インタビュー

脳ドックとは。脳ドックで何が分かるの?

脳ドックとは。脳ドックで何が分かるの?
桂 研一郎 先生

国際医療福祉大学三田病院 予防医学センター長/神経内科、国際医療福祉大学医学部 医学教育統括セ...

桂 研一郎 先生

この記事の最終更新は2015年09月12日です。

医療が「治療」から「予防」の観点へシフトしていく最中で、脳ドックという言葉をよく耳にするようになりました。脳ドックは健康診断の一種で、脳卒中脳梗塞脳出血くも膜下出血)を代表とする脳の病気を事前に発見するために行われる検査です。具体的に脳ドックとはどのようなものなのでしょうか? 脳ドックをすることで、何が分かるのでしょうか? 人間ドックとの違いも踏まえて、国際医療福祉大学三田病院予防医学センター長・神経内科教授の桂研一郎先生にお話をお伺いしました。

脳ドックとは、脳卒中脳梗塞脳出血くも膜下出血)などの脳の病気が潜んでいないかを発見するために行われる健康診断の一種です。とくに、くも膜下出血の原因となる動脈瘤を破裂する前に発見し、くも膜下出血を発症する患者さんを少しでも少なくしようという目的でつくられました。実際、未破裂脳動脈瘤(破裂する寸前の脳動脈にできたこぶ)を見つけることができるようになり、患者さんの死亡率が減ってきたというデータも出ています。

くも膜下出血は、破裂してしまうと半数の患者さんが亡くなってしまう重篤な疾患です。そのため、最初のうちは脳外科を中心として検査が行われていましたが、1992年に脳ドック学会が発足してから脳神経内科が脳ドック分野に参入をしはじめました。すると、未破裂脳動脈瘤のみならず、無症候性脳梗塞(はっきりした症状が出ていないものの、脳梗塞を起こしている状態)を見つけることや、認知症の早期発見もできるようになってきました。現在は、主に脳梗塞の予防と認知症の早期発見のために脳ドックが行われています。

脳ドックはその名のとおり、脳を詳しく検査するものです。一方、人間ドックは首から下を診断し、頭部に関してはほとんど触れません。動脈硬化を診断する項目も少なく、人間ドックのデータから脳の病気を見つけることは難しいといえます。

脳は私たちヒトにとって最も重要な臓器です。その構造は非常に繊細で、いったん細胞が破壊されてしまうとなかなか再生することはできません。そのため、定期的に脳ドックを受けることで、見つかった病変部位が広がっていないか、進行していないかを監視することが重要です。

脳ドックを受けることで一番大事なのは、脳の血管の動脈硬化のチェックと診断、ならびにその予防です。また、前述した無症候性脳梗塞未破裂脳動脈瘤など、脳にできる様々な疾患を早期発見することもできます。脳ドックを受けていれば、脳卒中をはじめとした脳の病気になる危険な徴候を見つけられるため、重症化しないうちに医師のもとで治療をすすめられます。

脳ドックを受けて病気がないことを確認し、安心感を得たいと思っていらっしゃる受診者さんもいます。しかし、それだけでは脳ドックを受けるメリットは活かしきれません。脳ドックを受けるもうひとつのメリットは、今後の生活を見直せる点にあります。脳ドックを受けることによって、ご自身にとってどのようなことが危険因子で、どうすれば将来的に脳梗塞などの脳卒中にならないかを把握し、ご自身で予防していただくきっかけをつくることが最も大切です。

たとえばあるとき脳ドックを受けて、結果が正常範囲で問題が何もなかったとします。そこで「大丈夫だった、もう安心だ」といってそれ以降何年も脳ドックを受けない、病院で定期検査もしない、となると、それは問題です。たった一度の脳ドックでその後の健康状態をすべて把握できるわけではありませんから、これでは脳ドックのメリットを十分に享受しきれていないといえるでしょう。正常範囲といっても、糖尿病の危険性があったり血圧が高めだったり、ギリギリの範囲でありながら正常と分類されている方が実は多くいらっしゃるのです。

脳ドックの本来のメリットは、そのような危険領域にいる方を見つけて、今後予防していくよう啓蒙することにあります。そのため、積極的にご自身の病気を予防していきたいと考えている方であれば、脳ドックを受けるメリットを十分に享受できるといえるでしょう。

具体的には、

  • 血圧やコレステロール値が高い方
  • 頭痛などの自覚症状がある方
  • 糖尿病の方
  • 肥満気味の方
  • 家族に脳卒中になった人がいる方
  • 物忘れが最近激しいと感じる方

これらに該当する方は、脳卒中や認知症を発症する危険因子を持っています。そのため、一度脳ドックを受けてみるといいでしょう。

記事1:脳ドックとは。脳ドックで何が分かるの?
記事2:脳ドックの費用はどれくらい?施設によって異なるため自分に合ったコースを
記事3:脳卒中の予防のために。脳ドックの重要性

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  • 国際医療福祉大学三田病院 予防医学センター長/神経内科、国際医療福祉大学医学部 医学教育統括センター教授

    桂 研一郎 先生

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