院長インタビュー

高齢者医療やリハビリテーション医療を提供する札幌西円山病院

高齢者医療やリハビリテーション医療を提供する札幌西円山病院
浦 信行 先生

医療法人 渓仁会 札幌西円山病院 院長

浦 信行 先生

この記事の最終更新は2017年08月14日です。

医療法人渓仁会札幌西円山病院は、札幌市中心部を一望できる西円山地区にあり、高齢者医療やリハビリテーション医療を中心とした医療サービスを提供しています。高齢者に特化した医療を実践する老年病専門医が9名おり、北海道のなかで最も専門的な診療を受けることができる病院です。また、2016年に神経内科総合医療センターを設立し、パーキンソン病などの神経難病の診断や治療を主とする神経内科診療や、リハビリテーション医療に力を入れています。

札幌西円山病院の特徴とこれからの進むべき道について、同院の病院長である浦 信行先生にお話を伺いました。

当院は、1979年に札幌市中央区円山西町に、高齢者医療に特化した治療を実践する病院として開院しました。開院当初は146床の病院でしたが瞬く間に満床になり、地域のみなさまのニーズに応じて、病床数を増やしてきました。現在は、障がい者一般病棟、回復期リハビリテーション病棟、医療療養病棟から構成され、病床数は650床を有しております。

看護に関しては、約300名のスタッフが患者さんの療養のケアにあたっています。リハビリテーションに関しては、約180名のリハビリスタッフが、回復期から維持期にいたるまでのリハビリテーションを提供しています。総勢約900名の職員がそれぞれの職種において高い専門性を発揮しながら、患者さんや利用者さんのニーズに合った医療を提供しています。

当院は、神経内科疾患の患者さんや、各種の疾病で重度の障がいを有する患者さんが主に入院する「障がい者一般病棟」、集中的にリハビリテーションを実践し、社会復帰・家庭復帰を目指す方を対象とした「回復期リハビリテーション病棟」、慢性疾患で医療依存度の高いご高齢の患者さんを総合的にケアする「医療療養病棟」から構成されています。

入院患者さんの85%が札幌市内の患者さんですが、札幌市外の患者さんも100名近くいらっしゃいます。なかには、道外から当院を希望して入院されている患者さんもいらっしゃいます。

入院患者さんの平均年齢は81.7歳で、入院患者さんのなかで最も多い疾患が、脳血管障害であり、次にパーキンソン病などの神経難病です。そして認知症疾患、骨関節系疾患と続きます。現在、650床の病床はほぼ埋まっており、平均在院日数は228.4日と長期入院の方が多くいらっしゃいます。

患者さんの平均要介護度は4です。要介護度4の患者さんというのは、日常の生活能力に対して全般的に低下がみられ、排泄、入浴、衣類の着脱などすべてに介助が必要と認められた状態が慢性化し、意思の疎通が困難となるなど、日常生活に重度の支障の有る方のことです。そのような患者さんは、痰の吸引や血糖値の管理など、なかなか在宅や施設では対応しきれないケースが多いです。当院の職員は3交代制で勤務にあたり、24時間体制で医療・ケアを提供しています。

当院は、消化器内科、循環器内科、呼吸器内科、腎臓内科、神経内科、血液内科、内分泌糖尿病内科の7科の専門内科医が勤務しており、主に高齢者に特化した医療を実施しています。

高齢者医療に長けた認定老年病専門医が9名、さらに認定老年病指導医が3名おり、日本老年医学会認定施設に認定されています。専門医の数は北海道内で最も多いです。

さらに、リハビリテーション科・歯科も併設し、高齢者医療に必要な体制を整えています。

高齢者の場合、加齢にともない複数の疾患を抱えている場合があります。また、治療やリハビリのペースを若い患者さんと同じようにはできないため、高齢者に適した治療を実施する必要があります。

当院に入院された高齢の患者さんで、6種類以上の薬を処方されていた方が多くいらっしゃいます。当院の医師たちは、その患者さんの年齢や症状などを総合的にみて診断し、処方する薬の量を減らす努力をしています。中には、認知症やうつの症状が落ち着き、退院できるまでに回復される方もいらっしゃいます。

最近の調査では、高齢の患者さんの場合、6種類以上の薬を処方されると、薬の副作用を起こすリスクが高まるといわれています。たとえば、うつ症状を抑えるための薬によって、身体活動量が低下し、認知機能低下や身体能力低下を後押ししてしまうことがあります。さらに、薬の飲み合わせによっては、相互作用で各々の薬剤の効果が減少したり、副作用の発症を増やしてしまうこともあります。そのため、疾患ごとに各診療科の専門医が対応するのではなく、患者さんの状態を総合的にみて、治療内容を決める必要があります。

当院では、高齢者医療を熟知した専門医たちが、患者さんの病歴、診断、予後予測から治療目的を設定し、患者さんがその人らしく生きていくために必要な医療の提供を心がけています。

高齢化とともにニーズが高まっているのが、神経内科です。神経内科は、脳や脊髄、神経の病気をみる内科です。体を動かしたり、感じたりすることや、考えたり覚えたりすることが上手にできなくなったときの診断・治療を受け持つ内科の重要な領域を担っています。しびれやめまい、歩きにくい、むせやすい、しゃべりにくい、もの忘れ、意識障害などさまざまな症状がありますが、まず、全身を診察できる神経内科医によりどこに異常があるかを見極めることが大切です。そのうえで骨や関節の病気が原因なら整形外科に、手術などが必要なときは脳神経外科に、精神的な原因は精神科にご紹介します。

当院には、神経内科医師が8おり、リハビリテーションも含めた治療計画を立て、病初期から終末期に至るまで、一貫した診療を行っています。以前は治療法がかなり限定されていたパーキンソン病などの神経難病も、病態の解明や、新たな治療の開発が進み、療養生活の質の向上が図れるようになりました。医師・看護師をはじめリハビリ療法士、薬剤師、検査部門、医療ソーシャルワーカーといった専門職がチームとして連携しながら、患者さんによりよい療養生活をお送りいただけるよう、日々努力しています。

当院は、北海道内でも数少ない「摂食嚥下外来」を設置し、地域のみなさまが安全においしく食べ続けるためのサポートをしています。高齢化や病気によって摂食・嚥下機能が低下したり、麻痺したりすると、食べ物をうまく飲み込むことができなくなる場合があります。これを摂食・嚥下(食べる・飲み込み)障害といいます。この障害のため、喉のつまり、窒息、むせを発症します。さらに食べ物が気管に誤って入ることで誤嚥性肺炎を発症したりすることがあります。

当院の摂食・嚥下外来では、リハビリテーション医師、歯科医師、看護師、言語聴覚士、歯科衛生士、管理栄養士などが互いに協力して、患者さんの症状に合わせて最適な治療を提案します。

2015年から認知症の方とそのご家族さま、地域の方を対象とした認知症カフェ(名称:スマイルカフェ)を毎月開催しています。専門家によるミニ講義や体験コーナー、地域の方同士のグループワークや相談会といったプログラムをご用意しています。2016年は、「認知症の患者さんのための訪問リハビリ」についての講義、「手軽にできる認知症予防とエクササイズ」といった体験コーナー、「認知症の方の自動車運転について」というテーマでのグループワークなどを実施しました。「認知症」をテーマに、認知症の方とご家族さまはもとより地域のみなさまが交流を深め、よりいっそう暮らしやすい地域になるお手伝いができれば、と取り組んでいます。

また、地域で暮らす高齢者のための医療公開講座を毎月開催しています。こちらは「認知症予防」、「生活習慣病対策」、「リハビリテーション」といったテーマで、さまざまな職種のスタッフが実践的な内容で実技を交えながら楽しくお伝えしています。当院が開院より37年間培ってきた高齢者医療のノウハウを、地域のみなさまのために少しでも役立てることができたらと、考えています。

当院がよりよい医療を提供できる病院であり続けるためには、職員の健康維持が大切です。職員の健康が病院の健康につながり、ひいては患者さんへのよりよい医療の提供を生み出すと考えています。

当院は、職員のキャリアプランを大切にしています。資格取得のためのバックアップをしたり、臨床研究を行う国内大学への留学を支援したりしています。また、渓仁会グループの強みをいかしたキャリアアップ(手稲渓仁会医療センターや札幌渓仁会リハビリテーション病院への異動・研修、社会福祉法人施設への転籍・研修)も可能です。

また、1980年には院内保育所を設置し、病院の設立当初から、24時間体制で職員の子育てと就労の両立を支援しています。

浦先生

当院では長年培ってきた高齢者医療のノウハウを蓄積しています。そのため、認知症やさまざまな内科的疾患などを合併している後期高齢者の患者さんにも、充実した医療・ケアを提供し、回復リハビリテーションを実施できます。当院に入院し、回復して自宅や施設に戻られた患者さんを退院後もケアできるよう、訪問リハビリテーションや訪問介護ステーションなどの在宅サービスとの連携をさらに強化していきます。

患者さん一人ひとりに寄り添って、患者さんにもご家族さまにも喜んでいただける医療を提供できるよう、職員一同努力してまいります。

※画像提供:札幌西円山病院

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  • 医療法人 渓仁会 札幌西円山病院 院長

    浦 信行 先生

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