしゅう)手術の1つで、開胸手術と比較すると患者さんのかかる負担が小さいといわれています。 切除する肺の大きさは完全胸腔鏡下手術でも開胸手術でも変わりませんが、傷が小さい分術後の回復も早く、肋間筋(ろっかんきん)を温存できるので呼吸機能も保たれます。そのため、こちらの患者さんも術後は翌日から歩くことができ、手術から5日目には退院することができました。 現在、手術から5年以上が経過しましたが再発もなく、趣味のゲートボールを続けられているということです。 肺がんの治療方針を定める際は年齢だけでなく、その方の体力や呼吸機能を見て手術ができるかどうか判断することが大切です。90歳を過ぎて手術ができる方は限られますが、当院ではこの方のように体が元気な場合には、手術で治すことも検討しています。

次の症例

がん研有明病院で副院長と消化器外科部長兼食道外科部長を務める渡邊雅之(わたなべまさゆき)先生に、食道がんの症例について伺いました。 ほかの医療機関では手術が難しいとされていた50歳代男性 こちらの患者さんは頸胸部(けいきょうぶ)に進行した食道がんがあり、以前受診していた医療機関では手術が難しいと判断されて放射線治療を受けたといいます。しかし、治療後も腫瘍(しゅよう)が残ったままで気管にも浸潤しており、当院にお越しになったときはがんによって食道がかなり狭窄(きょうさく)し、水も飲めないような状態でした。前医で放射線治療後であり、手術治療以外に根治を目指せる治療方法がないと判断し、当院では手術治療を行うことになりました。 手術によってがんが根治し食べ物も食べられるようになった 手術治療では咽頭(いんとう)・喉頭(こうとう)・食道の全てを全摘し、縦隔気管孔を造設する手術を行いました。喉を温存することはできませんでしたが、がんをしっかり取り切ることができ、術後3年以上経過しますが今のところ再発はありません。また、当院を受診した当初は水も飲めないような状態でしたが、今では口から食べ物を摂取することができています。


関連の症例

  • 進行した状態で発見されたが胃を残す手術を行った患者さん

    日本赤十字社和歌山医療センターで院長補佐と第一消化管外科部長を務める山下 好人(やました よしと)先生に、胃がんの症例について伺いました。 進行した状態で発見されたが胃を残す手術を行った患者さん こちらの患者さんは胃の上部にがんが見つかり、発見時すでに進行している状態でした。このような進行した胃がんで手術を行う場合、胃全摘術を行うことが一般的です。しかし、胃の全摘を行うと術後の食事に不具合が生じるなど、患者さんの術後のQOL(生活の質)に悪影響が及ぶことが懸念されます。 そこで当院ではロボット支援下手術で胃の上部のみを切除し、私が考案したmSOFY法と呼ばれる吻合方法で胃の下部と食道をつなぎ合わせることにより、胃を残す手術を行うことにしました。 mSOFY法による吻合で食事も十分取れる状態になった 胃の上部を切除することによりがんを完全に切除できました。また、mSOFY法によって胃の下部と食道をつなぎ合わせたため、胃全摘術を行うよりも術後の食事をスムーズに行うことができ、逆流性食道炎や食べ物のつかえ感もなく、食事を取れるようになりました。 食事によって栄養状態も良好になり、続く再発防止のための抗がん剤治療も問題なく行えました。今のところ再発の心配もなく、旅行に行かれるなど元気に過ごされています。

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    NTT東日本関東病院 内視鏡部部長の大圃おおはた研けん先生に、胃がんの症例について伺いました。 胃に7つのがんが見つかった30歳代の女性 この方は若い女性で、まだ30歳代でした。胃に7つのがんが見つかりましたが、その1つ1つは内視鏡治療が適応になる早期の病変。個々の病変を分けて切除していく施設もあると思いますが、その場合入院期間は合計で1か月以上に及びます。そのため、当院では1回で全てのがんを取り切ることにしました。 この方の場合、数が多いことに加えて場所も悪かったので時間のかかる治療になることが予想されました。そこで、手術室で全身麻酔をかけ、より安全性を高めて治療を行いました。結果、5時間ほどかかりましたが1回で7つ全て取り切ることができました。 治療後は1週間ほどで退院し、今も元気に暮らしていらっしゃいます。年齢が若いということもあり、お腹に傷をつけることなく胃も残せたということは代えがたい価値のあることだったと思います。

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