肺がん
50歳代男性ステージIVbの肺がん
こちらの患者さんは頭痛や吐き気、性格の変化などをきっかけに近隣の脳外科を受診したところ、頭に大きな腫瘍が見つかり、当院に紹介されてきました。最初は当院の脳神経外科を受診され手術を受けたのですが、その後詳しく検査を進めたところ肺がんであることが判明し、最初に見つかった頭の腫瘍は肺がんの脳転移であることが分かりました。手術後も取り切れなかった頭の腫瘍は大きくなり、放射線治療や2度目の脳外科の手術を受けるなど不安定な状態が続きました。しかし採取した腫瘍を調べていくとがんの表面にPD-L1と呼ばれるタンパク質が存在していることが分かり、肺がんの免疫治療薬が効く可能性があると考えられたため、当科で免疫治療を行うことになりました。
免疫治療によって肺がん、脳転移が小さくなった
こちらの患者さんの場合は免疫治療が大変よく効き、頭の腫瘍も小さくなったほか、今のところ肺のがんも大きく進行せずに経過しています。もともと肉体労働をしている方で、頭の手術を行った後は寝たきりに近い状態まで体の状態が悪化した時期もありましたが、現在では免疫治療を継続しながら、もとの肉体労働をこなせるほどお元気になられています。免疫治療が行われるようになってから、こちらの患者さんのようにがんの根治は難しくても、治療を継続しながらがんと共に生活できる方が増えてきています。
関連の症例
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初期の段階で発見された90歳代の高齢患者さん
がん研有明病院で呼吸器外科部長を務める文敏景(むんみんぎょん)先生に、肺がんの症例について伺いました。 初期の段階で発見された90歳代の高齢患者さん こちらの患者さんは、ほかのがんの治療後に胸部CTを撮影したところ、肺に初期のがんが発見された方です。発見時すでに90代でご高齢の方でしたが、体力もあり、肺の機能も正常だったため手術を行うことが検討されました。 低侵襲手術によって速やかに回復 こちらの患者さんの場合、完全胸腔鏡下手術で右の上葉を取り除く肺葉手術が行われました。完全胸腔鏡下手術は低侵襲(ていしんしゅう)手術の1つで、開胸手術と比較すると患者さんのかかる負担が小さいといわれています。 切除する肺の大きさは完全胸腔鏡下手術でも開胸手術でも変わりませんが、傷が小さい分術後の回復も早く、肋間筋(ろっかんきん)を温存できるので呼吸機能も保たれます。そのため、こちらの患者さんも術後は翌日から歩くことができ、手術から5日目には退院することができました。 現在、手術から5年以上が経過しましたが再発もなく、趣味のゲートボールを続けられているということです。 肺がんの治療方針を定める際は年齢だけでなく、その方の体力や呼吸機能を見て手術ができるかどうか判断することが大切です。90歳を過ぎて手術ができる方は限られますが、当院ではこの方のように体が元気な場合には、手術で治すことも検討しています。
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多くの併存疾患を抱えたステージIIの患者さん
順天堂大学医学部附属順天堂医院で、呼吸器外科教授を務める鈴木すずき健司けんじ先生に、肺がんの症例について伺いました。 多くの併存疾患を抱えた患者さん この患者さんは70歳代後半の患者さんでステージはII、肺がんが発見された時にはすでに狭心症(きょうしんしょう)や脳梗塞(のうこうそく)を既往歴として持っており、かつ透析もされている状態でした。放射線治療の選択が取られる場合もあるなかで、この患者さんの場合には放射線肺臓炎の可能性があったため手術治療となりました。 透析をされている方の場合、時間が勝負です。手術中に体の老廃物がたまり続けるため、長時間の手術には耐えられません。通常4~5時間かかる手術を1時間ほどで済ませなければならないのです。 この患者さんに対しても手術治療を行い、結果は無事に終了。いくつかの病気を抱えていたために合併症などの可能性も懸念されていましたが、手術後の経過もよく合併症なく退院されました。合併症がある症例に強いというのは、総合病院ならではの特徴だと思います。
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