肺がん
6年間の薬物治療後に手術が行われた患者さん
がん研有明病院で呼吸器外科部長を務める文敏景先生に、肺がんの症例について伺いました。
6年間の薬物治療後に手術が行われた患者さん
こちらの患者さんは発見時すでに転移のあるステージIVの肺がんでした。そのため、最初の治療方針では手術治療の適応とはならず、薬物治療が行われることになりました。
しかし、薬物治療を6年継続したところ、手術ができる状態までがんが小さくなったため、手術治療が検討されることになりました。
薬物治療の効果で手術が可能となった
こちらの患者さんの場合も、完全胸腔鏡下手術で肺の切除が行われました。低侵襲手術を行うと、開胸手術と比較して回復までの期間が短く済むため、次の治療にも早く移れるという特徴があります。こちらの患者さんの場合にも術後の経過がよく、今のところ再発がないため、経過観察を続けています。
肺がんでは薬物治療の飛躍的な進歩によって、薬物治療でがんが小さくなり、手術治療ができるようになるケースが増えてきています。このように治療によって手術ができるようになった患者さんに対する手術のことを“サルベージ手術”といいます。
関連の症例
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70歳代女性の肺がん
こちらの患者さんはもともと慢性胃炎や不眠の症状で近隣の内科を受診していたそうです。ある時から呼吸困難や血痰の症状がみられるようになり、X線やCTを撮影したところ肺がんが疑われ、当院にいらっしゃいました。受診された当初から呼吸の状態が悪く、調べてみると右の気管支がかなり狭窄(きょうさく)していました。右の肺は左の肺と比較すると心臓がない分大きく、右の肺の機能が落ちることは命に関わる可能性もあります。そこで当院ではすぐに呼吸器インターベンション治療を行い、右の気管支を広げて狭窄を防ぐためのステントを留置しました。 呼吸器インターベンションにより薬物治療・放射線治療が可能になった その後の診断で、こちらの患者さんは肺の扁平上皮がんであることが分かりました。呼吸器インターベンション治療を行うことによって呼吸の状態が改善されたため、ステントを入れた状態のまま抗がん剤による薬物治療や放射線治療を開始し、その後免疫治療を開始しました。免疫治療によってがんがかなり小さくなってきているため、今後様子を見てステントを抜去することを予定しています。こちらの患者さんのように治療初期から呼吸器インターベンション治療を行う方は比較的珍しいのですが、呼吸器インターベンションによって全身状態がよくなると、治療の選択肢が広がるケースもあります。
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多くの併存疾患を抱えたステージIIの患者さん
順天堂大学医学部附属順天堂医院で、呼吸器外科教授を務める鈴木すずき健司けんじ先生に、肺がんの症例について伺いました。 多くの併存疾患を抱えた患者さん この患者さんは70歳代後半の患者さんでステージはII、肺がんが発見された時にはすでに狭心症(きょうしんしょう)や脳梗塞(のうこうそく)を既往歴として持っており、かつ透析もされている状態でした。放射線治療の選択が取られる場合もあるなかで、この患者さんの場合には放射線肺臓炎の可能性があったため手術治療となりました。 透析をされている方の場合、時間が勝負です。手術中に体の老廃物がたまり続けるため、長時間の手術には耐えられません。通常4~5時間かかる手術を1時間ほどで済ませなければならないのです。 この患者さんに対しても手術治療を行い、結果は無事に終了。いくつかの病気を抱えていたために合併症などの可能性も懸念されていましたが、手術後の経過もよく合併症なく退院されました。合併症がある症例に強いというのは、総合病院ならではの特徴だと思います。
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