食道がん
腎臓と肺が弱っていたステージIIの80歳代男性
東京大学医学部附属病院における食道がんの症例を、病院長の瀬戸 泰之先生に伺いました。
腎臓と肺が弱っていたステージIIの80歳代男性
こちらの患者さんは食事が喉につかえるような感覚が気になって受診したところ、他院でステージIIの食道がんと診断されました。
通常、ステージⅡの食道がんでは術前化学療法が検討されますが、85歳というご高齢の方で腎臓機能も低下しており、抗がん剤治療は難しいと判断されました。また、元喫煙者で肺機能も低下していたため、胸腔鏡下手術のように胸を経由して行う手術もできません。そこで、胸を経由しない縦隔鏡を用いた手術ができる当院に紹介されていらっしゃいました。
縦隔鏡を用いたロボット支援下手術で治療
通常は手術前に化学療法を行ってから手術に臨む症例ではありますが、上述の事情から当院では化学療法を行わずに手術に挑みました。幸いがんをしっかり切除することができ、胸のつかえなどの症状もなくなったといいます。
術後は食事量が多少減りましたが、治療前と同じものを食べられるようになりました。今では日常生活への支障はなく、海外旅行へも行くなど元気に過ごされています。
関連の症例
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2箇所にがんが生じ、化学放射線治療を行った患者さん
がん研有明病院で副院長と消化器外科部長兼食道外科部長を務める渡邊雅之(わたなべまさゆき)先生に、食道がんの症例について伺いました。 2箇所にがんが生じ、化学放射線治療を行った患者さん こちらの患者さんはがんが見つかった際、ステージIIIの頸部食道がんとステージIIの胸部食道がんを重複している状態でした。初回の治療では、患者さんご自身が喉頭の温存を希望したため、手術ではなく化学放射線治療で根治を目指すことになりました。 治療は奏功し腫瘍が消失しましたが、治療開始からおよそ1年後に胸部食道がんが再燃し、救済手術を行うことになりました。救済手術によって無事がんを切除することができたほか、幸い、頸部食道がんは完全寛解状態を維持していたため、術後も喉頭の温存は可能でした。 がん寛解後に食道気管瘻()が発生するも手術で解決 こちらの患者さんの場合、治療によってがんは取り切れたものの、治療後も頸部食道がんを治療した際の化学放射線療法による瘢痕狭窄(はんこんきょうさく)(傷あとが残り食道が狭くなること)が生じており、放っておくと食道が狭まってしまうので、内視鏡による食道の拡張術を度々行っていました。すると、治療開始から4年近くが経過した際、食道に穴が空き気管に唾液や胃液などが流れ込む“食道気管瘻”が生じてしまいます。 食道気管瘻は命に関わる合併症ですので、手術によって食道の穴を塞ぎ、患者さんの結腸を使って食道をつなぎ直すことになりました。現在は治療開始から6年が経過しますが、がんの再発もなく、口から食事ができる状態で元気に生活されています。
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ほかの医療機関では手術が難しいとされていた50歳代男性
がん研有明病院で副院長と消化器外科部長兼食道外科部長を務める渡邊雅之(わたなべまさゆき)先生に、食道がんの症例について伺いました。 ほかの医療機関では手術が難しいとされていた50歳代男性 こちらの患者さんは頸胸部(けいきょうぶ)に進行した食道がんがあり、以前受診していた医療機関では手術が難しいと判断されて放射線治療を受けたといいます。しかし、治療後も腫瘍(しゅよう)が残ったままで気管にも浸潤しており、当院にお越しになったときはがんによって食道がかなり狭窄(きょうさく)し、水も飲めないような状態でした。前医で放射線治療後であり、手術治療以外に根治を目指せる治療方法がないと判断し、当院では手術治療を行うことになりました。 手術によってがんが根治し食べ物も食べられるようになった 手術治療では咽頭(いんとう)・喉頭(こうとう)・食道の全てを全摘し、縦隔気管孔を造設する手術を行いました。喉を温存することはできませんでしたが、がんをしっかり取り切ることができ、術後3年以上経過しますが今のところ再発はありません。また、当院を受診した当初は水も飲めないような状態でしたが、今では口から食べ物を摂取することができています。
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