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多発性子宮筋腫治療におけるポイントについて
多発性子宮筋腫に対する筋腫核出術は非常に難易度が高い手術といえます。手術時の出血のリスクへの対処、小さな筋腫を取り残さないことなど、多発性筋腫の治療には熟練した技術が必要です。福岡山王病院産婦人...
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多発性子宮筋腫治療におけるポイントについて

公開日 2016 年 03 月 30 日 | 更新日 2017 年 05 月 08 日

多発性子宮筋腫治療におけるポイントについて
渡邊 良嗣 先生

福岡山王病院副院長 福岡山王病院産婦人科部長

渡邊 良嗣 先生

多発性子宮筋腫に対する筋腫核出術は非常に難易度が高い手術といえます。手術時の出血のリスクへの対処、小さな筋腫を取り残さないことなど、多発性筋腫の治療には熟練した技術が必要です。福岡山王病院産婦人科部長で副院長の渡邊良嗣先生に多発性筋腫に関する治療のポイントについてお話をうかがいました。

多発性子宮筋腫とは

多数の子宮筋腫ができている状態のこと

子宮筋腫は単発でできることもあれば、複数個できることもあります。数個から数十個の筋腫が同時にできることもあり、このように多数の筋腫ができることを多発性子宮筋腫といいます。筋腫は小さくても症状が強かったり、大きくてもあまり症状が現れなかったりするため、数や大きさというよりも、筋腫のできた場所によって症状の出方は変わってきます。しかし多発性筋腫の場合は、子宮が非常に大きくなるため圧迫症状として頻尿や腰痛、月経時の多量出血や痛みが起こり、ひどくなると日常生活にも影響をおよぼしてQOL(生活の質)を大きく低下させてしまいます。

多発性子宮筋腫の治療方法

多発性子宮筋腫の治療は手術が基本

手術には筋腫だけを摘出する筋腫核出術と、子宮ごと摘出する子宮全摘術があります。また、それぞれの手術においては、お腹を開いて行う開腹術や、腹腔鏡を用いてより低侵襲(体への負担が少ない方法)に行う腹腔鏡下手術などがあります。

福岡山王病院ではこれまで腹腔鏡を使った手術を数多く行ってきました。実際、多くの患者さんが腹腔鏡手術を希望して受診されますが、全ての患者さんに腹腔鏡手術ができるというわけではありません。今回のテーマとなっている多発性子宮筋腫もその一例です。

多発性子宮筋腫の治療におけるポイント

子宮を全摘(すべて取る)するか、温存する(残す)か

患者さんが困っている症状を消失させたり、状態を改善させたりすることが多発性子宮筋腫の治療の目的です。治療の中心は手術となりますが、基本的には子宮を全摘(すべて取る)するか、温存する(残す)かの二通りです。同じような症状であっても、患者さんの置かれている背景によって治療法は変わります。一般的には、これから子どもを希望する場合は子宮を温存し、すでに子どもがいてこれ以上妊娠を希望しないような場合には子宮の摘出術が検討されます。つまり、子どもを希望するかどうかで治療法は大きく変わるということです。

とはいっても、子どもがいる方、あるいは閉経を迎えている方であっても、子宮を残したいという希望があるのであれば、不利な点もあることをお話ししたうえで患者さんの望む治療を優先して行います。

多発性子宮筋腫の子宮全摘術の難易度は高くありません。偽閉経療法を行って子宮の大きさを縮小させれば、より安全に全摘手術を行うことができます。

一方、多発性筋腫の核出術は非常に難易度の高い手術です。多数個の筋腫核出術は、通常の筋腫核出術とは全く異なります。筋腫が数十個あったり、非常に巨大であったりするということで、他の施設で子宮全摘しか方法はないといわれて福岡山王病院を受診される患者さんもおられます。

※出血が大量になって止血が不可能な状態となることがあり、生命に危険がおよぶ可能性がある場合は子宮全摘を行わざるを得ない状況になるため、大多数の施設では多発性筋腫に対する子宮温存手術は出来ないと説明されることがしばしばです。

子宮を残したいという理由の多くは、これから子どもを持ちたいということです。この場合子宮摘出は絶対に避けなければなりません。このような希望を持っている患者さんに対して、福岡山王病院では多発性筋腫に対する子宮温存術をこれまで数多く行ってきました。100個以上の筋腫があった方もおられましたが、その方にも筋腫核出術による子宮温存術を行っています。非常に大きな筋腫があっても、かつ多数個であっても、福岡山王病院では筋腫核出を行って子宮を温存する手術が可能です。

出血リスクに対する対処

自己血保存によりさまざまなリスクの回避が可能

筋腫が大きかったり、複数個あったりする場合、手術時の出血リスクはどうしても高くなってしまいます。多量の出血が予測される場合は、他者からの輸血を避けるために自己血保存を行っています。自己血保存とは、手術で出血のリスクが想定されるときに、術前に患者さん自身の血液を採血して保存しておくことです。ご自身の血液であれば、輸血(自己血輸血)をしてもさまざまなリスクを回避できます。

自己血の保存期間は5週間なので、保存用の血液は手術の5週間前以降に採血します。採血量は、献血と同様に400mlを単位として採取します。通常は1回400ml、ある程度の出血量が想定される患者さんには少々多めに2回800mlか3回1200mlを採血保存しておきます。

ただし、自己血保存をすれば、絶対に他者からの輸血を避けることができるわけではありません。手術中の出血が非常に多くて保存した自己血で足りない場合は、他者からの輸血が必要になります。

筋腫のある患者さんは月経時の出血量が多いため、貧血状態になっている方も少なくありません。貧血では自己血を保存することはできませんので、その場合は貧血の治療を先行して行います。貧血が改善しないか貧血が治っても月経過多ですぐにまた貧血になるという場合は、自己血保存はできないことになります。単発の筋腫であれば閉経状態にするGnRHアゴニストというホルモン剤を投与して月経を止め貧血を改善させることができますが、多発性筋腫に対する手術の場合は小筋腫の確認が困難となり、取り残しによる再発のリスクが高くなるため、GnRHアゴニストは使用することができません。この場合は、他者からの輸血を行うことを前提として核出術に臨まなければなりません。

福岡山王病院副院長。産婦人科部長として子宮筋腫や卵巣腫瘍など良性の婦人科疾患、不妊症の治療にあたっている。傷の小さな腹腔鏡下手術や、開腹しない膣式手術および子宮鏡下手術など低侵襲な手術を中心とした治療に長年取り組んでいる。挙児を希望する方には自然に近い形で妊娠できるよう、一般的不妊治療と腹腔鏡手術などの治療を組み合わせながら治療を行っている。更年期障害や月経不順などに対する女性のヘルスケアにも取り組んでいる。

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