消化器外科

大腸がん~肛門温存の希望を実現できるよう尽力~

最終更新日
2021年10月23日
大腸がん~肛門温存の希望を実現できるよう尽力~

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社会医療法人中央会 尼崎中央病院は、兵庫県尼崎市に位置している地域密着の総合病院です。副院長 兼 消化器センター長の松原 長秀(まつばら ながひで)先生に尼崎中央病院での“大腸がん”に対する治療や取り組みについてお話を伺いました。

一般的な大腸がん治療についてはこちら

治療・取り組み

大腸がん治療では、肛門機能や排尿・性機能をできるだけ温存することが重要です。尼崎中央病院の大腸がん治療では、以下の治療法を重点的に行っています。

腹腔鏡下手術

大腸がん手術の場合、当院ではほぼ腹腔鏡下で手術を行っています。

大腸がんの手術では切除した腸と腸を縫いつなぎますが、この際に縫合不全があると腸のつなぎ目から便が漏れ、腹膜炎などが生じることがあります。そこで当院では、術中にICG(インドシアニン・グリーン)と呼ばれる色素を静脈注射して血流を確認しながら縫合を行うことにより、縫合不全を防ぐことを心がけています。

メリットと注意点

腹腔鏡下手術のメリットは、以下のとおりです。

手術による出血量が少なく回復が早い
開腹手術と比較して術後の癒着リスクや感染のリスクが少ない
治療後の再発率も開腹手術と同等で、特に劣ることはない

一方、以下の点には注意が必要です。

手術時間が長くなりやすい

しかし、これは術者の慣れによるところもあるため、当院では開腹手術と変わらない手術時間で済んでしまうことが多いです。

適応、適している方、注意が必要な方

当院では手術のできるほぼ全例の患者さんに腹腔鏡下手術を行っています。ただし、症例によっては途中から開腹手術に切り替えられることもあります。

また、過去に開腹手術の経験がある方の場合、お腹の中が癒着していることによって腹腔鏡下手術が困難になるため、開腹手術が検討されます。そのほか、がんがほかの臓器に浸潤しており複数の臓器を合併切除しなければならない場合も開腹手術が検討されます。

さらにごくまれですが、肥満傾向の強い方の場合、腹腔鏡下手術では視野が十分取れないことがあるため、開腹手術が検討されることがあります。

費用・入院スケジュール

腹腔鏡下手術の入院期間には個人差がありますが、合併症などがなければおおよそ7日間程度で退院できることが一般的です。また費用は保険適用で、3割負担の場合40~50万円強程度(入院費用含む、食事料等別)となりますので、限度額認定証を申請し、ご利用いただくのが一般的です。

肛門温存手術

肛門に近い直腸にできたがんの場合、直腸を切断して永久人工肛門(ストーマ)を作るのが標準的な治療です。しかし、括約筋(かつやくきん)(肛門を閉める筋肉)を取らずに残す“肛門温存手術”が開発されて以降、当院ではこの肛門温存手術を積極的に行っています。

当院で行われている肛門温存手術は括約筋間直腸切除術(ISR)といいます。肛門括約筋には内肛門括約筋と外肛門括約筋がありますが、ISRではこのうちの内肛門括約筋のみを切除することが一般的です。ただし、機能を温存するために可能な限り筋肉を残したいので、一律に内肛門括約筋を切除するのではなく、可能な限り残せる筋肉を残しながら切除していきます。

メリットと注意点

肛門温存手術のメリットとしては、以下の点が挙げられます。

永久人工肛門(ストーマ)を回避できる

一方で、以下の点には注意が必要です。

手術前とは排便習慣が変わってしまう

たとえば、便の回数が増えたり、漏れてしまったりすることがあります。当院では、便漏れなどを防ぐために手術時に可能な限り括約筋を残すことを意識しています。

適応、適している方、注意が必要な方

肛門温存手術が可能となるのはがんの位置が肛門から離れており、がんが外肛門括約筋まで広がっていない方です。また、がんの大きさや広がりが適応の範囲内であっても、高齢の方などでもともと括約筋が弱い方の場合には、残った括約筋だけではうまく機能せず便漏れなどの症状がみられる可能性があるため、はじめからストーマをすすめることもあります。

このように、肛門温存手術を行う場合は生活スタイルに合わせて決めなくてはなりません。当院では、患者さんが肛門温存手術を希望される場合には、できる限り実現できるよう他科と連携して治療を行っています。

そのほかの大腸がん治療

当院では大腸がんの治療として、手術治療のほかにも内視鏡治療、薬物治療、他院と連携した放射線治療などを行っています。放射線治療では、化学療法と組み合わせた術前化学放射線治療や緩和治療なども行っています。

診療体制・医師

診療体制・医師 

当院では、複数の診療科が連携して治療にあたっています。たとえば直腸がんの場合、手術前に放射線治療や薬物療法を行うことがあるため、腫瘍内科の医師や薬剤師、看護師、薬剤師などのスタッフと治療方針を決めてチームで医療にあたります。週に1回はカンファレンスを行い、患者さんの紹介や経過の情報など意見交換を行っています。

大腸がん腹腔鏡下手術の実績

  • 2017年度:46件
  • 2018年度:41件
  • 2019年度:56件

受診方法

尼崎中央病院 外観

初診の流れ

当院は、原則初診の診療予約は受け付けておりません(一部の診療科を除く)。ホームページなどから診察予定表を確認していただき、希望される診療科の受付時間内に受付をしてください。その際、健康保険証、診察券(お持ちの場合)のご用意をお願いいたします。医療機関からの紹介患者さまに関しては予約での対応も可能です。その際は紹介元の医療機関より当院の地域医療連携室(06-6499-3047)を通してご予約ください。

総合受付
総合受付
待合スペース
待合スペース

診察・診断の流れ

大腸がん検診などで、便に血液が混じっているかを調べる便潜血検査で陽性だった場合、当院で大腸内視鏡検査を行います。内視鏡検査では、下剤を用いて大腸を空にしてから内視鏡スコープで大腸の隅々まで調べます。内視鏡検査に抵抗がある方の場合、肛門(こうもん)から腸へガスを注入しCT撮影をするCTコロノグラフィ検査が行われることもありますが、この検査で異常がみられた場合は大腸内視鏡検査を実施する必要が生じます。治療計画を立てるためにCT・MRI検査を行うこともあります。

治療について

大腸がん治療では、大腸癌研究会の刊行する『大腸癌治療ガイドライン』の最新版に沿って治療を決定することが一般的です。ただし直腸がんの場合、ガイドライン上推奨される治療方法は直腸を切除し永久人工肛門にすることとなっていますが、当院では患者さんの希望によって肛門温存手術を検討することもあります。

大腸がん治療では、手術になる際や化学療法を初めて行う際に入院となります。2回目以降の化学療法からは外来診療となります。

患者さんのために病院が力を入れていること

当院では、がん患者さんやご家族からの治療に関する不安をはじめとした相談を承っています。また地域の医療機関と連携を取り、ご紹介いただいたかかりつけ医と情報交換をしながら治療にあたっています。

先生からのメッセージ

大腸がんはがんの中でも治療によって治癒が見込める可能性の高いがんといわれています。そのため、気になることがあれば早めに病院を受診し、積極的に治療を受けていただきたいと思っています。

今は新型コロナウイルス感染症の流行もあり、病院を受診することを控える方や治療に消極的になる方もいます。しかし、治療をすればよりよくなることが期待できるため、希望をもって治療を受けていただきたいです。

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