えどわーずしょうこうぐん

エドワーズ症候群

(18トリソミー症候群)

最終更新日:
2021年11月25日
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2021/11/25
更新しました
2018/08/24
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概要

エドワーズ症候群(トリソミー18症候群)は、18番染色体が3本あることで、成長・発達の遅れ、体つきの特徴や臓器に症状を認める染色体疾患です。染色体疾患のある出生児では、ダウン症候群(トリソミー21)に次いで2番目に多く、頻度は約4,000人に1人です。女児に多い傾向があります(男児の約3倍)。

個人差はありますが、心臓、呼吸器、消化器などの病気が原因で、生後早期から全身状態が不安定になりやすいため、手厚い医療を提供できる施設での対応が推奨されます。

原因

通常2本の18番染色体が3本(トリソミー)となることで、18番染色体に含まれる約250個の遺伝子が量的に過剰となり、その結果、さまざまな症状を示します。染色体の本数が増える主な原因は、親の生殖細胞から精子・卵子が作られる過程で偶発的に起こる染色体不分離という現象です。一般に、ヒトの染色体は通常2本ずつが対となり23対、46本存在します。精子・卵子となる過程において染色体は2本が1本ずつに分離し、親の遺伝情報は半分ずつ子に受け継がれます。18番染色体に染色体不分離が生じて、精子または卵子に含まれる18番染色体が2本になると、相手の配偶子の1本と併せて、受精卵の段階では47本、18番染色体が3本あるトリソミー18の状態となります。

多くの場合、通常とは異なる染色体数の受精卵や胎児は発育が困難となり、自然流産することが知られています。トリソミー18の場合も、出生に至るのは約5%(20人に1人)といわれています。染色体不分離では、母年齢の高年化による影響が知られていますが、父年齢の影響を受けないわけではありません。

症状

エドワーズ症候群は、生まれつきの“体質”とも考えられますが、いくつかの特徴や症状をもつことが知られています。生まれつき体は小さめ(1,500~2,000gが多い)で、出生後の成長・発達はとてもゆっくりです。心臓、消化器、呼吸器、泌尿生殖器、筋骨格、中枢神経などに関連したさまざまな症状の合併、出現に注意する必要があります。

日常生活では、口から飲んだり食べたりすること、1人で歩いて移動すること、言葉を用いて会話することなどは難しく、周囲からの手厚い介助や支援が必要となります。一方で、マイペースではありますが、少しずつできることを積み上げ、表情や仕草を通じて、一人ひとりに個性豊かな成長・発達がみられます。

多くのエドワーズ症候群は、体をつくる全ての細胞で18番染色体が3本あるトリソミー型ですが、一部で染色体の数や形に変化を伴わない“正常細胞”と“トリソミー18細胞”が混在するモザイク型があります。この場合、トリソミー型と比べて症状が軽くなる傾向がみられますが、トリソミー型 と同様に定期的な健康管理は必要です。

身体的な特徴

折り重なり手指、(かかと)の目立つ足、後頭部の突出、小さな下顎、低い位置につく耳、短い胸骨、狭い骨盤など、よく見ると体つきは特徴的で、診断するときの参考となります。

臓器症状

妊娠中期から出生前後を通じて、全身の臓器と関連した症状が複数の部位に認めることが多く、その後、難聴腫瘍(しゅよう)を認めることもあります。なかでも、うっ血性心不全肺高血圧症誤嚥(ごえん)やウィルス・細菌による気管支肺炎になると、全身状態の安定を保つことが難しくなり、命を落とすことも少なくありません。

検査・診断

非典型例でなければ、特徴や症状の組み合わせからエドワーズ症候群を臨床的に疑うことは比較的容易です。診断を確定する臨床的意義は高いため、疑われた段階で担当医から家族に説明されることも少なくありません。

よく似た症状をもつ病気がほかにも存在するため、確定診断を目的に、しばしば遺伝学的検査が提案されます。

出生前に行われる検査

胎児期の超音波検査を用いて、小さく見える小脳、胎児発育の遅れ、羊水の過多、手足の特徴(折り重なり手指、踵の目立つ足)、心疾患、食道閉鎖などの組み合わせから、エドワーズ症候群を疑います。また、母体血を用いた母体血清マーカー検査(クアトロテスト)、それに加えて胎児の首のうしろのむくみ(NT)の厚さを組み合わせた検査(コンバインドテスト)、母体血を用いた母体血中にある胎児胎盤由来のDNAを調べる検査(NIPT)などの結果から疑われます。

ただし、これらはエドワーズ症候群の可能性を推定するもので、診断を確定することはできません。確定診断には、子宮に針を刺し検体を採取する絨毛(じゅうもう)検査、羊水検査が必要ですが、流産早産のリスクを伴います。0.3~0.5%の確率で検査後に流産をはじめとする何らかの異常が発生するといわれています。これらの検査は、妊婦健診の一般的な流れのなかで進められるものではなく、通常の妊婦健診で胎児に違いが認められ、染色体疾患のリスクが高いと判断された場合などに検討されるものです。その際、検査前からの十分な医療情報と心理社会的支援が提供されることが大切で、遺伝カウンセリングを受ける必要があります。検査を受けるかどうかは、妊婦・パートナーの意思決定に委ねられます。

出生後に行われる検査

エドワーズ症候群かどうか診断を確定するには、児の血液を用いて染色体検査が行われます。

治療

エドワーズ症候群という“体質”を根本的に変えることはできませんが、その子にある症状や状態にあった治療が検討されます。かつて、1年生存率が約10%という時代もありましたが、近年、人工呼吸管理、先天性心疾患、食道閉鎖などに関する治療効果のエビデンスが複数の施設から示され、人工呼吸管理を含む新生児集中治療や症状に応じた外科的手術を受けた例で、生存率の改善が報告されています。とはいえ、エドワーズ症候群がある子の生命・生活に関して、将来的にたどるであろう経過は、必ずしも良好とはいえません。担当医をはじめとする医療チームは、包括的な健康管理、療育、心理社会的支援について、さまざまな福祉資源、地域医療連携も活用しながら、その子、その家族によりよいと考えられる医療と生活の実現を目指し、家族を中心とした話し合いを通じて個別的な対応を心がけています。

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