肝細胞がん

50歳代男性ステージ2の肝細胞がん

最終更新日
2022年07月08日

こちらの患者さんはもともと糖尿病や高血圧症でほかの病院に通院していました。BMI27.2とやや肥満体型ではあったものの健康状態に問題はなく肝機能も正常な方でしたが、念のため受けたエコー検査で肝臓に3cm腫瘍(しゅよう)が見つかり、当院に紹介されてきました。糖尿病などの基礎疾患はありましたが体の状態はお元気だったため、当院では肝臓の全区域切除を行い、肝臓のおよそ14を切除しました。ステージ2で術後の化学療法などは行っていませんが、今のところ術後半年以上経過しても再発はなく、定期的な通院を続けながらお仕事に復帰されて、元気に生活していらっしゃいます。

糖尿病・肥満・高血圧症のある方は定期的なエコー検査が大切

近年はウイルス性肝炎によらない肝細胞がん非ウイルス性肝細胞がんの患者さんが増えてきています。肝炎にかかっている方はもともと肝細胞がんのリスクが高いことが分かっているためエコー検査など定期的な肝臓の画像検査を行う方が多いのですが、非ウイルス性肝細胞がんの多くは糖尿病・肥満・高血圧症などよりありふれた病気を持つ方が多く、定期的な検査をしている方は少ないといえます。また肝細胞がんは症状が現れにくいことからも、症状を理由に病院を受診することはごくまれで、早期発見が難しい傾向にあります。

こちらの患者さんの場合には、糖尿病や高血圧症で受診していた病院の医師がたまたまエコー検査を行ったことにより、幸い早期で発見することができました。糖尿病や肥満、高血圧症などの患者さんは、できる限り定期的にエコー検査を受けるなど、肝細胞がんの検査を受けてほしいと思います。

北海道大学病院

〒060-8648 北海道札幌市北区北十四条西5丁目 GoogleMapで見る

前の症例

こちらの患者さんはもともとS状結腸がんでほかの病院を受診し、手術を受けていました。その後肝臓に複数の転移が見つかったものの、同院の内科の医師から切除不能と判断され、薬物治療を受けていたそうです。薬物治療は一時的には効果を示すものの、また悪化してしまい、トータルで3剤の治療薬を使用しましたが改善には至らず、最終的に緩和ケアをすすめられたといいます。「ほかに選択肢はないのか」と疑問に思った患者さんは、セカンドオピニオンを受けるために北海道からはるばる福岡の病院に足を運んだそうです。そこで出会った医師がたまたま私の知り合いで「北大病院なら手術してくれるはず」と紹介してくださり、当院を受診することになりました。 肝臓だけでなく肺にも転移があったが無事手術で切除 転移した肝臓の腫瘍を診てみると、腫瘍の数はやや多いものの切除可能と考えられたため、当院では手術を行うことに決定しました。しかし、手術の直前になって肝臓だけでなく肺にも1cm程度の転移があることが判明しました。そこで呼吸器外科の医師とも相談し、肝臓の手術を行った後に肺の手術も連続して行うことになりました。こちらの患者さんの場合、幸い肝臓も肺も手術でうまく腫瘍を取りきることができ、術後化学療法から1年以上が経過しますが、今のところ再発はなく、元気に生活されています。 肝臓に生じたがんの治療方針を決める際は、外科、内科、放射線治療科などさまざまな診療科の観点から考えることがとても大切です。時にはいくつかの治療を組み合わせることでより効果的な治療が行える可能性もあります。転移性肝がんも以前は腫瘍の個数によって切除の可否が決まっていましたが、今は個数に関係なく手術が行える可能性もあります。そのため、さまざまな診療科の連携体制のある病院で治療を受けることが大切です。

次の症例

こちらの患者さんはもともと慢性胃炎や不眠の症状で近隣の内科を受診していたそうです。ある時から呼吸困難や血痰の症状がみられるようになり、X線やCTを撮影したところ肺がんが疑われ、当院にいらっしゃいました。受診された当初から呼吸の状態が悪く、調べてみると右の気管支がかなり狭窄(きょうさく)していました。右の肺は左の肺と比較すると心臓がない分大きく、右の肺の機能が落ちることは命に関わる可能性もあります。そこで当院ではすぐに呼吸器インターベンション治療を行い、右の気管支を広げて狭窄を防ぐためのステントを留置しました。 呼吸器インターベンションにより薬物治療・放射線治療が可能になった その後の診断で、こちらの患者さんは肺の扁平上皮がんであることが分かりました。呼吸器インターベンション治療を行うことによって呼吸の状態が改善されたため、ステントを入れた状態のまま抗がん剤による薬物治療や放射線治療を開始し、その後免疫治療を開始しました。免疫治療によってがんがかなり小さくなってきているため、今後様子を見てステントを抜去することを予定しています。こちらの患者さんのように治療初期から呼吸器インターベンション治療を行う方は比較的珍しいのですが、呼吸器インターベンションによって全身状態がよくなると、治療の選択肢が広がるケースもあります。


関連の症例

  • 40歳代女性の転移性肝がん

    こちらの患者さんはもともとS状結腸がんでほかの病院を受診し、手術を受けていました。その後肝臓に複数の転移が見つかったものの、同院の内科の医師から切除不能と判断され、薬物治療を受けていたそうです。薬物治療は一時的には効果を示すものの、また悪化してしまい、トータルで3剤の治療薬を使用しましたが改善には至らず、最終的に緩和ケアをすすめられたといいます。「ほかに選択肢はないのか」と疑問に思った患者さんは、セカンドオピニオンを受けるために北海道からはるばる福岡の病院に足を運んだそうです。そこで出会った医師がたまたま私の知り合いで「北大病院なら手術してくれるはず」と紹介してくださり、当院を受診することになりました。 肝臓だけでなく肺にも転移があったが無事手術で切除 転移した肝臓の腫瘍を診てみると、腫瘍の数はやや多いものの切除可能と考えられたため、当院では手術を行うことに決定しました。しかし、手術の直前になって肝臓だけでなく肺にも1cm程度の転移があることが判明しました。そこで呼吸器外科の医師とも相談し、肝臓の手術を行った後に肺の手術も連続して行うことになりました。こちらの患者さんの場合、幸い肝臓も肺も手術でうまく腫瘍を取りきることができ、術後化学療法から1年以上が経過しますが、今のところ再発はなく、元気に生活されています。 肝臓に生じたがんの治療方針を決める際は、外科、内科、放射線治療科などさまざまな診療科の観点から考えることがとても大切です。時にはいくつかの治療を組み合わせることでより効果的な治療が行える可能性もあります。転移性肝がんも以前は腫瘍の個数によって切除の可否が決まっていましたが、今は個数に関係なく手術が行える可能性もあります。そのため、さまざまな診療科の連携体制のある病院で治療を受けることが大切です。

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