膵臓がん
50歳代男性ステージIIIの膵臓がん
こちらの患者さんは、ほかの医療施設で膵臓がんと診断されたものの、血管にも浸潤していたため手術は困難と判断され、当院にいらっしゃいました。最初は紹介のあった病院と協力して化学療法を半年ほど行って様子を見ていたのですが、時間が経っても遠隔転移をする様子がなかったため手術治療ができると判断し、血管合併切除再建術を行うことになりました。このように、もともと切除不能だったがんを化学療法などによって小さくしてから行う手術治療を“コンバージョン・サージェリー”といいます。
術前化学療法・放射線治療によって手術可能になった
こちらの患者さんは手術で確実にがんを取りきるために、術前化学療法に加え術前の放射線治療も行い、がんを小さくすることを目指しました。また、術後は体力が大きく低下することが予想されたので、術前に栄養指導を行うなど体力をつけるための工夫を行いました。手術は膵臓の切除に加え2本の血管をつなぎ替える大規模なものになりましたが、無事に成功しました。直後は一時的に食事ができなくなるなど体力の低下がみられましたが、退院後は食事もできるようになり、現在は地元の医療機関で術後補助療法を行っています。治療開始から社会復帰までに半年程度かかりましたが、無事に再発もなく元気で過ごしていらっしゃいます。
関連の症例
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術前放射線化学療法と手術で回復したIIA期の50代女性
膵臓がんの症例について、京都桂病院 消化器センター・外科部長の西躰 隆太にしたい りゅうた先生にお話を伺いました。 術前放射線化学療法と手術で回復したIIA期の50代女性 こちらの患者さんは背部痛をきっかけに病院を受診し、膵臓がんが見つかりました。診断時のステージはIIA期で、切除可能境界でした。そこで、術前放射線化学療法でがんを小さくした後、手術を行うことになりました。 無再発で5年以上経過 こちらの患者さんは手術して5年以上経過していますが再発の徴候はなく、現在では趣味のゴルフに行けるほど回復しました。術前放射線化学療法を取り入れる前は術後2年程度で再発してしまう方も多かったのですが、現在は5年経過しても再発しない患者さんも増えつつあります。術後は体重の減少や下痢などさまざまな症状が見られますが、外来を受診しながら長く付き合うことによって日常生活が送れるようになります。
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1年生きられるか分からない状態だった40代、IIB期の患者さん
膵臓がんの症例について、京都桂病院 消化器センター・外科部長の西躰 隆太(にしたい りゅうた)先生にお話を伺いました。 1年生きられるか分からない状態だった40代、IIB期の患者さん こちらの患者さんは乳がんの原因となる遺伝子変異として知られるBRCA1の遺伝子変異を持っており、40代という比較的若い段階で膵臓(すいぞう)がんが見つかりました。診断時のステージはIIB期で、手術でがんを取りきれるかどうかが曖昧な切除可能境界と判断されました。 当時の当院では術前放射線化学療法を始めたばかりでしたが、こちらの患者さんは場合によっては1年生きられるかどうかも心配な状態だったので、なんとか手術ができるところまでがんを小さくしたいという考えから、術前放射線化学療法を行うことにしました。幸い術前放射線化学療法がよく効き、手術を行うことができました。 肝転移をきっかけにゲノム検査を行う 術後2年間は再発もありませんでしたが、2年後に肝転移がみられました。膵臓がんの肝転移は通常手術対象にはならないため、化学療法で治療を行うことに。この際、京都大学の腫瘍内科(しゅようないか)の先生と相談してがんのゲノム検査を行ったことにより、より効果が期待できる治療薬をみつけることができ、がんの増殖を抑えることができました。治療が効いたことにより手術ができる状態になったので、今度は肝臓の腫瘍を摘出する手術も行いました。 がんと付き合いながら日常生活を送る この患者さんは、さらにその後数年経ってから肺や骨にも転移が見つかり、化学療法を続けています。しかし、診断当初は1年生きられるかどうかといわれていたことから考えると、かなりの成果といえるでしょう。このように、根治が難しい場合でもさまざまな治療を組み合わせることによって長く生きられるようになってきました。
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