膵臓がん
1年生きられるか分からない状態だった40代、IIB期の患者さん
膵臓がんの症例について、京都桂病院 消化器センター・外科部長の西躰 隆太先生にお話を伺いました。
1年生きられるか分からない状態だった40代、IIB期の患者さん
こちらの患者さんは乳がんの原因となる遺伝子変異として知られるBRCA1の遺伝子変異を持っており、40代という比較的若い段階で膵臓がんが見つかりました。診断時のステージはIIB期で、手術でがんを取りきれるかどうかが曖昧な切除可能境界と判断されました。
当時の当院では術前放射線化学療法を始めたばかりでしたが、こちらの患者さんは場合によっては1年生きられるかどうかも心配な状態だったので、なんとか手術ができるところまでがんを小さくしたいという考えから、術前放射線化学療法を行うことにしました。幸い術前放射線化学療法がよく効き、手術を行うことができました。
肝転移をきっかけにゲノム検査を行う
術後2年間は再発もありませんでしたが、2年後に肝転移がみられました。膵臓がんの肝転移は通常手術対象にはならないため、化学療法で治療を行うことに。この際、京都大学の腫瘍内科の先生と相談してがんのゲノム検査を行ったことにより、より効果が期待できる治療薬をみつけることができ、がんの増殖を抑えることができました。治療が効いたことにより手術ができる状態になったので、今度は肝臓の腫瘍を摘出する手術も行いました。
がんと付き合いながら日常生活を送る
この患者さんは、さらにその後数年経ってから肺や骨にも転移が見つかり、化学療法を続けています。しかし、診断当初は1年生きられるかどうかといわれていたことから考えると、かなりの成果といえるでしょう。このように、根治が難しい場合でもさまざまな治療を組み合わせることによって長く生きられるようになってきました。
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薬物療法が効いて手術可能になった膵臓がんの70歳代男性
順天堂大学医学部附属順天堂医院 消化器外科講座の主任教授、肝・胆・膵外科の教授を務める齋浦 明夫さいうら あきお先生に、膵臓がんの症例についてお話を伺いました。 薬物療法が効いて手術可能になった膵臓がんの70歳代男性 こちらの患者さんは以前食道がんの手術を受け、新たに局所膵臓(きょくしょすいぞう)がんが発見された患者さんです。発見当初ステージIIIの進行がんと診断されたため、手術は難しいと判断され、およそ1年間抗がん剤による薬物治療が行われてました。私はちょうどその頃に当院に赴任してきたのですが、患者さんの状態を拝見すると「抗がん剤も効いているし、今なら手術ができるのではないか?」と考えました。そこで、当院ではこちらの患者さんに対して手術を行うことにしました。 動脈再建が必要な大きな手術だったが無事完了 こちらの患者さんの場合、過去に食道がんの手術を行っていたため、膵臓がんの手術を行うためには動脈を再建する必要がありました。動脈の再建は非常に難しい手術で、膵臓がんの治療に行うことは一般的ではありません。しかし、当院では無事に再建が可能となり、膵頭十二指腸切除を実施することができました。現在、手術から1年以上が経過しましたが、今のところ再発はなく、お元気に生活しています。その後も他施設からの紹介などがあり、動脈再建を伴う手術を多く実施しています。 また、近年は薬物治療の進歩により、こちらの患者さんのように手術不能と考えられた方が手術可能になることも増えてきています。
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50歳代男性ステージIIIの膵臓がん
こちらの患者さんは、ほかの医療施設で膵臓(すいぞう)がんと診断されたものの、血管にも浸潤していたため手術は困難と判断され、当院にいらっしゃいました。最初は紹介のあった病院と協力して化学療法を半年ほど行って様子を見ていたのですが、時間が経っても遠隔転移をする様子がなかったため手術治療ができると判断し、血管合併切除再建術を行うことになりました。このように、もともと切除不能だったがんを化学療法などによって小さくしてから行う手術治療を“コンバージョン・サージェリー”といいます。 術前化学療法・放射線治療によって手術可能になった こちらの患者さんは手術で確実にがんを取りきるために、術前化学療法に加え術前の放射線治療も行い、がんを小さくすることを目指しました。また、術後は体力が大きく低下することが予想されたので、術前に栄養指導を行うなど体力をつけるための工夫を行いました。手術は膵臓の切除に加え2本の血管をつなぎ替える大規模なものになりましたが、無事に成功しました。直後は一時的に食事ができなくなるなど体力の低下がみられましたが、退院後は食事もできるようになり、現在は地元の医療機関で術後補助療法を行っています。治療開始から社会復帰までに半年程度かかりましたが、無事に再発もなく元気で過ごしていらっしゃいます。
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