悪性リンパ腫

40歳代女性の悪性リンパ腫

最終更新日
2022年09月27日

こちらの患者さんは40歳代で悪性リンパ腫にかかり、さまざまな治療を行いましたが再発を繰り返し、診察室で号泣されました。当時、私たちは自分の細胞を採取し、遺伝子組み換えを行い戻すことによって免疫力を高める治療方法“CAR-T療法”の治験を開始したばかりだったので、もう治療の選択肢がないこちらの患者さんにも「1つでも治療の選択肢を増やしたい」という思いで、CAR-T療法をすすめ、行うことになりました。

副作用も少なく寛解

こちらの患者さんの場合、幸いCAR-T療法がよく効き、1回の治療で悪性リンパ腫が寛解しました。その後6年以上経過しますが、現在のところ再発していません。この治療方法がなければ、もう治療の選択肢がないという状態だったことを考えると、「治験を受けてもらえてよかった」と心から思います。

CAR-T療法では治療の前後に抗がん剤を使用することもないため、こちらの患者さんの場合も髪が抜けるなどの副作用も少なく退院することができました。退院後も元気にお仕事をされています。

北海道大学病院

〒060-8648 北海道札幌市北区北十四条西5丁目 GoogleMapで見る

前の症例

こちらの患者さんは、ほかの医療施設で膵臓(すいぞう)がんと診断されたものの、血管にも浸潤していたため手術は困難と判断され、当院にいらっしゃいました。最初は紹介のあった病院と協力して化学療法を半年ほど行って様子を見ていたのですが、時間が経っても遠隔転移をする様子がなかったため手術治療ができると判断し、血管合併切除再建術を行うことになりました。このように、もともと切除不能だったがんを化学療法などによって小さくしてから行う手術治療を“コンバージョン・サージェリー”といいます。 術前化学療法・放射線治療によって手術可能になった こちらの患者さんは手術で確実にがんを取りきるために、術前化学療法に加え術前の放射線治療も行い、がんを小さくすることを目指しました。また、術後は体力が大きく低下することが予想されたので、術前に栄養指導を行うなど体力をつけるための工夫を行いました。手術は膵臓の切除に加え2本の血管をつなぎ替える大規模なものになりましたが、無事に成功しました。直後は一時的に食事ができなくなるなど体力の低下がみられましたが、退院後は食事もできるようになり、現在は地元の医療機関で術後補助療法を行っています。治療開始から社会復帰までに半年程度かかりましたが、無事に再発もなく元気で過ごしていらっしゃいます。

次の症例

これは、私が北海道大学病院に着任したばかりの話です。こちらの患者さんは白血病で、第一選択である化学療法を行った後に再発。その後、骨髄(こつずい)バンクや臍帯血(さいたいけつ)バンクを利用して2回ほど造血幹細胞移植を行いましたが、繰り返し再発してしまい、なすすべがない状態でした。 しかし、患者さんは30歳代ということで体力もあり、体は元気でした。私たちは「なんとかしたい」という思いから、当時はまだ承認されていなかったHLA半合致移植を行うことを提案。本人やご家族もそれに応じたため、当院で初めてのHLA半合致移植を行うことになりました。 10年近くたった今でも再発なし HLA半合致移植は、骨髄の血液型であるHLAが半分合致していれば移植を受けられます。HLAはそもそも両親から半分ずつ受け継ぐものなので、こちらの患者さんの場合はご本人のお父さんがドナーとなって移植を行うことになりました。 私たちとしても初めてのHLA半合致移植であり、うまくいくか不安なところはありました。しかし無事に移植が完了し、10年近く経過した今でも再発なく元気に過ごされています。この治療をしなければ命がなかったと思うと感慨深いものがあります。この患者さんの治療をきっかけに、HLA半合致移植の臨床研究をオールジャパンで実施し、その結果、認可されるに至りました。