膵臓がん

地元では手術ができないと言われ、東北から受診された70歳代の男性

最終更新日
2021年07月07日

国立がん研究センター中央病院で肝胆膵外科の科長を務める江崎 稔(えさき みのる)先生に、膵臓がんの症例について伺いました。

地元では手術ができないと言われ、東北から受診された70歳代の男性

この患者さんは東北からお越しになった方でした。がんの進行度はステージIIAで、胃腸からの栄養を運ぶ血管である門脈にがんが強く浸潤(しんじゅん)しており、地元の病院では手術はできないと言われました。何とか手術できないかと当院に相談に来られて精査したところ、手術は可能だと判断しましたが治るかどうかは五分五分でした。それもご説明したうえで挑戦してみたいと決断され、手術に踏み切りました。

術後10年経った現在も再発はなく元気で過ごしている

治療として、膵頭十二指腸切除と、門脈を切除してつなぎ直す手術を行いました。門脈をつなぐ際に特別な方法を取ったために難しい手術になり、手術時間は8時間ほどかかりました。手術が終わった後、通常は1年くらいで体調が戻りますが、この方は2~3年ほどかかりました。その後の再発はなく少しずつ体調も戻り、現在は新しい仕事も始められて10年以上経っても健在でいらっしゃいます。時間はかかりましたが、治療がうまくいき私も嬉しいです。

国立がん研究センター中央病院

〒104-0045 東京都中央区築地5丁目1-1 GoogleMapで見る

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国立がん研究センター中央病院で肝胆膵外科の科長を務める江崎 稔(えさき みのる)先生に、肝臓がんの症例について伺いました。 大腸からの転移性肝がんで計5回の手術を行った男性 大腸(S状結腸)のがんが肝臓に転移した方で、60歳代の男性でした。 一般的に遠隔転移したがんは手術の適応とならない場合がほとんどです。しかし、大腸からの転移性肝がんは肝臓以外に転移していることが少ないため、手術の適応となる場合が多いのです。 この患者さんの場合は、大腸のがんと転移した肝臓のがんを一度の手術で切除。大腸外科と協力し6時間ほどで取り切ることができました。 4回の再発を手術で乗り超え回復へ その手術から半年後、再び肝臓にがんが見つかりました。目に見えないがんが残っていたために再発したと思われました。抗がん剤治療をしながら様子を見ていたらがんは増えなかったので、再び手術を行いました。 その後も再発を繰り返しましたが、いずれも切除可能で肝臓を切除した回数は計5回となりました。現在、5回目の手術から5年以上経っていますが、再発はありません。がんを取り切れたものと考えています。長い闘病が大変であったことを忘れかけているほど、現在は体調が良好とのことです。


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    膵臓がんの症例について、京都桂病院 消化器センター・外科部長の西躰 隆太(にしたい りゅうた)先生にお話を伺いました。 1年生きられるか分からない状態だった40代、IIB期の患者さん こちらの患者さんは乳がんの原因となる遺伝子変異として知られるBRCA1の遺伝子変異を持っており、40代という比較的若い段階で膵臓(すいぞう)がんが見つかりました。診断時のステージはIIB期で、手術でがんを取りきれるかどうかが曖昧な切除可能境界と判断されました。 当時の当院では術前放射線化学療法を始めたばかりでしたが、こちらの患者さんは場合によっては1年生きられるかどうかも心配な状態だったので、なんとか手術ができるところまでがんを小さくしたいという考えから、術前放射線化学療法を行うことにしました。幸い術前放射線化学療法がよく効き、手術を行うことができました。 肝転移をきっかけにゲノム検査を行う 術後2年間は再発もありませんでしたが、2年後に肝転移がみられました。膵臓がんの肝転移は通常手術対象にはならないため、化学療法で治療を行うことに。この際、京都大学の腫瘍内科(しゅようないか)の先生と相談してがんのゲノム検査を行ったことにより、より効果が期待できる治療薬をみつけることができ、がんの増殖を抑えることができました。治療が効いたことにより手術ができる状態になったので、今度は肝臓の腫瘍を摘出する手術も行いました。 がんと付き合いながら日常生活を送る この患者さんは、さらにその後数年経ってから肺や骨にも転移が見つかり、化学療法を続けています。しかし、診断当初は1年生きられるかどうかといわれていたことから考えると、かなりの成果といえるでしょう。このように、根治が難しい場合でもさまざまな治療を組み合わせることによって長く生きられるようになってきました。

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  • 50歳代男性ステージIIIの膵臓がん

    こちらの患者さんは、ほかの医療施設で膵臓(すいぞう)がんと診断されたものの、血管にも浸潤していたため手術は困難と判断され、当院にいらっしゃいました。最初は紹介のあった病院と協力して化学療法を半年ほど行って様子を見ていたのですが、時間が経っても遠隔転移をする様子がなかったため手術治療ができると判断し、血管合併切除再建術を行うことになりました。このように、もともと切除不能だったがんを化学療法などによって小さくしてから行う手術治療を“コンバージョン・サージェリー”といいます。 術前化学療法・放射線治療によって手術可能になった こちらの患者さんは手術で確実にがんを取りきるために、術前化学療法に加え術前の放射線治療も行い、がんを小さくすることを目指しました。また、術後は体力が大きく低下することが予想されたので、術前に栄養指導を行うなど体力をつけるための工夫を行いました。手術は膵臓の切除に加え2本の血管をつなぎ替える大規模なものになりましたが、無事に成功しました。直後は一時的に食事ができなくなるなど体力の低下がみられましたが、退院後は食事もできるようになり、現在は地元の医療機関で術後補助療法を行っています。治療開始から社会復帰までに半年程度かかりましたが、無事に再発もなく元気で過ごしていらっしゃいます。

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