インタビュー

リステリア感染症ってどんな病気?

リステリア感染症ってどんな病気?
石黒 精 先生

国立成育医療研究センター 教育センター センター長/臨床研究センター 副センター長/臨床研究教...

石黒 精 先生

国立成育医療研究センター 小児医療系総合診療部 レジデント

鈴木 大地 先生

この記事の最終更新は2016年03月24日です。

リステリア感染症という病気は、一般に広く知られているものではありません。しかし死亡率の高い危険な感染症でもあります。本記事ではリステリア感染症について、感染の経路から症状、治療法、そして予防法をご説明します。

リステリア感染症はリステリア菌(正式名称:リステリア・モノサイトゲネス)により起こる食中毒の一種です。100万人あたり4人程度に見られる比較的珍しい感染症ですが、死亡率は20%と高く、妊婦さんや赤ちゃんに感染すると流産や死亡に至る可能性もあります。

リステリア菌は自然界に広く存在し、土壌、動物の飼料や腐りかけの植物、様々な動物や健康な方の大便などに含まれています。消毒剤や加熱には弱い菌ですが、冷たい環境や10%以上の塩分にも耐えられるため、冷蔵庫内(4℃)や塩を使った食品の中でも増殖できるのが特徴です。

リステリアは特に妊婦さん、生後2か月までの赤ちゃん、高齢者など、免疫機能が低下している(弱い)方に感染しやすい菌といえます。特に妊婦さんは健康な大人より20倍以上も感染しやすい状態となっており、10~40歳でリステリア感染症になった方のうち60%は妊婦さんであったとの報告もあります。

人へ感染する経路の多くとしては、汚染された食べ物の摂取が挙げられます。アメリカやヨーロッパなどでは、未殺菌の牛乳、ナチュラルチーズ、コールスローなどの野菜サラダ、肉や魚の加工品が原因となっています。また、牛乳が使われるアイスクリームやバターも原因となることがあります。リステリア菌は熱に弱いので、加熱殺菌した牛乳やプロセスチーズが問題となることはあまりありません。

具体的な食品を以下にあげます。

乳製品

ナチュラルチーズ(モッツァレラ、カッテージ、カマンベール、ゴルゴンソーラ、ゴーダ、チェダー、パルメザン)

未殺菌の牛乳

野菜類サラダ(コールスロー、コーンサラダ、ポテトサラダ)、冷凍野菜

肉類ソーセージ、ミートパテ、コーンビーフ、サラミ、七面鳥のソーセージやスライス

魚介類

スモークサーモン、スモークムール貝、カニカマ、エビ

リステリア菌はこれらの食品を食べてから3~4週間程度の潜伏期間(症状が出ない期間)を過ぎてから症状が現れます。しかし個人の体調や感染する部位によってこの期間は短くなったり長くなったりします(1日~2か月程度まで様々です)。

リステリア菌は健康な方に感染してもほとんど症状が現れることはありません。また免疫が正常なこどもや成人では、現れたとしても胃腸炎の症状のみで、特別な治療をすることなく自然に良くなります。

妊婦さんの場合、一般には妊娠第3期(28週~40週前後まで)に感染しやすいといわれていますが、その前後でも感染は起こりえます。突然の発熱で感染に気付くことが多いですが、3人に1人は感染しても症状が現れないこともあります。

主な症状(妊婦の方・頻度が高い順)

発熱65%

背部痛21%

頭痛10%

吐き気、嘔吐7%

筋肉痛、関節痛4%

咽頭痛4%

症状が現れた妊婦さんのうち10~20%が自然流産、50%が早産、10%が子宮内胎児死亡に至るといわれています。

赤ちゃんの場合は、「生まれてどのくらい経ってから感染したか」の時期によって現れる症状が異なります。生後1週間以内での感染は死亡率が高くなっています(およそ40%)。生後1週以降~8週までの感染では髄膜炎(脳実質に炎症が起こり、意識障害やけいれんを起こす重篤な感染症)の割合が高いですが、死亡率は3%程度と低い傾向にあります。

その他、発熱(38℃以上となることが多いです)、不機嫌、ぐったりしている、顔色が悪い、呼吸が浅くて速いといった症状が見られることが多いです。

治療は基本的に入院して抗菌薬(ペニシリン系抗生物質)点滴を行います。妊婦さんの場合は、早期の診断と抗菌薬による治療が健康な赤ちゃんの出産に繋がります。赤ちゃんは自分で症状を訴えることができないので、前項のような症状が見られた場合はすぐに小児科を受診しましょう。

特に妊婦や新生児・乳児がいるご家庭では、リステリア感染症を防ぐために以下のポイントに注意しましょう。

・肉、魚(またはその加工品)は完全に加熱する(「要加熱」と表示のあるものは必ず加熱して食べる)

・野菜はよく洗って食べる

・生肉は野菜、調理済みの食品などと分ける

・生の食材を扱った後は手、食器、包丁、まな板をよく洗う

・期限内に食べきるようにして、開封後は速やかに消費する

・冷蔵庫のチルド室(0~2℃)や冷凍庫を利用して保存する

受診について相談する
  • 国立成育医療研究センター 教育センター センター長/臨床研究センター 副センター長/臨床研究教育部長(併任)/血液内科診療部長(併任)

    石黒 精 先生

「メディカルノート受診相談サービス」とは、メディカルノートにご協力いただいている医師への受診をサポートするサービスです。
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。
  • 受診予約の代行は含まれません。
  • 希望される医師の受診及び記事どおりの治療を保証するものではありません。

    「リステリア症」を登録すると、新着の情報をお知らせします

    処理が完了できませんでした。時間を空けて再度お試しください

    「受診について相談する」とは?

    まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
    現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。

    • お客様がご相談される疾患について、クリニック/診療所など他の医療機関をすでに受診されていることを前提とします。
    • 受診の際には原則、紹介状をご用意ください。