肺がん
初期の段階で発見された90歳代の高齢患者さん
がん研有明病院で呼吸器外科部長を務める文敏景先生に、肺がんの症例について伺いました。
初期の段階で発見された90歳代の高齢患者さん
こちらの患者さんは、ほかのがんの治療後に胸部CTを撮影したところ、肺に初期のがんが発見された方です。発見時すでに90代でご高齢の方でしたが、体力もあり、肺の機能も正常だったため手術を行うことが検討されました。
低侵襲手術によって速やかに回復
こちらの患者さんの場合、完全胸腔鏡下手術で右の上葉を取り除く肺葉手術が行われました。完全胸腔鏡下手術は低侵襲手術の1つで、開胸手術と比較すると患者さんのかかる負担が小さいといわれています。
切除する肺の大きさは完全胸腔鏡下手術でも開胸手術でも変わりませんが、傷が小さい分術後の回復も早く、肋間筋を温存できるので呼吸機能も保たれます。そのため、こちらの患者さんも術後は翌日から歩くことができ、手術から5日目には退院することができました。
現在、手術から5年以上が経過しましたが再発もなく、趣味のゲートボールを続けられているということです。 肺がんの治療方針を定める際は年齢だけでなく、その方の体力や呼吸機能を見て手術ができるかどうか判断することが大切です。90歳を過ぎて手術ができる方は限られますが、当院ではこの方のように体が元気な場合には、手術で治すことも検討しています。
関連の症例
-
6年間の薬物治療後に手術が行われた患者さん
がん研有明病院で呼吸器外科部長を務める文敏景(むんみんぎょん)先生に、肺がんの症例について伺いました。 6年間の薬物治療後に手術が行われた患者さん こちらの患者さんは発見時すでに転移のあるステージIVの肺がんでした。そのため、最初の治療方針では手術治療の適応とはならず、薬物治療が行われることになりました。 しかし、薬物治療を6年継続したところ、手術ができる状態までがんが小さくなったため、手術治療が検討されることになりました。 薬物治療の効果で手術が可能となった こちらの患者さんの場合も、完全胸腔鏡下手術で肺の切除が行われました。低侵襲手術を行うと、開胸手術と比較して回復までの期間が短く済むため、次の治療にも早く移れるという特徴があります。こちらの患者さんの場合にも術後の経過がよく、今のところ再発がないため、経過観察を続けています。 肺がんでは薬物治療の飛躍的な進歩によって、薬物治療でがんが小さくなり、手術治療ができるようになるケースが増えてきています。このように治療によって手術ができるようになった患者さんに対する手術のことを“サルベージ手術”といいます。
続きを読む -
左肺を切除後、右肺にもがんが発生した70歳代男性の肺がん
NTT東日本関東病院で呼吸器センター長と呼吸器外科部長を兼任する松本 順まつもと じゅん先生に、肺がんの症例についてお話を伺いました。 左肺を切除後、右肺にもがんが発生した70歳代男性の肺がん この患者さんはもともと肺がんで左の下葉を切除していたものの、手術後に右の上葉にもがんが発生し、手術を検討することになりました。もともと左の肺が半分しか残っていないため、右の肺をさらに切除することは呼吸機能の観点から見ても難しいと思いましたが、どうにか切除できないだろうかと頭を抱えました。 ロボット支援下手術の様子 こちらの治療では麻酔科*の先生と密に連携を取り、手術用ロボットを活用して切除すべき右の肺の上葉を膨らませながら手術を行いました。ロボット支援下手術では肺を膨らませたり、しぼめたりしながら治療ができるため、結果としてうまく上葉だけを切除することができました。治療をしたことによってがんが十分に取り切れたほか、呼吸機能も温存することができました。 *日本麻酔科学会麻酔科標榜医:小松 孝美
続きを読む