膵臓がん

1年生きられるか分からない状態だった40代、IIB期の患者さん

最終更新日
2021年09月02日

膵臓がんの症例について、京都桂病院 消化器センター・外科部長の西躰 隆太(にしたい りゅうた)先生にお話を伺いました。

1年生きられるか分からない状態だった40代、IIB期の患者さん

こちらの患者さんは乳がんの原因となる遺伝子変異として知られるBRCA1の遺伝子変異を持っており、40代という比較的若い段階で膵臓(すいぞう)がんが見つかりました。診断時のステージはIIB期で、手術でがんを取りきれるかどうかが曖昧な切除可能境界と判断されました。

当時の当院では術前放射線化学療法を始めたばかりでしたが、こちらの患者さんは場合によっては1年生きられるかどうかも心配な状態だったので、なんとか手術ができるところまでがんを小さくしたいという考えから、術前放射線化学療法を行うことにしました。幸い術前放射線化学療法がよく効き、手術を行うことができました。

肝転移をきっかけにゲノム検査を行う

術後2年間は再発もありませんでしたが、2年後に肝転移がみられました。膵臓がんの肝転移は通常手術対象にはならないため、化学療法で治療を行うことに。この際、京都大学の腫瘍内科(しゅようないか)の先生と相談してがんのゲノム検査を行ったことにより、より効果が期待できる治療薬をみつけることができ、がんの増殖を抑えることができました。治療が効いたことにより手術ができる状態になったので、今度は肝臓の腫瘍を摘出する手術も行いました。

がんと付き合いながら日常生活を送る

この患者さんは、さらにその後数年経ってから肺や骨にも転移が見つかり、化学療法を続けています。しかし、診断当初は1年生きられるかどうかといわれていたことから考えると、かなりの成果といえるでしょう。このように、根治が難しい場合でもさまざまな治療を組み合わせることによって長く生きられるようになってきました。

京都桂病院

〒615-8256 京都府京都市西京区山田平尾町17 GoogleMapで見る


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