大腸がん
診断時に余命半年といわれたステージIVの70歳代女性
京都桂病院の消化器センター・外科の副部長を務める濱洲晋哉先生に、大腸がんの症例について伺いました。
診断時に余命半年といわれたステージIVの70歳代女性
こちらの患者さんはS状結腸がんで、診断時にはすでに肝転移がみられるステージIVと診断されました。診断時の余命は半年。危険な状態でしたが、原発巣となるS状結腸がんを手術で切除し、その後抗がん剤による化学療法を行ったところ、抗がん剤がよく効き転移や再発なく数年経過しました。
その後、肝転移や肺転移がみられたものの、また別の抗がん剤が効果を示し、肺の転移はなくなりました。肝転移が残ったので2回目の手術を行い、放射線治療も行いました。
集学的治療によってがんをコントロールして10年
2回の手術とさまざまな抗がん剤、放射線治療などを駆使することにより、診断から10年ほど経った今でもご存命です。半年といわれた命がこんなにも延びることは、私たち医師としてもとても嬉しいことです。
関連の症例
-
術前化学放射線療法によって肛門温存手術が行えるようになった40歳代女性
京都桂病院の消化器センター・外科の副部長を務める濱洲はます晋哉しんや先生に、大腸がんの症例について伺いました。 術前化学放射線療法によって肛門温存手術が行えるようになった40歳代女性 こちらの患者さんは肛門から3~4cmの近い位置の直腸にがんが生じていました。直腸がんの場合、がんから2cmほど離して腸を切除する必要があるため、これだけ肛門に近い直腸がんの場合、通常は永久人工肛門を造設することを検討します。しかし、患者さんの「永久人工肛門は嫌だ」という希望を受け、なんとか肛門を温存できないかどうか考えました。 そこで手術前に化学放射線療法を行ったところ、がんが小さくなり肛門からの位置も4~5cmと少し離れました。このことによって肛門を温存して手術が行えるようになりました。 術前化学放射線療法によって肛門温存が可能に なんとか肛門を残してほしいとおっしゃる方は多くいらっしゃいます。当院でもできる限り希望に応えられるよう、術前化学放射線療法などを用いて治療を行っています。 こちらの患者さんは手術から数か月が経過していますが、現在は元気に生活しています。肛門温存手術の直後は一時的に小腸人工肛門となり、後に人工肛門を塞いでもともとの肛門から排泄が可能になります。この患者さんも現在は人工肛門で生活していらっしゃいますが、近いうちに人工肛門を塞ぐ処置を行う予定です。
続きを読む -
多数の肝転移があった結腸がん、手術で根治を目指した30歳代男性
がん研有明病院 消化器センター・大腸外科部長の福長 洋介(ふくなが ようすけ)先生に、大腸がんの症例について伺いました。 多数の肝転移があった結腸がん、手術で根治を目指した30歳代男性 こちらの患者さんは発見時すでに肝臓に転移があるステージIVの結腸がんでした。肝転移の個数が30~40個と非常に多かったことから、以前受診していた医療機関では手術ができないと言われ、当院を受診されたそうです。 確かに肝転移の数が多い場合、肝臓を切除しすぎてしまうと肝機能が低下し命に関わることがあるほか、仮に手術がうまく行っても再発リスクが高いなど手術をためらう理由はあります。しかし、抗がん剤による薬物治療を行うことでがんが小さくなり、肝転移の数も少なくなってきたため、当院では手術治療を行うことにしました。 残す肝臓を肥大化して肝機能を維持 抗がん剤によって多少肝転移は少なくなったものの、肝臓の切除範囲が広く命に関わることが懸念されました。そこで当院では、肝機能を維持するために残す肝臓を肥大化させる治療を併せて行いました。 こちらの患者さんの場合、肝臓の右側に多くの腫瘍(しゅよう)があり、左側は腫瘍が少ない状態だったので、1回目の手術では左側の腫瘍を取り除いたうえで右側の肝臓へ行く血管を塞栓(そくせん)して右側の肝臓を小さくし、左側の肝臓を大きくする処置を実行。左側の肝臓がある程度大きくなったところで2回目の手術を行い、腫瘍が多くあった右側の肝臓を取り除きました。その後5年以上経過しましたが再発はありません。 このように、大腸がんでは他臓器への転移があっても根治が期待できる場合があります。
続きを読む