膵臓がん
術前放射線化学療法と手術で回復したIIA期の50代女性
膵臓がんの症例について、京都桂病院 消化器センター・外科部長の西躰 隆太先生にお話を伺いました。
術前放射線化学療法と手術で回復したIIA期の50代女性
こちらの患者さんは背部痛をきっかけに病院を受診し、膵臓がんが見つかりました。診断時のステージはIIA期で、切除可能境界でした。そこで、術前放射線化学療法でがんを小さくした後、手術を行うことになりました。
無再発で5年以上経過
こちらの患者さんは手術して5年以上経過していますが再発の徴候はなく、現在では趣味のゴルフに行けるほど回復しました。術前放射線化学療法を取り入れる前は術後2年程度で再発してしまう方も多かったのですが、現在は5年経過しても再発しない患者さんも増えつつあります。術後は体重の減少や下痢などさまざまな症状が見られますが、外来を受診しながら長く付き合うことによって日常生活が送れるようになります。
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1年生きられるか分からない状態だった40代、IIB期の患者さん
膵臓がんの症例について、京都桂病院 消化器センター・外科部長の西躰 隆太(にしたい りゅうた)先生にお話を伺いました。 1年生きられるか分からない状態だった40代、IIB期の患者さん こちらの患者さんは乳がんの原因となる遺伝子変異として知られるBRCA1の遺伝子変異を持っており、40代という比較的若い段階で膵臓(すいぞう)がんが見つかりました。診断時のステージはIIB期で、手術でがんを取りきれるかどうかが曖昧な切除可能境界と判断されました。 当時の当院では術前放射線化学療法を始めたばかりでしたが、こちらの患者さんは場合によっては1年生きられるかどうかも心配な状態だったので、なんとか手術ができるところまでがんを小さくしたいという考えから、術前放射線化学療法を行うことにしました。幸い術前放射線化学療法がよく効き、手術を行うことができました。 肝転移をきっかけにゲノム検査を行う 術後2年間は再発もありませんでしたが、2年後に肝転移がみられました。膵臓がんの肝転移は通常手術対象にはならないため、化学療法で治療を行うことに。この際、京都大学の腫瘍内科(しゅようないか)の先生と相談してがんのゲノム検査を行ったことにより、より効果が期待できる治療薬をみつけることができ、がんの増殖を抑えることができました。治療が効いたことにより手術ができる状態になったので、今度は肝臓の腫瘍を摘出する手術も行いました。 がんと付き合いながら日常生活を送る この患者さんは、さらにその後数年経ってから肺や骨にも転移が見つかり、化学療法を続けています。しかし、診断当初は1年生きられるかどうかといわれていたことから考えると、かなりの成果といえるでしょう。このように、根治が難しい場合でもさまざまな治療を組み合わせることによって長く生きられるようになってきました。
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地元では手術ができないと言われ、東北から受診された70歳代の男性
国立がん研究センター中央病院で肝胆膵外科の科長を務める江崎 稔(えさき みのる)先生に、膵臓がんの症例について伺いました。 地元では手術ができないと言われ、東北から受診された70歳代の男性 この患者さんは東北からお越しになった方でした。がんの進行度はステージIIAで、胃腸からの栄養を運ぶ血管である門脈にがんが強く浸潤(しんじゅん)しており、地元の病院では手術はできないと言われました。何とか手術できないかと当院に相談に来られて精査したところ、手術は可能だと判断しましたが治るかどうかは五分五分でした。それもご説明したうえで挑戦してみたいと決断され、手術に踏み切りました。 術後10年経った現在も再発はなく元気で過ごしている 治療として、膵頭十二指腸切除と、門脈を切除してつなぎ直す手術を行いました。門脈をつなぐ際に特別な方法を取ったために難しい手術になり、手術時間は8時間ほどかかりました。手術が終わった後、通常は1年くらいで体調が戻りますが、この方は2~3年ほどかかりました。その後の再発はなく少しずつ体調も戻り、現在は新しい仕事も始められて10年以上経っても健在でいらっしゃいます。時間はかかりましたが、治療がうまくいき私も嬉しいです。
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