インタビュー

レビー小体型認知症を正しく認識してもらうために

レビー小体型認知症を正しく認識してもらうために
(故)小阪 憲司 先生

横浜市立大学医学部 名誉教授

(故)小阪 憲司 先生

この記事の最終更新は2015年05月13日です。

小阪憲司先生は「レビー小体型認知症」という、精神医学の歴史を塗り替える病気を発見された、日本が世界に誇る精神科医です。
小阪先生は、「石灰沈着を伴うびまん性神経原線維変化病」(小阪・柴山病)「辺縁系神経原線維変化型認知症」を合わせ、3つの病気を発見されています。レビー小体型認知症は未だに正しく認識されてないケースが多く、日本でどう広めていくのかというのも課題です。そのために、小阪先生がどのような活動をされているのか、お聞きしました。

認知症疾患の専門医により、70%程度がアルツハイマー型認知症、20%程度が脳血管型認知症、4.3%がレビー小体型認知症と診断されていますが、実際にはレビ―小体型認知症は約20%と言われています。どれだけのこの認知症が見過ごされてしまっているのかということがよく分かります。

レビー小体型認知症が知られていないがゆえの誤診の恐ろしさを描いた、「妻の病」というドキュメンタリー映画があります。医師の夫を持つその女性は、レビー小体型認知症であったのに、統合失調症と誤診され、抗精神病薬を処方されていました。レビー小体型認知症は抗精神病薬に過敏性があり、数年間の使用で、レビー小体型認知症が悪化してしまったのです。

その他にもレビー小体型認知症は、うつ病や老人性精神病という誤診をされていることも少なくありません。レビー小体型認知症の治療薬であるドネペジル塩酸塩も保険適用になり、治療の選択肢も出始めてきているので、まずは正しくレビー小体型認知症を認識してもらいたいと考えています。

2007年からは、レビー小体型認知症研究会を立ち上げ、新横浜で毎年開催しています。午前はレビー小体型認知症の家族会、午後は研究会という構成になっており、医療従事者も患者さんの家族も一緒に、レビー小体型認知症に取り組んでいます。

現在はレビー小体型認知症の患者さんのための家族会も立ち上げられており、全国21都道府県に普及しています。家族会には「DLBサポートネットワーク」という名前がついており、例えば神奈川であれば「DLBサポートネットワーク神奈川」という形でそれぞれ独立して運営されています。この家族会の特徴は、レビー小体病の専門医師が必ず付くことで、現在は150人の専門医師にご協力いただいています。また、研究会や家族会を主催する他に講演会も多数行い、レビー小体型認知症を知ってもらうための活動を続けています。

2013年の厚生労働省の発表では、日本には認知症の患者さんが462万人いると報告されていました。認知症を治すことはいまだに難しいので、認知症を予防するための生活習慣の見直し(身体を使いましょう・歩きましょう・計算しましょう・なるべく人と交わりましょう)を提唱しています。また、軽度認知症の段階に関しては、悪化を予防するための投薬の必要性を訴え続けていますが、まだこれには保険適用がありません。

私がレビー小体病を見つけたのは、患者さんをよく見ていたからです。アルツハイマーがアルツハイマー型認知症を見付けたのも同様です。医師は患者さんをよくみる。研究者であれば物事を注意深く観察する。周囲のことを注意深く見ることの大切さはすべての人に当てはまると思います。

私は、なかなか欧米でレビー小体型認知症が認められず、悔しい思いをしてきました。しかし懸命に努力し続けたことで世界中から認められることができました。これからの日本を支える皆さんにはぜひ世界を相手に仕事をして欲しいと思います。

記事1:臨床こそが原点―小阪憲司先生がレビー小体病を発見するまで
記事2:レビー小体型認知症が世界中で認められるまで
記事3:レビー小体型認知症を正しく認識してもらうために

  • 横浜市立大学医学部 名誉教授

    (故)小阪 憲司 先生

    レビー小体型認知症の発見者として世界的に有名な認知症疾患のスペシャリスト。長年、認知症治療や研究の第一線で活躍し、レビー小体型認知症の家族会を開催するなど、家族のサポートにも力を注いできた。「認知症治療には早期発見と早期診断、さらには適切な指導と薬剤選択が欠かせない」とし、現在も全国各地で講演やセミナーなども行い、認知症の啓発活動に努めている。