肺がん
左肺を切除後、右肺にもがんが発生した70歳代男性の肺がん
NTT東日本関東病院で呼吸器センター長と呼吸器外科部長を兼任する松本 順先生に、肺がんの症例についてお話を伺いました。
左肺を切除後、右肺にもがんが発生した70歳代男性の肺がん
この患者さんはもともと肺がんで左の下葉を切除していたものの、手術後に右の上葉にもがんが発生し、手術を検討することになりました。もともと左の肺が半分しか残っていないため、右の肺をさらに切除することは呼吸機能の観点から見ても難しいと思いましたが、どうにか切除できないだろうかと頭を抱えました。
ロボット支援下手術の様子
こちらの治療では麻酔科*の先生と密に連携を取り、手術用ロボットを活用して切除すべき右の肺の上葉を膨らませながら手術を行いました。ロボット支援下手術では肺を膨らませたり、しぼめたりしながら治療ができるため、結果としてうまく上葉だけを切除することができました。治療をしたことによってがんが十分に取り切れたほか、呼吸機能も温存することができました。
*日本麻酔科学会麻酔科標榜医:小松 孝美
関連の症例
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70歳代の男性
手術の進歩は日進月歩です。がんが広がっていたり合併症があったり、あるいはご年齢や体力的な面からこれまでは手術ができなかったりした方も、いつかは肺がんの手術の適応になる日が来るかもしれません。 これから紹介するのは、今までは難しかった手術に成功した例です。 肺の血管に食い込むステージIIIのがんに対する手術 この患者さんは、心臓から左の肺へ向かう動脈の付け根に広範囲に食い込む形でがんができてしまっていました。 通常このケースでは左の肺を大量に摘出する必要がありますが、肺を多く摘出してしまうと肺・呼吸機能に影響があります。また、この患者さんの場合は体力面から次に予定している治療に耐えられなくなってしまう可能性があったため、なるべく小さな範囲で切除することを方針としました。 そこでがんができた血管を切除した後にご自身の心膜を使って血管をつなぎ直す血管形成術を行い、結果として肺の左下葉(左の肺の下半分に相当する部分)を温存することができました。その後は抗がん剤治療、免疫チェックポイント阻害剤による治療も行い、手術から3年半経過した現在も、この方は再発もなく元気に生活を送られています。 当院では今後も新たな手術方法の開発に熱心に取り組み、手術の適応を広げていきたいと考えています。
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6年間の薬物治療後に手術が行われた患者さん
がん研有明病院で呼吸器外科部長を務める文敏景(むんみんぎょん)先生に、肺がんの症例について伺いました。 6年間の薬物治療後に手術が行われた患者さん こちらの患者さんは発見時すでに転移のあるステージIVの肺がんでした。そのため、最初の治療方針では手術治療の適応とはならず、薬物治療が行われることになりました。 しかし、薬物治療を6年継続したところ、手術ができる状態までがんが小さくなったため、手術治療が検討されることになりました。 薬物治療の効果で手術が可能となった こちらの患者さんの場合も、完全胸腔鏡下手術で肺の切除が行われました。低侵襲手術を行うと、開胸手術と比較して回復までの期間が短く済むため、次の治療にも早く移れるという特徴があります。こちらの患者さんの場合にも術後の経過がよく、今のところ再発がないため、経過観察を続けています。 肺がんでは薬物治療の飛躍的な進歩によって、薬物治療でがんが小さくなり、手術治療ができるようになるケースが増えてきています。このように治療によって手術ができるようになった患者さんに対する手術のことを“サルベージ手術”といいます。
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