肺がん

初期の段階で発見された90歳代の高齢患者さん

最終更新日
2021年04月16日

がん研有明病院で呼吸器外科部長を務める文敏景(むんみんぎょん)先生に、肺がんの症例について伺いました。

初期の段階で発見された90歳代の高齢患者さん

こちらの患者さんは、ほかのがんの治療後に胸部CTを撮影したところ、肺に初期のがんが発見された方です。発見時すでに90代でご高齢の方でしたが、体力もあり、肺の機能も正常だったため手術を行うことが検討されました。

低侵襲手術によって速やかに回復

こちらの患者さんの場合、完全胸腔鏡下手術で右の上葉を取り除く肺葉手術が行われました。完全胸腔鏡下手術は低侵襲(ていしんしゅう)手術の1つで、開胸手術と比較すると患者さんのかかる負担が小さいといわれています。

切除する肺の大きさは完全胸腔鏡下手術でも開胸手術でも変わりませんが、傷が小さい分術後の回復も早く、肋間筋(ろっかんきん)を温存できるので呼吸機能も保たれます。そのため、こちらの患者さんも術後は翌日から歩くことができ、手術から5日目には退院することができました。

現在、手術から5年以上が経過しましたが再発もなく、趣味のゲートボールを続けられているということです。 肺がんの治療方針を定める際は年齢だけでなく、その方の体力や呼吸機能を見て手術ができるかどうか判断することが大切です。90歳を過ぎて手術ができる方は限られますが、当院ではこの方のように体が元気な場合には、手術で治すことも検討しています。

がん研究会有明病院

〒135-8550 東京都江東区有明3丁目8-31 GoogleMapで見る

前の症例

がん研有明病院で胃外科部長を務める布部創也(ぬのべそうや)先生に、胃がんの症例について伺いました。 胃の入り口に腫瘍ができてから2年が経過した患者さん こちらの患者さんは胃がんではなく、消化管間質腫瘍(しょうかかんかんしつしゅよう)(GIST)と呼ばれる腫瘍が胃の入り口部分にできていました。以前受診していた病院では胃の全摘をすすめられたそうなのですが、患者さん自身が手術を拒んだこともあり、当院を受診された頃には診断からおよそ2年が経過している状態でした。GISTは胃がんとは異なり、多少経過していても大きく進行することはありません。そのため、私たちは当院で手術を受けることを提案しました。 LECSによって胃を全て残して手術完了 当院ではGISTをはじめとする胃粘膜下腫瘍に対して腹腔鏡・内視鏡合同手術(LECS)と呼ばれる手術方法を開発し、治療にあたっています。この手術方法は外科の腹腔鏡下手術と内科の内視鏡手術が組み合わさったもので、腫瘍のある部分だけを限定的に切除することができ、術後の生活の質を保って治療が行えます。こちらの患者さんの場合にも胃の全てを温存し、腫瘍だけを取り除くことができたため、術後の後遺症もほとんどなく、お元気に過ごされています。


関連の症例

  • 左肺を切除後、右肺にもがんが発生した70歳代男性の肺がん

    NTT東日本関東病院で呼吸器センター長と呼吸器外科部長を兼任する松本 順まつもと じゅん先生に、肺がんの症例についてお話を伺いました。 左肺を切除後、右肺にもがんが発生した70歳代男性の肺がん この患者さんはもともと肺がんで左の下葉を切除していたものの、手術後に右の上葉にもがんが発生し、手術を検討することになりました。もともと左の肺が半分しか残っていないため、右の肺をさらに切除することは呼吸機能の観点から見ても難しいと思いましたが、どうにか切除できないだろうかと頭を抱えました。 ロボット支援下手術の様子 こちらの治療では麻酔科*の先生と密に連携を取り、手術用ロボットを活用して切除すべき右の肺の上葉を膨らませながら手術を行いました。ロボット支援下手術では肺を膨らませたり、しぼめたりしながら治療ができるため、結果としてうまく上葉だけを切除することができました。治療をしたことによってがんが十分に取り切れたほか、呼吸機能も温存することができました。 *日本麻酔科学会麻酔科標榜医:小松 孝美

    続きを読む
  • 手術の難航が想定された70歳代の高齢患者さん

    日本大学医学部附属板橋病院で呼吸器外科部長を努める櫻井裕幸(さくらいひろゆき)先生先生に、肺がんの症例について伺いました。 図:肋骨・椎体の一部合併切除を伴う右肺上葉切除術後の胸腔内の手術所見 私は手術が終わると、その日のうちに必ず行うことがあります。それは、手術記録を残し、その日の手術を振り返ることです。これまでにたくさんの患者さんの手術記録がありますが、その手術記録を読み返すとその時の手術風景が鮮明によみがえり、その手術経験の一つひとつが現在の私の手術力につながっています。外科医は手術を重ねることで、常に成長し続けなければならないと思っています。私の書いた手術記録の1つを紹介します(上図)。 その患者さんは70歳代の男性で、すでに肋骨(ろっこつ)や椎体までがんが浸潤し広がっており、肺がんとともに肋骨・椎体の一部を合併切除する必要がありました。これは呼吸器外科の手術の中でも難しい手術の1つです。手術自体も難航することが想定され、腕神経叢近傍の手術操作による上腕の神経症状が術後残ってしまう可能性もありました。手術に臨むにあたっては、術前に手術の手順を確認しながら手術のシミュレーションを繰り返し行いました。 術後の経過は順調で無事退院 その患者さんの手術は、がんの浸潤していた肋骨および椎体の一部の合併切除を伴う右肺上葉切除術で根治切除を遂行することができました。手術翌日には通常の術後管理と同様に、食事摂取や歩行を開始され、上腕に軽度のしびれ症状を認めましたが早期に退院できるまでに回復されました。患者さんが無事退院されて、大きな充実感を得たことを今でも鮮明に記憶しています。 その患者さんの肺がんは5年以上再発することなく経過し、患者さんを助けることができて本当によかったと思っています。今でも私の外来に通院され、毎年感謝の言葉とともに年賀状も欠かさずに送ってくださいます。手術が終わってからかなりの月日が経ちましたが、これからも健康でいられるようにサポートを行っていきたいと思っています。

    続きを読む