肺がん

手術の難航が想定された70歳代の高齢患者さん

最終更新日
2021年04月19日

日本大学医学部附属板橋病院で呼吸器外科部長を努める櫻井裕幸(さくらいひろゆき)先生先生に、肺がんの症例について伺いました。

症例写真

図:肋骨・椎体の一部合併切除を伴う右肺上葉切除術後の胸腔内の手術所見

私は手術が終わると、その日のうちに必ず行うことがあります。それは、手術記録を残し、その日の手術を振り返ることです。これまでにたくさんの患者さんの手術記録がありますが、その手術記録を読み返すとその時の手術風景が鮮明によみがえり、その手術経験の一つひとつが現在の私の手術力につながっています。外科医は手術を重ねることで、常に成長し続けなければならないと思っています。私の書いた手術記録の1つを紹介します(上図)。

その患者さんは70歳代の男性で、すでに肋骨(ろっこつ)や椎体までがんが浸潤し広がっており、肺がんとともに肋骨・椎体の一部を合併切除する必要がありました。これは呼吸器外科の手術の中でも難しい手術の1つです。手術自体も難航することが想定され、腕神経叢近傍の手術操作による上腕の神経症状が術後残ってしまう可能性もありました。手術に臨むにあたっては、術前に手術の手順を確認しながら手術のシミュレーションを繰り返し行いました。

術後の経過は順調で無事退院

その患者さんの手術は、がんの浸潤していた肋骨および椎体の一部の合併切除を伴う右肺上葉切除術で根治切除を遂行することができました。手術翌日には通常の術後管理と同様に、食事摂取や歩行を開始され、上腕に軽度のしびれ症状を認めましたが早期に退院できるまでに回復されました。患者さんが無事退院されて、大きな充実感を得たことを今でも鮮明に記憶しています。

その患者さんの肺がんは5年以上再発することなく経過し、患者さんを助けることができて本当によかったと思っています。今でも私の外来に通院され、毎年感謝の言葉とともに年賀状も欠かさずに送ってくださいます。手術が終わってからかなりの月日が経ちましたが、これからも健康でいられるようにサポートを行っていきたいと思っています。

この症例を取り扱った医師・病院

「肺がん」でお悩みの方へ

こんなありませんか?

  • 治療すべきか迷っている
  • 治療費について不安がある
  • 通院する前にまずは気軽に相談したい

に医師に事前相談ができます!

  • 櫻井 裕幸 先生

    山梨医科大学(現山梨大学)を卒業後、国立がんセンター(現国立がん研究センター)でのレジデント時代に627例の手術を経験。現在までに通算2,000例以上の手術を経験し、2016年より日本大学医学部外科学系呼吸器外科学分野 主任教授に赴任し、後進の育成に力を注ぐ。国立がんセンター時代に描いた手術記録は全国的に高く評価されており、その絵は静岡がんセンターの電子カルテや肺癌取扱い規約などにも使用され...

    無料メール相談をする

日本大学医学部附属板橋病院

〒173-8610 東京都板橋区大谷口上町30-1 GoogleMapで見る


関連の症例

  • 50年間タバコを吸っていた60代男性の肺がん

    複十字病院 院長を務める大田 健(おおた けん)先生、呼吸器センター長(内科)兼がんセンター長を務める吉森 浩三(よしもり こうぞう)先生に、肺がんの症例についてお話を伺いました。 50年間タバコを吸っていた60代男性の肺がん こちらの患者さんはもともとヘビースモーカーでおよそ50年間タバコを吸っていらっしゃるとのことでした。ある時から咳が止まらなくなり禁煙を始めたそうですが、半年経っても咳が治まらず、仰向けで眠れないほどの息苦しさや体重減少などの症状が現れて病院を受診したそうです。その後当院に紹介されCT検査を行ったところ、気管分岐部にがんが見つかり、これが息苦しさなどの原因になっていることが分かりました。 当院では、CTを撮ったその日に緊急で内視鏡治療を行い、気管分岐部にある腫瘍(しゅよう)の一部分を焼き切ることによって気道の確保に努めました。しかしそれでも息苦しさの症状が続いていたため、さまざまな処置を行い、最終的に気管支に金属の筒(ステント)を入れることによって気管支を広げ、仰向けで寝ても息苦しくない状態にまで改善させました。 内科治療の進歩によって再発なく5年以上経過 診断の結果、こちらの患者さんは肺がんが進行しており、手術は難しいと判断されたことから、抗がん剤治療と放射線治療を併用する化学放射線療法を実施することになりました。化学療法では何度も点滴を行うため、血管を傷めてしまうことがあります。そこで、皮下にポートを挿入し、血管への負担がなくいつでも治療が行えるようにしました。 治療を数か月実施した後5年間の経過観察を続けましたが、幸い再発はなく、追加治療の必要はないと判断され、ポートを抜去して現在に至ります。こちらの患者さんは、当院で迅速な検査、処置、診断、治療を受けることができ、その結果よい経過をたどることができた例だと思っています。

    続きを読む
  • 左肺を切除後、右肺にもがんが発生した70歳代男性の肺がん

    NTT東日本関東病院で呼吸器センター長と呼吸器外科部長を兼任する松本 順まつもと じゅん先生に、肺がんの症例についてお話を伺いました。 左肺を切除後、右肺にもがんが発生した70歳代男性の肺がん この患者さんはもともと肺がんで左の下葉を切除していたものの、手術後に右の上葉にもがんが発生し、手術を検討することになりました。もともと左の肺が半分しか残っていないため、右の肺をさらに切除することは呼吸機能の観点から見ても難しいと思いましたが、どうにか切除できないだろうかと頭を抱えました。 ロボット支援下手術の様子 こちらの治療では麻酔科*の先生と密に連携を取り、手術用ロボットを活用して切除すべき右の肺の上葉を膨らませながら手術を行いました。ロボット支援下手術では肺を膨らませたり、しぼめたりしながら治療ができるため、結果としてうまく上葉だけを切除することができました。治療をしたことによってがんが十分に取り切れたほか、呼吸機能も温存することができました。 *日本麻酔科学会麻酔科標榜医:小松 孝美

    続きを読む