脳神経外科

転移性脳腫瘍〜ガンマナイフ治療で日常生活を取り戻す〜

最終更新日
2021年05月26日
転移性脳腫瘍〜ガンマナイフ治療で日常生活を取り戻す〜

小牧市民病院は愛知県の小牧市にあり、地域の急性期医療を担う病院としてシームレスな医療の提供に努めています。
副院長、医務局長、そして医療の質・安全管理室長を務める傍ら、脳神経外科では部長を務めている長谷川 俊典(はせがわ としのり)先生、同じく脳神経外科で部長を務めている加藤 丈典(かとう たけのり)先生は、脳、脊椎・末梢神経(まっしょうしんけい)の病気を診療し、なかでも脳腫瘍(のうしゅよう)の治療に尽力しています。
今回は、長谷川先生と加藤先生に小牧市民病院の転移性脳腫瘍に対する治療や取り組みについて話を伺いました。

転移性脳腫瘍の治療方法全般についてはこちら

治療・取り組み

小牧市民病院では、転移性脳腫瘍に対するガンマナイフ治療に力を入れています。

ガンマナイフ治療

ガンマナイフ 

写真:ガンマナイフ

当院ではガンマナイフを全国に先駆けて導入し、なかでも転移性脳腫瘍に対して行うガンマナイフ治療の比率は高くなっています。ガンマナイフ治療の特徴は、腫瘍に対して多方向からピンポイントで照射することができるため、病気の発生していない部分(正常組織)への被曝を抑えることが可能であるということです。体の決まった部位を多方向から狙って放射線を照射することを定位照射といいます。

メリット・デメリット

ガンマナイフ治療のメリットとしては、以下のような点が挙げられます。

  • 患者さんへの負担を可能な限り軽減できる

開頭手術をせずに治療を行えるため治療後の回復が早く、入院期間も開頭手術より短く済むことが多いほか、原発のがん治療を急いで行いたい場合でも比較的すぐに次の治療に進むことができます。

  • 治療をしながら日常生活を送ることができる

転移性脳腫瘍は治療後に再発する頻度の高い病気ですが、ガンマナイフ治療なら繰り返し照射を行うことができるため腫瘍をコントロールしながら日常生活を送ることができます。

一方、リスクとして以下の点を頭に入れておく必要があります。

  • 脳浮腫や放射線障害が見られることがある

脳浮腫は転移性脳腫瘍の周囲に伴う正常脳のむくみで、患者さんによってはガンマナイフ治療後に一時的に悪化することがあります。ただし、その後は腫瘍の縮小とともに改善していくことが一般的です。

  • 放射線障害が生じる可能性がある

治療後しばらくしてから放射線障害が生じることもあります(晩期の放射線障害)。たとえば、放射線が照射されたことによってダメージを受けた腫瘍や周囲の組織が壊死(えし)する放射線壊死などが見られることもあり、壊死の範囲が広い場合には手術治療が必要となることもあります。

ただし、内服や点滴治療で経過観察できることもあるため、担当医と相談のうえ治療を進めていくことが大切です。

適応

ガンマナイフ治療で行うことが可能な範囲は、基本的には腫瘍の大きさが最大径で30mmまでとされています。しかし、当院では腫瘍の大きさや数にこだわらず、患者さんの状態や希望などによって総合的に判断し治療を行っています。なぜなら、大きな腫瘍であっても分割照射を行い、周囲の正常脳へのダメージを軽減することによって治療できる可能性があるためです。
また “脳腫瘍診療ガイドライン”では、多数個(5個以上)となる場合には脳全体に放射線を照射する全脳照射が推奨されています。しかし、全脳照射をするとおよそ1~2年後には脳の萎縮を引き起こすことがあるため、当院では脳へのダメージを少しでも減らすために脳腫瘍が多数個であっても、患者さんの状態や希望に応じて定位照射を検討します。定位照射は腫瘍の数が多いと繰り返しの治療が必要になったり、分割して治療を行う場合には治療日数が増えたりすることもありますが、脳へのリスクを考えると有効な治療方法だと考えています。

入院スケジュール・費用

費用については、3割負担の場合には約20万円程度となります。なお、照射回数が1回の場合でも、複数回の場合でも照射にかかる費用は変わりません。また、入院期間は照射回数が1回の場合には2泊3日ですが、分割照射が必要な患者さんにおいては1週間程度が目安となります。ただし、分割照射では外来通院で治療を受けられる可能性もあります。

ただし、費用や入院期間はあくまでも目安であり、個人によって異なります。

そのほかの転移性脳腫瘍治療

  • 手術
  • 放射線療法
  • 化学療法
  • 集学的治療
  • がんゲノム診療

診療体制・医師

転移性脳腫瘍の患者さんは原発となるがんをお持ちなので、原発となるがんと転移性脳腫瘍をそれぞれ治療していく必要があります。そのため、原発となるがんを治療していく診療科や化学療法室、緩和ケア科などの連携が行われているほか、私たち脳神経外科が原発となるがんの診療科の医師と相談を密に行うなど、チーム医療としての診療体制も整っています。
また、いかに非侵襲的(ひしんしゅうてき)にそれぞれの患者さんにとって適切な治療を提供できるかについて日々こだわり続けているのはもちろん、患者さんの些細な変化にも気付けるように、脳神経外科のみならず、さまざまな領域のスタッフと協力体制をとることも大切にしています。

  • 治療実績

2019年 ガンマナイフ治療:111件
2020年 ガンマナイフ治療:116件

受診方法

小牧市民病院の脳神経外科では、以下のように受診から治療まで行われています。

初診の流れ

初診の方は原則として紹介状の持参をお願いしております。紹介状の持参がない場合には、初診時選定療養費として5,500円(消費税込み)*をご負担いただく必要がございます。

*歯科口腔外科の場合は3,300円(消費税込み)

外来受付時間

当院の外来受付時間は平日の午前8:30~午前11:30まで、予約の方は8:00から受付を開始しております。土曜日、日曜日、祝日、年末年始は休診日となります。

担当医師について

当院では、脳神経外科の医師が転移性脳腫瘍(てんいせいのうしゅよう)に対するガンマナイフ治療や手術治療を行っています。原発となるがんの診療科の医師と協力して診療にあたります。

診察・診断の流れ

当診療科では、転移性脳腫瘍が疑われる場合には以下の流れで診察、および治療を進めていきます。

転移性脳腫瘍の診断方法

転移性脳腫瘍が疑われるタイミングは、原発となるがんの進行度合いを調べる際に見つかる場合や、がん検診などで見つかる場合などさまざまです。
たとえば、肺がんは脳へ転移しやすいがんとして知られているので、治療方針を決める際の検査で頭部MRI検査を撮影し、転移性脳腫瘍の有無を確認することが多いです。これらの検査によって転移性脳腫瘍が疑われる場合、造影MRI検査を行って確定診断します。

治療方針の決定方法

治療を決定する際は患者さんと十分に話し合うことを大切にしています。腫瘍が大きい場合や数が多い場合でも、患者さんの希望がある場合には可能な限りガンマナイフによる定位照射を行い、正常な脳へのダメージを減らすことを心がけています。

入院が必要になる場合

ガンマナイフ治療を行う際は、基本的に入院をしていただきます。分割照射の場合には、外来での通院治療が可能になることもあります。また、開頭手術が必要な場合には入院が必須となり、入院期間は最短でも10日程度で、術後の経過によってはより長くなることもあります。

患者さんのために病院が力を入れていること

当院では、地域がん診療連携拠点病院としてさまざまなサポートを行っています。緩和ケアや地域連携クリティカルパス、がん相談支援センターといった分野を充実させているほか、がん治療に関わるさまざまな領域のがん認定看護師が在籍し、患者さんのサポートにあたっています。たとえば、ほかの医療機関から紹介されてきた患者さんの初診時は、がん化学療法看護認定看護師が付き添って診療を行います。

先生からのメッセージ

転移性脳腫瘍はガンマナイフ治療を行うことによって、ある程度腫瘍をコントロールできる病気で、治療をしながら日常生活が送れる例も増えてきています。そのため、悲観的にならず、このような選択肢があることも知っておいていただきたいです。
さらに、転移性脳腫瘍を持つ患者さんは原発となるがんがあるなど、複数の診療科をまたいで治療を受けることも多いと思います。もちろん、脳腫瘍に関する問題は私たちを頼っていただきたいのですが、基本的には原発となるがんの主治医と信頼関係を築いて治療に取り組んでいただきたいと思っています。

小牧市民病院

〒485-8520 愛知県小牧市常普請1丁目20 GoogleMapで見る