前立腺がん~豊富な実績と負担の少ない治療~

最終更新日
2021年07月14日
前立腺がん~豊富な実績と負担の少ない治療~

東京都文京区に位置する順天堂大学医学部附属順天堂医院は、特定機能病院として先進医療の開発、および導入に尽力している病院です。泌尿器科で教授を務める堀江(ほりえ)重郎(しげお)先生に、同院の前立腺がんに対する治療や取り組みについてお話を伺いました。

*前立腺がんの治療方法全般についてはこちら

治療・取り組み

当院では患者さんのがんのステージや年齢、ライフスタイルなども踏まえ、患者さんに適した治療が提供できる環境を整えています。また、シェアード・ディシジョン・メイキング*と言われる考え方を大切にしており、患者さんやご家族、我々医師、そして地域の医療機関の医師ら全員が納得したうえで治療を行うことができるように努めています。

*シェアード・ディシジョン・メイキング:患者さんやご家族、医療従事者との間で医療情報を共有し、両者が納得したうえで一緒に治療方針を決めていくこと

ロボット支援下手術

当院では、手術治療が適応される患者さんに対しては、基本的にロボット支援下手術を行っています。患者さんが少しでも安心して治療を受けることができるよう、ロボット支援下手術で活躍されている先生を招いて勉強会も行っています。

ロボット支援下手術のメリットと注意点

ロボット支援下手術のメリットとしては、以下が挙げられます。

患者さんの体にかかる負担を軽減できる

傷口を可能な限り小さく抑えたり、痛みを軽減したりすることができるので、患者さんの体の負担を減らすことができます。

一方で、前立腺がんに対する手術の注意点として、以下は頭に入れておく必要があります。

個人差はあるが、手術後に排尿機能や性機能に影響が出る場合がある

ただしこれは開腹手術にも共通する注意点です。さらにロボット支援下手術の場合、開腹手術より術後尿失禁の改善や勃起機能の回復が速くなることが期待できます。

ロボット支援下手術の適応

放射線治療後に再発が確認された場合は手術が適応にならないことがあるため、患者さんの希望、年齢、ライフスタイルなどを含めて検討したうえで治療方法が判断されます。

ロボット支援下手術の費用と入院スケジュール

前立腺がんに対するロボット支援下手術は2012年4月から健康保険の適応となりました。3割負担でおおよそ45万円となります(食事・差額室料別)が、高額療養費制度などの利用によって実際の支払額は抑えられることもあります。入院期間は患者さんの状態によりますが3〜9日間程度となります。

ただし費用や入院期間はあくまで目安であり、個人差があります。

放射線治療

放射線治療は、再発が確認された際の治療として取り入れられることがあります。また、患者さんの状態やライフスタイルに応じて、根治的療法としても取り入れる場合があります。小線源療法は放射線治療の一種で、組織内に放射線を出す物質を植え込んで、がん細胞に放射線を当てる治療法です。

放射線治療のメリットと注意点

放射線治療のメリットは以下のとおりです。

治療中の副作用が比較的少ない
小線源治療は高い治療効果が期待でき、体への負担も抑えられる

がん組織には高い放射線量を当てるため高い治療効果が見込める一方、前立腺以外の被ばく量は少なく済むので、患者さんの体にかかる負担を抑えることができます。

一方で、以下の点には注意が必要です。

治療後に泌尿、排尿障害、排尿痛、血尿などの副作用が起こる可能性がある

放射線治療の適応

当院では、がんステージのほか、患者さんの状態、年齢、ライフスタイルなども踏まえたうえで、小線源治療を導入しています。

放射線治療の費用と治療スケジュール

通常の放射線治療の場合には、7週間程度の通院治療となります。小線源治療の場合には、3日間程度の入院となります。

前立腺がんに対してそのほかに行っている治療法

  • ホルモン療法
  • 集学的治療

診療体制・医師

順天堂大学医学部附属順天堂医院の前立腺がんに対する診療体制

ロボット支援下手術の様子

診療科の垣根を超えた連携

当院では、患者さんのがんの状態に合わせて治療を行うことができるよう、ほかの診療科との連携も大切にしています。たとえば、がんの転移が見られる患者さんに対して薬物治療を実施する際などに、診療科の垣根を超えた連携を行っています。さらに、急遽追加で検査が必要になった際などにも、すぐに対応することができます。

地域の医療機関との連携

また、遠方から来られた患者さんが地域に戻っても安心して治療を行うことができるように、地域の医療機関との連携も大切にしています。その際には、患者さんが通う医療機関の医師とも相談し、患者さんやご家族、医師らがそれぞれ納得したうえで治療を進めることができるように努めています。

前立腺がんの診療実績

前立腺がんに対するロボット支援下手術の件数

2018年1月~12月:162件

受診方法

初診の流れ

当院は特定機能病院に承認されているため、初診時には原則としてほかの医療機関からの紹介状の持参が必要となります。紹介状の持参がない場合、あるいは前回受診されてから6か月以上が経過している場合には、初診時選定療養費として8,250円(税込)をお支払いいただいております。

過去に受診したことがある患者さんについて

当診療科では予約制を導入しています。過去に受診したことがある患者さんについては、事前にご予約いただくことをおすすめしています。

診察・診断の流れ

当院では、前立腺がんが疑われる場合には以下の流れで診察、および治療を進めていきます。

診断方法について

前立腺がんが疑われる場合、当院ではPSA検査やMRI検査、前立腺針生検、グリーソンスコアなどをもとに診断を行います。

治療方法の決め方について

もし、前立腺がんが発見された場合には、CT、MRI、骨シンチグラフィにより、がんの悪性度や広がり具合を確認し、検査の結果を元に治療方法を選択していきます。また、治療については、患者さんとご家族、医師それぞれが納得したうえで進めることができるよう、しっかりと相談して行うようにしています。

入院が必要になる場合

手術治療を行う際には入院が必要になります。また、初めて抗がん剤治療を受ける際には、副作用などが現れる可能性があるため、入院していただいたうえで治療を行います。

患者さんのために注力していること

当院では、診察や検査の日程を可能な限り1日にまとめることで、来院される患者さんの負担を減らすことができるように努めています。

患者さんの中には片道何時間もかけて通ってくださっている方もおり、検査ごとに検査日が異なっているとその度に来院いただかなくてはいけません。特に、持病を抱えていらっしゃる患者さんは時間をかけて来院することが負担になりかねません。そのため、検査を1日にまとめたり、ほかの診療科の受診が必要になった際にもその日のうちに診ていただけるように努めたりするなど、患者さんの負担を軽減できるように心がけています。

堀江先生からのメッセージ

前立腺がんと診断された患者さんに対して、伝えたいことが3つあります。

まず1つ目は、脂質の少ない食事を意識していただきたいということ。2つ目は日頃から運動をする習慣をつけてほしいということ。それから、3つ目は慌てて治療を選択するのではなく、自身の年齢やライフスタイルに合った治療法を選択してほしいということです。もちろん年齢やライフスタイルによって個人差はありますが、食事に気をつけたり運動を習慣化したりすることで、前立腺がんの進行を遅らせることができる場合があります。

また、治療が終わっても定期的な検診を行うため、医師とは長い付き合いになります。自身と相性のよいと感じる医師を選び、しっかりと相談したうえで治療を行うことはとても大切です。ご自身のがんに対して不安に感じている方や話を聞いてみたいと思う方がいれば、ぜひ受診していただければと思います。

順天堂大学医学部附属順天堂医院

〒113-8431 東京都文京区本郷3丁目1-3 GoogleMapで見る