食道がん

腎臓と肺が弱っていたステージIIの80歳代男性

最終更新日
2021年05月26日

東京大学医学部附属病院における食道がんの症例を、病院長の瀬戸 泰之(せと やすゆき)先生に伺いました。

腎臓と肺が弱っていたステージIIの80歳代男性

こちらの患者さんは食事が喉につかえるような感覚が気になって受診したところ、他院でステージIIの食道がんと診断されました。
通常、ステージⅡの食道がんでは術前化学療法が検討されますが、85歳というご高齢の方で腎臓機能も低下しており、抗がん剤治療は難しいと判断されました。また、元喫煙者で肺機能も低下していたため、胸腔鏡下手術のように胸を経由して行う手術もできません。そこで、胸を経由しない縦隔鏡を用いた手術ができる当院に紹介されていらっしゃいました。

縦隔鏡を用いたロボット支援下手術で治療

通常は手術前に化学療法を行ってから手術に臨む症例ではありますが、上述の事情から当院では化学療法を行わずに手術に挑みました。幸いがんをしっかり切除することができ、胸のつかえなどの症状もなくなったといいます。
術後は食事量が多少減りましたが、治療前と同じものを食べられるようになりました。今では日常生活への支障はなく、海外旅行へも行くなど元気に過ごされています。

東京大学医学部附属病院

〒113-8655 東京都文京区本郷7丁目3-1 GoogleMapで見る


関連の症例

  • ほかの医療機関では手術が難しいとされていた50歳代男性

    がん研有明病院で副院長と消化器外科部長兼食道外科部長を務める渡邊雅之(わたなべまさゆき)先生に、食道がんの症例について伺いました。 ほかの医療機関では手術が難しいとされていた50歳代男性 こちらの患者さんは頸胸部(けいきょうぶ)に進行した食道がんがあり、以前受診していた医療機関では手術が難しいと判断されて放射線治療を受けたといいます。しかし、治療後も腫瘍(しゅよう)が残ったままで気管にも浸潤しており、当院にお越しになったときはがんによって食道がかなり狭窄(きょうさく)し、水も飲めないような状態でした。前医で放射線治療後であり、手術治療以外に根治を目指せる治療方法がないと判断し、当院では手術治療を行うことになりました。 手術によってがんが根治し食べ物も食べられるようになった 手術治療では咽頭(いんとう)・喉頭(こうとう)・食道の全てを全摘し、縦隔気管孔を造設する手術を行いました。喉を温存することはできませんでしたが、がんをしっかり取り切ることができ、術後3年以上経過しますが今のところ再発はありません。また、当院を受診した当初は水も飲めないような状態でしたが、今では口から食べ物を摂取することができています。

    続きを読む
  • 化学療法が効いて手術が可能になったステージIVの60歳代女性

    東京大学医学部附属病院における食道がんの症例を、病院長の瀬戸 泰之(せと やすゆき)先生に伺いました。 化学療法が効いて手術が可能になったステージIVの60歳代女性 こちらの患者さんは嗄声(させい)(声がかすれること)をきっかけに病院を受診し、ステージIVの食道がんが見つかりました。声のかすれは食道がんが喉にある反回神経沿いのリンパ節に転移したために神経が麻痺をして生じたものでした。 ステージIVといえば残念ながら手術治療はできず、化学療法などでがんの増殖を抑える治療になります。しかし、この患者さんは化学療法として抗がん剤3種類を併用したところ、転移していたリンパ節のがんがかなり小さくなったことから、手術ができることになりました。 声のかすれも改善し日常生活に復帰 化学療法が効いたことにより、手術で食道のがんだけでなく転移したリンパ節のがんも切除することができたため、術後1年ほど経過しても再発はありませんでした。また、受診のきっかけとなった声のかすれも術後数か月で回復し、今では通常どおり声を出せるようになっています。食事も取れるようになり、問題なく日常生活が送れるようになりました。

    続きを読む