肺がん
70歳代女性の肺がん
こちらの患者さんはもともと慢性胃炎や不眠の症状で近隣の内科を受診していたそうです。ある時から呼吸困難や血痰の症状がみられるようになり、X線やCTを撮影したところ肺がんが疑われ、当院にいらっしゃいました。受診された当初から呼吸の状態が悪く、調べてみると右の気管支がかなり狭窄していました。右の肺は左の肺と比較すると心臓がない分大きく、右の肺の機能が落ちることは命に関わる可能性もあります。そこで当院ではすぐに呼吸器インターベンション治療を行い、右の気管支を広げて狭窄を防ぐためのステントを留置しました。
呼吸器インターベンションにより薬物治療・放射線治療が可能になった
その後の診断で、こちらの患者さんは肺の扁平上皮がんであることが分かりました。呼吸器インターベンション治療を行うことによって呼吸の状態が改善されたため、ステントを入れた状態のまま抗がん剤による薬物治療や放射線治療を開始し、その後免疫治療を開始しました。免疫治療によってがんがかなり小さくなってきているため、今後様子を見てステントを抜去することを予定しています。こちらの患者さんのように治療初期から呼吸器インターベンション治療を行う方は比較的珍しいのですが、呼吸器インターベンションによって全身状態がよくなると、治療の選択肢が広がるケースもあります。
関連の症例
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初期の段階で発見された90歳代の高齢患者さん
がん研有明病院で呼吸器外科部長を務める文敏景(むんみんぎょん)先生に、肺がんの症例について伺いました。 初期の段階で発見された90歳代の高齢患者さん こちらの患者さんは、ほかのがんの治療後に胸部CTを撮影したところ、肺に初期のがんが発見された方です。発見時すでに90代でご高齢の方でしたが、体力もあり、肺の機能も正常だったため手術を行うことが検討されました。 低侵襲手術によって速やかに回復 こちらの患者さんの場合、完全胸腔鏡下手術で右の上葉を取り除く肺葉手術が行われました。完全胸腔鏡下手術は低侵襲(ていしんしゅう)手術の1つで、開胸手術と比較すると患者さんのかかる負担が小さいといわれています。 切除する肺の大きさは完全胸腔鏡下手術でも開胸手術でも変わりませんが、傷が小さい分術後の回復も早く、肋間筋(ろっかんきん)を温存できるので呼吸機能も保たれます。そのため、こちらの患者さんも術後は翌日から歩くことができ、手術から5日目には退院することができました。 現在、手術から5年以上が経過しましたが再発もなく、趣味のゲートボールを続けられているということです。 肺がんの治療方針を定める際は年齢だけでなく、その方の体力や呼吸機能を見て手術ができるかどうか判断することが大切です。90歳を過ぎて手術ができる方は限られますが、当院ではこの方のように体が元気な場合には、手術で治すことも検討しています。
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50年間タバコを吸っていた60代男性の肺がん
複十字病院 院長を務める大田 健(おおた けん)先生、呼吸器センター長(内科)兼がんセンター長を務める吉森 浩三(よしもり こうぞう)先生に、肺がんの症例についてお話を伺いました。 50年間タバコを吸っていた60代男性の肺がん こちらの患者さんはもともとヘビースモーカーでおよそ50年間タバコを吸っていらっしゃるとのことでした。ある時から咳が止まらなくなり禁煙を始めたそうですが、半年経っても咳が治まらず、仰向けで眠れないほどの息苦しさや体重減少などの症状が現れて病院を受診したそうです。その後当院に紹介されCT検査を行ったところ、気管分岐部にがんが見つかり、これが息苦しさなどの原因になっていることが分かりました。 当院では、CTを撮ったその日に緊急で内視鏡治療を行い、気管分岐部にある腫瘍(しゅよう)の一部分を焼き切ることによって気道の確保に努めました。しかしそれでも息苦しさの症状が続いていたため、さまざまな処置を行い、最終的に気管支に金属の筒(ステント)を入れることによって気管支を広げ、仰向けで寝ても息苦しくない状態にまで改善させました。 内科治療の進歩によって再発なく5年以上経過 診断の結果、こちらの患者さんは肺がんが進行しており、手術は難しいと判断されたことから、抗がん剤治療と放射線治療を併用する化学放射線療法を実施することになりました。化学療法では何度も点滴を行うため、血管を傷めてしまうことがあります。そこで、皮下にポートを挿入し、血管への負担がなくいつでも治療が行えるようにしました。 治療を数か月実施した後5年間の経過観察を続けましたが、幸い再発はなく、追加治療の必要はないと判断され、ポートを抜去して現在に至ります。こちらの患者さんは、当院で迅速な検査、処置、診断、治療を受けることができ、その結果よい経過をたどることができた例だと思っています。
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