院長インタビュー

「大阪で最高の医療を提供する」ために―北野病院の理念と取り組み

「大阪で最高の医療を提供する」ために―北野病院の理念と取り組み
吉村 長久 先生

公益財団法人田附興風会医学研究所北野病院 病院長、京都大学 大学院医学研究科眼科学 名誉教授

吉村 長久 先生

この記事の最終更新は2017年06月01日です。

大阪市北区に位置する公益財団法人田附興風会医学研究所北野病院は、1928年に創設され、その長い歴史のなかで、総合力の高い医療を提供し続け、地域の方々をサポートしています。同院の理念や取り組み、今後の展望について、病院長の吉村長久先生にお話を伺いました。

北野病院は公益財団法人として病院を運営しており、京都大学と深い関連性を持っています。1925年、田附政次郎(たづけまさじろう)という実業家が、京都帝国大学(現 京都大学)医学部で病気を治療してもらったことに感謝し、医学の発達に貢献することを目的として京都帝国大学へ寄付を行いました。それから3年後の1928年、京都帝国大学医学部に附属する臨床医学研究用施設として、病床数120床をもって北野病院が開設されます。このような成り立ちから、当院は現在でも京都大学と深い関わりを持ち、臨床医学と医学研究、医学教育に力を注いでいます。

病院の正面玄関にて 前列左端:今村理事長 前列左から2番目:田附政次郎氏 北野病院より提供

2017年現在、北野病院は699の病床数と31の診療科を備え、およそ1,500名の職員が在籍しています。当院には診療科が幅広くそろっており、有能な専門医がそれらの診療科を担当しているため、どのような疾患を持つ患者さんでも安心して受診できる点が強みです。その結果、当院の病床稼働率は97.8%と高く、また外来には平均して1日に1,700名の患者さんが来院されています。現在の大阪市北区・中央区は都心回帰の影響により人口が増加傾向にあり、この傾向は今後も継続すると予測されているため、当院はこれからも地域の方々が安心して暮らせるよう、質の高い医療を提供し続ける役割があると考えています。

北野病院(大阪) 外観

北野病院の外観 北野病院より提供

前述の通り北野病院は、田附氏の寄付によって設立された研究用病院を始まりとします。「医学の発達に貢献する」という理念は現在も受け継がれており、医学研究所では当院の診療に基づいた臨床研究(臨床医学のデータを調査・観察することを主体とした応用的な研究)および基礎研究(医学における基本原理を解明するための研究)を行っています。同研究所には12の研究部門があり、その研究の成果は、脊髄再生や鼓膜再生などの先進的な医療にも応用されつつあり、今後も医学の発達に貢献したいと考えています。

旧病棟を利用した研究所の外観

北野病院の診療圏は大阪市内を中心としていますが、兵庫・京都・奈良を含めた大阪市近辺の広いエリアを含めて年間およそ9,000台もの救急車を受け入れています。当院の救急部は救急専門医を中心にして、当院生え抜きの医師や京都大学などから派遣された後期レジデント(3〜5年目の若手医師)、初期研修医を含めたチーム編成を行うことで、潤沢な人材確保を実現しています。また優秀かつモチベーションの高い人材を確保することで救急部の総合力が向上し、全国でも屈指の数の救急車を受け入れることが可能になりました。

北野病院(大阪)職員の方々

北野病院の職員の方々 北野病院より提供

前述の通り北野病院の病床稼働率は97.8%と高く、また患者さんの平均在院日数は12日ほどで推移しています。患者さんの在院日数が長期に及ぶと、急性期(早急な治療を要する疾患・怪我の初期かつ、容体が不安定な時期)の患者さんを受け入れるベッドが不足し、病院としての対応力が低下するため、慢性期(病状が安定しており、長期的な治療を要する時期)の患者さんを地域内で連携して受け入れることが必要です。今後も人口が増加傾向にある大阪市北部エリアにおいて、当院は地域内の病院と強く連携をとり、ベッドの不足を解消するという課題を解決していきたいと考えます。

私は2016年に北野病院へ赴任してまいりました。ただでさえ病院は予想もできないことが次々と起こる場所ですが、北野病院は今、変革期の真っ只中です。そのようなタイミングで病院長に就任した私の使命は、未来に自信をもって残せるような、よりよい環境を作ることであると感じています。

我々の使命は、「大阪で最高の医療を提供する」ことです。そのために当院は、地域が求める総合病院としての役割を全うし、経営基盤をしっかりと固めながら、患者さんの声・心に寄り添う必要があります。

我々は病院内で改善できることを1つ1つ改善し、地域と連携を強めながら、これからも患者さんが安心して過ごせる環境を作っていきます。

北野病院で働く意志のある若手医師の方々には、ぜひ早いうちにメンターとなる人物を見つけ、小さくまとまらず大きな夢を描いてほしいと考えます。

当院は医学研究にも力を入れているため、自分の突き詰めたい医学テーマをみつけ、その問いを医師人生のなかで解明できる場所となりえます。

医療の現場では、喜び・苦労を含めて、本当に様々なことが待ち受けています。そのなかで、少しでも患者さんの役に立つことをそれぞれが実行してほしいのです。「患者さんの役に立つ」ということは、シンプルなようで、実は難しいことかもしれません。これは私の医師としての人生を振り返って、感じていることです。しかし、日々の経験を糧に目の前の患者さんに向き合い、ぜひ少しでも患者さんの役に立ち、笑顔を作れる医師になってください。

いつか忙しかった毎日を振り返り、「少しでも患者さんの役に立てたかな」と思えたら、それはとても素敵な医師の人生だと思うのです。

北野病院における勉強会の様子 北野病院より提供

吉村長久先生

北野病院は、総合力ではどの病院にも負けない自信があります。300名の医師は、みな実力のある者ばかりであり、職員はいつも元気に患者さんをサポートしています。地域の皆様は、ぜひ安心して当院を受診してください。

我々は現在、新棟の建設計画を進めており、今後20年・30年先を見据えた将来的な計画を実行していく変革期にあります。我々はこれからも医療の力で患者さんをサポートし、「大阪で最高の医療を提供する」病院であり続けます。