ふくびくうえん

副鼻腔炎

同義語
鼻副鼻腔炎
俗称/その他
蓄膿症,ちくのう症
最終更新日:
2020年10月23日
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2020/10/23
更新しました
2020/10/20
更新しました
2017/04/25
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概要

副鼻腔炎とは、副鼻腔を覆っている粘膜が何らかの原因で炎症を起こしている病気のことです。突然発症し、短期間で治る急性副鼻腔炎と、3か月以上症状が続く慢性副鼻腔炎に分けられます。

副鼻腔とは、鼻の周辺にある空洞のことであり、鼻腔と細い管でつながっています。人の顔面には4つの副鼻腔が存在し、それぞれ以下のように呼ばれますが、いずれにも炎症が起こりえます。

  • 上顎洞(じょうがくどう)
  • 篩骨洞(しこつどう)
  • 前頭洞(ぜんとうどう)
  • 蝶形骨洞(ちょうけいこつどう)

この中でもっとも炎症を起こしやすいのは上顎洞ですが、副鼻腔炎の多くは複数の副鼻腔に同時に炎症を起こします。

非常に頻度が高い病気であり、小児から高齢者まで幅広い年代に発生します。多くは適切な治療を続ければ完治しますが、なかには髄膜炎視神経炎などの重篤な合併症を引き起こすことがあるので注意が必要です。

原因

副鼻腔を覆っている粘膜は、喉や鼻の粘膜と同じく粘液を分泌し、線毛(せんもう)という構造を持ちます。

線毛は細菌やウイルスなどの異物を捕らえ、体外へ排出するはたらきをします。このため、副鼻腔内に異物が侵入しても、線毛のはたらきによって副鼻腔内はほぼ無菌状態にあるのです。

しかし、粘膜の炎症によって線毛のはたらきが悪くなったり、鼻と副鼻腔をつなぐ細い管に閉塞があったりすると、副鼻腔内の異物や粘液が正常に排出できず、副鼻腔内に分泌物がたまります。このような状態が副鼻腔炎であり、副鼻腔に液体が貯留することでさまざまな不快症状を引き起こします。

副鼻腔炎は発症から治癒までの時間によって急性と慢性に分けられますが、それぞれ以下のような病変が原因となります。

急性副鼻腔炎

多くは急性上気道炎(いわゆる、かぜ症候群)の波及が原因であり、一般的にはウイルス感染から細菌感染に移行します。病気や薬の影響、あるいは加齢で免疫力が低下している方は真菌感染も起こります。

感染性のもの以外には、アレルギー性鼻炎による粘膜のむくみやポリープによって副鼻腔が詰まることが原因となります。

また、まれに鼻腔や副鼻腔周辺の腫瘍(しゅよう)などが原因となることがあるため、ただのかぜと見過ごせないこともあります。

慢性副鼻腔炎

急性副鼻腔炎が慢性化したもので、原因は急性副鼻腔炎とほぼ同様ですが、多くは細菌感染によるものとされています。

ただし、副鼻腔炎の症状が長く続くのは炎症やアレルギー症状が続くためではなく、粘膜の炎症やむくみを繰り返すことで線毛のはたらきが低下し、分泌物の排出が正常に行われないためとされています。このため、慢性副鼻腔炎の治療は大変難しく、長期間の治療が必要となることが多いです。

また、鼻腔や副鼻腔内のポリープや構造の異常によって物理的に副鼻腔が閉塞していることも考えられます。

最近では、治療に抵抗性を示す難治性の好酸球性副鼻腔炎が増えてきています。一般的な慢性副鼻腔炎では炎症部位に“好中球”という白血球が集まっていますが、好酸球性副鼻腔炎では“好酸球”という白血球が集まっていることからこのように呼ばれるようになりました。

好酸球性副鼻腔炎では両側の鼻の中に複数の鼻茸(はなたけ)(鼻の粘膜が腫れて(こぶ)のように膨らんだもの)ができ、手術をしてもすぐに再発を繰り返してしまうことがあります。また、原因は不明ですが一般的な慢性副鼻腔炎と比べて嗅覚障害が起こりやすい、喘息を合併しやすいといった傾向がみられます。

症状

副鼻腔炎の一般的な症状は、鼻汁、鼻閉、後鼻漏(こうびろう)(鼻汁が喉の奥に流れること)、頭重感、顔面の痛みや圧迫感、嗅覚障害などさまざまなものがあります。

咳や発熱などの症状がみられることもありますが、急性の場合には、急性上気道炎も同時期に発症することが多く、どちらからの症状なのかを判断することは困難です。

また、細菌感染による副鼻腔炎では歯痛と口臭が生じることもあり、虫歯を疑って歯科医院を受診した結果、副鼻腔炎と診断されるケースもあります。

副鼻腔炎の多くは軽い症状のみですが、炎症が脳内や目に波及すると、脳や目に(うみ)がたまったり、髄膜炎や海綿静脈洞血栓症などの重篤な合併症を引き起こしたりすることもあります。

検査・診断

主な検査は以下のとおりです。

画像検査

副鼻腔に液体成分がたまっていることを確認するための検査です。レントゲン検査は簡便に行うことができます。

CT検査では副鼻腔以外の病変や解剖学的な異常も評価することが可能です。MRI検査ではたまっている液体成分がなのか真菌(カビ)なのか、あるいは腫瘍性病変なのかを診断することが可能です。

内視鏡検査

鼻腔内を内視鏡で観察し、鼻腔の状態や副鼻腔からの膿の流出やポリープの有無などを観察する検査です。しかし、慢性の場合には鼻腔内に異常が見られないことも多く、内視鏡検査だけで診断をすることは困難です。

血液検査

炎症の程度を確認するために行います。細菌性では白血球やCRPの値が高くなり、治療の効果を判断するために定期的に行われることが一般的です。アレルギー性の場合は白血球の中で好酸球が多く見られるようになります。

培養検査

内視鏡を用いて、副鼻腔にたまった分泌物を採取し培養することで原因となる細菌を特定する検査です。治療が難しい慢性副鼻腔炎で行われることが多いです。

治療

多くは、投薬治療やネブライザー療法などの保存的治療によって改善します。急性の場合には、抗菌薬や鼻の炎症を抑える点鼻薬などが使用されます。

急性副鼻腔炎で汁を認めた場合、ほとんどの例で抗菌薬が使用されます。また、適宜鼻汁の吸引や生理食塩水による鼻腔洗浄などが行われます。

一方、慢性の場合には、炎症を抑える作用のあるマクロライド系抗菌薬を少量投与します。通常は2~3か月かけて投与しますが、特にアレルギー素因のある場合には治療効果を得られないこともまれではありません。

アレルギー性の炎症が見られる場合は抗アレルギー薬を投与します。鼻汁の多い患者さんには粘液溶解薬(去痰薬)を投与することもあります。また、ネブライザー療法やステロイド点鼻薬、鼻汁の吸引などもこまめに行う必要があります。

保存的治療で効果がない場合には、手術が行われることがあります。内視鏡を用いて、副鼻腔内の異常がある粘膜の除去や、各副鼻腔の隔壁を開放する内視鏡下鼻副鼻腔手術が主流です。

そのほかにも、解剖学的な異常を改善したり、ポリープを取り除く手術が行われたりすることもあります。

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