食道がん

化学療法が効いて手術が可能になったステージIVの60歳代女性

最終更新日
2021年05月26日

東京大学医学部附属病院における食道がんの症例を、病院長の瀬戸 泰之(せと やすゆき)先生に伺いました。

化学療法が効いて手術が可能になったステージIVの60歳代女性

こちらの患者さんは嗄声(させい)(声がかすれること)をきっかけに病院を受診し、ステージIVの食道がんが見つかりました。声のかすれは食道がんが喉にある反回神経沿いのリンパ節に転移したために神経が麻痺をして生じたものでした。
ステージIVといえば残念ながら手術治療はできず、化学療法などでがんの増殖を抑える治療になります。しかし、この患者さんは化学療法として抗がん剤3種類を併用したところ、転移していたリンパ節のがんがかなり小さくなったことから、手術ができることになりました。

声のかすれも改善し日常生活に復帰

化学療法が効いたことにより、手術で食道のがんだけでなく転移したリンパ節のがんも切除することができたため、術後1年ほど経過しても再発はありませんでした。また、受診のきっかけとなった声のかすれも術後数か月で回復し、今では通常どおり声を出せるようになっています。食事も取れるようになり、問題なく日常生活が送れるようになりました。

東京大学医学部附属病院

〒113-8655 東京都文京区本郷7丁目3-1 GoogleMapで見る


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