インタビュー

写真でみる突発性発疹症の症状―原因や対処法は?

写真でみる突発性発疹症の症状―原因や対処法は?
橋本 祐至 先生

うさぴょんこどもクリニック 院長、千葉市立海浜病院 小児科 非常勤医師

橋本 祐至 先生

この記事の最終更新は2017年06月27日です。

突発性発疹症は日本人ならばほとんどの方が持っている「ヒトヘルペスウイルス6型」に乳幼児が初めて感染した際に罹患する高熱を伴う疾患です。特徴的なのは特別な治療が要らず自然治癒し、解熱とともに発疹が発生することです。

今回は突発性発疹症の概要、ご家庭での対応方法について千葉市立海浜病院小児科部長の橋本祐至先生にお話いただきました。

突発性発疹症とは赤ちゃんが39〜40度といった高熱を3〜4日間出し、その後、解熱とともに発疹が出現する、比較的よく知られた疾患です。

発疹は解熱時にまずお腹や背中など胴体の部分に発生し、その後、顔や四肢に広がっていきます。発疹のサイズはそれぞれ1cmほどで、形状は平面的です。発疹部分が赤くなるため「紅色丘疹(こうしょくきゅうしん)」とも呼ばれています。完全に発疹がなくなるまでに2〜4日かかりますが、自然と消えていきますので、特に治療をする必要はありません。

突発性発疹の赤ちゃんの写真(腹部)
突発性発疹症の発疹(提供:橋本先生)
突発性発疹の赤ちゃんの写真(背部)
突発性発疹症の発疹(提供:橋本先生)

突発性発疹症は乳児期の後半、つまり生後半年〜1歳台のお子さんが罹患します。非常に幼い時期に発症する疾患のため、初めての発熱が突発性発疹症であったというケースも少なくありません。

突発性発疹症といえば解熱後の発疹が特徴ですが、なかには発熱や発疹のない突発性発疹症もわずかながらに存在します。これには人種による差があるといわれています。

日本人の場合には突発性発疹症の患者さんのうち10%のお子さんは解熱時に発疹が出ないといわれています。つまり90%のお子さんは解熱時に発疹が出るということです。一方で、欧米の患者さんの場合には、むしろ解熱時に発疹が出るお子さんのほうが少なく、全体の30〜40%ほどといわれています。つまり、60〜70%のお子さんは突発性発疹に罹患しても、解熱時に発疹が生じません。

また突発性発疹症では発熱時に下痢の症状が出るケースもしばしばあります。この下痢は胃腸炎などによる脱水症状に陥るような激しい下痢ではないことも特徴です。

赤ちゃんと母親

突発性発疹症は感染症の1つです。原因となるウイルスはヒトヘルペスウイルス6型(HHV6)と呼ばれており、日本人であれば4歳以上の方のほとんどが保持しているといわれる一般的なウイルスです。突発性発疹症は成人から赤ちゃんへヒトヘルペスウイルス6型が感染することで発症します。

このウイルスは一度感染すると体から排除されることがありません。感染後は抗体ができ、正常な免疫で抑えられます。そのため、ある程度成長したお子さんや成人がこのウイルスを保持していることによって発熱を起こしたり、発疹が発生したりすることはまずありません。

「突発性発疹症」という診断がついたとき、一般的にはヒトヘルペスウイルス6型の感染によるものを指します。しかし医療機関では解熱発疹時に改めてウイルスの検査をすることはありません。そのため、時にはヒトヘルペスウイルス7型など、6型と似たような症状をもたらす別のウイルスが原因で突発性発疹症のような症状が見受けられることもあります。

当院でも突発性発疹症と診断した際、「前にも突発性発疹症と診断されたのに、また?」と不安に思う保護者の方がいらっしゃいます。基本的にはヒトヘルペスウイルス6型による突発性発疹症は一度きりですが、稀にヒトヘルペスウイルス7型、その他のウイルスなどにより似たような症状を引き起こし、複数回突発性発疹症と診断される方もいます。

ヒトヘルペスウイルス6型は健常者の唾液腺などに含まれています。そのため主な感染経路は唾液による成人から赤ちゃんへの接触感染です。

突発性発疹症は感染から発症までにおよそ9〜10日間の潜伏期間があります。しかしこのデータにも幅があり、文献によっては5〜15日間とさらに幅広い定義がされている場合もあります。

突発性発疹症はヒトヘルペスウイルス6型が体内に入ることで感染し発熱しますが、その後抗体ができてしまうと熱が下がり、発疹ができたのちに自然に治ってしまいます。そのためこの疾患に対し特別な治療をする必要はありません。

しかし、突発性発疹症は時に下記のような合併症を引き起こす可能性もあります。そのため、軽視せずお子さんの様子をしっかりみてあげることが大切です。

突発性発疹症の合併症としては下記のようなものが挙げられます。

<突発性発疹症の主な合併症>

熱性けいれん(こども)

急性脳症 など

特に熱性けいれんは全体の10%ほどに発症するとされています。さらに熱性けいれんを引き起こしたお子さんのうち、結果的に熱性けいれんではなく急性脳症による発熱・けいれんであったという症例を年間に1〜2名ほど経験しますので、注意が必要です。急性脳症に関しては記事2『急性脳症とは?-突発性発疹症による急性脳症の症状、予後、治療』で詳しく説明します。

突発性発疹症は自然治癒してしまう疾患なので病院に行く必要はないと考える保護者の方も多いでしょう。しかし、この疾患は発熱した段階では診断が難しく、解熱して発疹が確認できて初めて診断がつくこともしばしばあります。そのため、発熱時に他の疾患との鑑別が必要になることもあります。

突発性発疹症と鑑別が必要な疾患としては「尿路感染症」「川崎病」が挙げられます。尿路感染症は乳児で多い疾患です。発熱以外に目立った症状に乏しく、検尿を行わなければ診断することができません。また川崎病の場合には突発性発疹症と同じく発疹がでますが、発熱が持続したまま発疹が出ることが特徴です。さらに川崎病には目が赤くなる、唇が赤くなる、首のリンパ節が腫れる、手足がむくんで赤くなるなどいくつかの特徴的な症状がありますが、これらの症状は発熱が数日間続いた後に出現することが多いです。そのため発熱してすぐに診断することはできず、鑑別には時間経過が必要です。

上記のような疾患に罹患した場合、突発性発疹症とは異なり、それぞれ専門的な治療が必要になります。そのため、発熱時には一度病院を受診することをお勧めします。

赤ちゃんと赤ちゃん

ヒトヘルペスウイルス6型はほとんどの成人が感染しているウイルスです。そのため、成人と暮らす限り赤ちゃんをこのウイルスから守り、突発性発疹症を予防することはなかなか難しいのです。

一方で特発性発疹症は子どもから子どもへ感染し、ご家庭や保育園などにおいて爆発的に流行してしまうようなことは一般的にありません。お子さんがヒトヘルペスウイルス6型に感染し、発熱している最中は血液中にウイルスが回っており、多少ウイルスが排泄されているとされていますが、このときの感染力は非常に低く、また解熱と同時にウイルスの排泄もなくなっていきます。

ですから、お子さんが突発性発疹症に罹患してしまった際に、それが別のお子さんへと感染してしまうケースはそれほど多くありません。

保育園

突発性発疹症の特徴として、発熱時は比較的元気で、解熱時に興奮性の不機嫌が生じることがあります。

発熱時は39〜40度という高熱が出ますが、突発性発疹症の場合、発熱以外の症状がないため比較的活発で元気なのではないかと考えられています。また、解熱・発疹期は眠れない、泣きやまないなど不機嫌になってしまうことが多いのですが、発疹がなくなるのと同時によくなっていきますので、安静に過ごすのがよいでしょう。

なぜこのような現象が起きるのかはまだ明らかになっていませんが、解熱とともに徐々に落ち着いていきますので、ひとまず不安に思わず見守る姿勢が大切です。

突発性発疹症は前述の通り自然治癒が可能であるため、治癒証明が必要な疾患ではありません。しかし保育園に通うお子さんの場合、保護者の方はお子さんがいつから登園できるのか迷われることも多いかと思います。

実は突発性発疹症罹患後の対応について、厚生労働省からガイドラインが出ています。このガイドラインでは、「解熱後1日以上経過して、全身状態がよい」お子さんであれば保育園への登園も認められています。

しかしながら「解熱後1日」というとまだ発疹もみられる時期であるため、保育園の方針によってはその段階ではまだ登園不可とされる場合もあるかもしれません。心配であれば登園時に保育園の先生に相談されるのもよいでしょう。

小児救急市民公開フォーラム(平成29年11月11日@千葉)について詳しくはこちら

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