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“情報”と“人のつながり”を通じてSMA家族を支え、 SMA患者さんが活躍できる社会を作りたい——SMA患者家族として、家族会として

“情報”と“人のつながり”を通じてSMA家族を支え、 SMA患者さんが活躍できる社会を作りたい——SMA患者家族として、家族会として
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

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提供:ノバルティス ファーマ株式会社

『SMAは症状や性質などから診断や日々の生活で戸惑うことも多いと思いますが、同じ経験をしている人同士の情報交換やつながりで支え合うことが重要です』と、SMA家族の会 会長の大山(おおやま) 有子(ゆうこ)さんは語ります。大山さんご自身が脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy:SMA)患者さんの母親でもあることから、ご自身の経験も合わせてSMAのご家族へのサポートや想いを聞きました。

今回は、私がSMA家族の会の活動の中で見聞きしたりする中でのお話をさせていただきます。また、最後に私の経験も少しお伝えできればと思います。

SMAは初期の症状に気が付きにくい、もしくは気が付いても「(経過観察と言われて)様子を見てしまい、診断が遅れる」ことがある病気です。

妊娠中に異常がなく、生まれたときも元気で母乳もしっかり飲むような赤ちゃんが、実はSMAだった―ということはあります。こういったケースでは、メディカルスタッフ(保健師、助産師など)の方も「発達は人それぞれだから、そんなに気にしなくても大丈夫ですよ。ゆっくり様子を見ましょう」と声をかけてくれますが、見た目だけでは判断しにくいのがSMAです。この病気は罹患率が10万人に1~2人程度※1と少ないため、“フロッピーインファント※2”など、特徴的な症状を経験している専門職の方もごく少数です。

そのため、SMAの赤ちゃんはだいたい「経過観察」になってしまい、誰にも気が付いてもらえず、診断までに長く時間がかかってしまうことが多いのです。

※1:難病情報センター

※2:筋緊張低下のため、からだがやわらかく、ぐにゃぐにゃしているように感じる状態の乳児

提供写真

SMA家族の会で多くのご家族の話を伺うと、受診のきっかけとして多いのは親の“違和感・直感”です。お子さんを一番見ているご両親の“感覚・勘”は当たっていることが多いのではないかと思います。また、初めてのお子さんの場合は気が付きにくいかもしれませんが、お子さんやお孫さんの育児経験がある方ですと「ちょっと体がやわらかい」、「泣き声が小さい」といった異変に気が付くことがあるようです。

この病気は早期診断が大切なので、「様子を見る」のは本当に怖いことです。「何かおかしいかも?」「他の子とちょっと違うかも?」と感じたら、「ちょっと様子を見てみたら」という声があっても自分の直感を信じて、医療機関に相談してみてください。不安があればSMA家族の会に連絡をいただければお話を伺えます。

SMAの診断を受けて治療をするのが怖いと感じることもあるかもしれませんが、病気かどうかは診断を受けなければわかりませんし、治療方針については、SMAとわかってから考えることもできます。日々の生活が忙しいと思いますが、「あのとき情報を得ておけばよかった」と後悔しないためにも、まずは知るべきこと(病気)を怖がらずに知ることが重要だと思います。

2020年11月現在では、遺伝子検査が比較的早く実施でき、SMAの治療薬もできましたので、まずは医療機関に行くことをお勧めします。ただ、最初にどの医療機関(診療科)にかかればよいかわかりにくいのが困ってしまうところだと思います。SMAでは小児神経科がある病院に行けるとよいのですが、地域によっては小児神経科が近くになく、難しいこともあると聞きます。SMAの診療可能施設の検索サイトを活用するのもよいかもしれません。

親が「ちょっと様子がおかしいかもしれない」と感じていても、情報を集める余裕がない場合もあります。そうなると、頼みの綱は赤ちゃんに携わるスタッフの方(例:健診担当の方々、保健師、ソーシャルワーカー、赤ちゃん広場にいる方々など)になります。SMAのことを「知らない」方、「何となく知っているけど、よくわからない」方も多いと思いますが、赤ちゃんと接するときにSMAのことを頭の片隅に入れていただけるとありがたいです。

治療法が出る前までは、医師からSMAの疑いや診断が伝えられるとき、親御さんは強い絶望感に打ちひしがれていました。

治療ができた後の親御さんも、診断後にもちろん落ち込んだり戸惑ったりされてはいますが、落ち込んでいる暇がない状況のように見えます。SMAでは、1日も早く治療することが本当に重要だからです。医師からも「明日にでもやらなければいけないことがあるので、落ち込んでいる時間はないですよ」と言われたと、ある患者さんのご家族から聞いたことがあります。

診断の直後に大きな決断をするのは本当に大変だと思いますが、お子さんの今後の発達のためにとても重要な時間ですので、皆さん前を向いて乗り越えていらっしゃる印象です。

最近診断を受けたというお子さんの親御さんには、「今は未来を信じることができないかもしれませんが、目の前のお子さんのために最善の選択をして、できることをしてあげてください」と伝えたいです。全国には同じ経験・思いをしている人がたくさんいます。ひとりで抱え込まなくても大丈夫。頼れる人には頼ってください。SMA家族の会がその支えになれるのであれば、力になれればと思います。

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加えて、診断を受けたばかりのご家族に伝えたいのは、「SMAの子供は本当に個性や才能が豊かな子が多く、その成長を見ることができるのは親として大きな喜びにつながる」ということです。「こんなこともやらせてあげたい」という気持ちを大切にしていただき、実現できたときには「こんなことがしてあげられた」といった親としての充実感も楽しんでいただけたらと思います。落ち込むことや苦労もありますが、ぜひ、お子さんの能力を信じてあげてください。

SMAの子供たちはよく考えて成長しています。本当に頑張り屋さんばかりです。

生まれてからずっと自分の体と向き合っているのが、SMAの子供たちです。他の人よりできないことが多いことを理解して、自分にできることを考えて生きています。現実的にはあきらめなければならないことも多いですが、できることもたくさんあることを知ってもらいたいです。

また、SMAの子供同士で交流を深める中で学びあっていることもあるようです。そんな子供たちの“頑張ろうとする姿勢”“生きようとする力”が、ご家族や支援者を「本人が頑張っている。私たちもサポートしよう」という気持ちにさせてくれます。

先々“壁”にぶつかることもあると思いますが、大変な状況に打ち勝ってきた子供たちなので、これからも乗り越えられるはずだと思っています。

SMA家族の会の主な目的は情報の収集・共有と、SMA患者さんがより楽しく生活できるように社会環境を変えていくことです。具体的には、患者さんとそのご家族同士のかけ橋になることに加えて、情報提供や選択肢を提供しています。

例えば地域で生活するうえで参考になる事例の紹介、施設やサービスの紹介、生活に役立つ冊子の作成などを行っています。治療だけではなく、装具やリハビリテーション、医療的ケアも日進月歩です。SMAに関する全ての情報が重要ですので、情報の幅を広げられるように心がけています。

またご家族が、今より少し先を見られるような情報の発信も心がけています。例えば、就学前のお子さんがいらっしゃるご家族が、就学に関する経験談などを知ることができるような情報発信です。近い未来に希望や道が見えることは力になります。

患者さんや支援者がこれらの情報をもとに、できるだけ多くの選択肢を手に入れて、その中から自ら納得して決断し、信じて進められる―このような一連の流れをサポートできるよう努めています。そして、その工夫の結果が新たな事例になり、次のご家族の参考になるという“好循環”が生まれていると実感しています。

別の観点で、活動として重要なのは“楽しむこと”です。人生は楽しむことが大切だと思いますし、楽しむことで前に進むことができると思います。

例えば、2020年には、患者さんのアート作品を集めた「SMA ART OLYMPIC 2020※3」を行いました。コロナ禍の最中にオリンピック・パラリンピックがなくなり、気持ちが沈んだのか、ご家族からも治療・リハビリテーション疲れを聞くようになりました。そこで、治療やリハビリテーション、さらには生活をもっと楽しんでもらおうと企画しました。

最終的に69もの作品が集まり私自身驚きましたし、本当に嬉しかったです。1つ1つの作品からは、力強さに加えてそれぞれの思いも伝わってきます。「体が動かない分、知恵・知識を活かそう」と努力をするのはSMA患者さんの優れた資質で、そういう一面も見えた企画でした。

SMA患者さんは、自分ができること・持てる知識を最大限活かすことを日々考えているので、日々の生活が鍛錬の場です。だから、才能が非常に伸びますし、今後活躍する方が増えると期待しています。

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※本写真はSMA家族の会ならびに制作者の許可のもとに掲載しています

※3:SMA家族の会ホームページにて「SMA ART OLYMPIC AWARD2020」の応募作品、受賞作品を公開中(2020年12月現在) 

今後はSMAという病気のこと、早期受診・早期治療の重要性を、もっと多くの人に知ってもらうことが目標の1つです。そのために、幅広く最新の情報をタイムリーに届ける手段はないものか、日々考えています。

また、マイノリティーに対する理解を広げ、障害があってもその人が力を発揮する場を提供できる社会にしていきたいです。そのために「SMAの患者さんが活躍できるんだ(就学・就労できるんだ)」、ということを伝えていく責務もあると思います。

昨今のIT化やリモートワーク化の加速は、SMA患者さんにとってはチャンスと捉えることもできます。SMA患者さんにとって移動は大きな負担ですので、それぞれの才能を自宅のIT技術を使って活かせる環境になることで、社会進出の機会が増えることを期待しています。

これらに付け加えるならば、「新生児マススクリーニング」にSMAを加えることが大きな目標です。自治体ごとに取り組んでいく必要がありますが、SMAの患者さんを生まれてすぐに診断することで、早期治療につなげ、呼吸補助などの医療的ケアを必要としないSMAの子供を増やしていきたいと思っています。

最後に私の経験になりますが、参考になれば幸いです。

私たちの場合、息子の1か月健診のときにたまたま来ていた大学病院の医師が母子手帳に「FLOPPY※4(フロッピー)?」とメモ書きをされていました。「FLOPPYって何だろう?」と思った私がインターネットで意味を調べ、その結果に不安になって専門機関を受診したことがきっかけで、生後4か月に確定診断を受けました。1か月健診のときから、診断までに3か月もかかっていますが、これでも診断まで早い方でした。

私の息子が診断を受けたとき、治療法はありませんでした。私の場合はまさに晴天の霹靂、「こんなによく笑っている息子がSMAなんて信じたくない」という気持ちが強く、不安でした。

親としては、治療法があと10年早くできていたら…と思わずにはいられません。しかし同時に、この10年の歩み、そしてSMAに関わる方々の長年の積み重ねにより、現在の状況が作り上げられていると実感します。SMAは大変な病気ですが、患者さんとご家族の大半も一度「治らない」とされた状況を受け入れてから強く生きています。希望を持ちながら、皆さんと一緒に育てられる病気だと感じます。

※4:筋緊張低下のため、からだがやわらかく、ぐにゃぐにゃしているように感じる状態のことをフロッピーインファントと言う。

私が「SMA家族の会」に入ったきっかけは、会の存在を主治医の先生から伺ったことでした。当時は診断されたばかりで、病気を受け入れられなかったり、日々の医療ケアに追われていたりしたため、「家族の会には入らない」と思っていたときもありました。そのため、「家族の会に入らない」と思う親御さんの気持ちもよくわかります。

息子が3歳くらいのときに少し余裕が生まれて「この子が成長するためにできることはないか」と考えるようになりました。例えば、SMAの子供には「動けないけど遊びたい」という気持ちが湧き上がってくるので、この子の気持ちに応えるためにどうすればよいか、親として悩みます。育てるうえでのヒントを知りたくて、SMA家族の会に入ることを決めました。

入ってみたら、先輩方がとてもパワフルで大きな刺激を受け、参考になる情報もたくさん得られました。また、先輩方だけでなく、創意工夫にあふれた同世代の会員さんたちに出会えたことも大きいです。

SMAは希少疾患なので、近くに同じ立場の人はあまりいないのですが、「独りじゃない」ことがわかって本当に力強く感じたのを覚えています。 “切磋琢磨”という言葉がぴったりくる間柄で、一緒だからこそ困難を乗り越えられました。SMA家族の会の皆さんには感謝でいっぱいです。情報だけではなく、人とのつながりが得られる集まりだと思います。

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息子を育てていて思うのは、SMAであってもちゃんと成長していけるということです。体も心も年相応に育ちますし、自然と強くなっていきます。また、息子の成長過程を見ていると、治療の効果だけではなく、もともと持っている能力が伸びているように感じることも多々あります。そんな子供の成長に後押しされるように、親も共に成長していくことができるのが、SMAという病気だと思います。

親の立場からは、息子がやりたいことに挑戦しながら、好きなことで生きていけるようになってほしい。好きなことができれば楽しく生きていけると信じています。介護が必要な体ではありますが、介護を受けながらでも自立した生活を送ることはできると思います。

また、私の経験上、あまりに遠い将来のことを考え過ぎずに今を充実させることが生活を楽しむコツです。治療やリハビリテーションはもちろん大切ですが、それだけに没頭しすぎず、その年齢のときにできる子育てを楽しむとよりよいかもしれない…ふと、そんなことを思うときもあります。

私がSMA家族の会の仕事を続けていられるのは、息子が元気に成長してくれていること、そして何より主人の理解とサポートがあるお陰です。2人には本当に感謝しています。

今、この記事を読んでいただいている方は、これまでにもさまざまな情報を集めているのではないでしょうか。

繰り返しになりますが、SMAは“成長できる病気”で、希望も未来もあります。病気とわかるのが早ければ早いほど、できることがたくさんあります。先々後悔しないためにも、まずは情報を得て、できることを見つけていただき、お子さんのために納得できる選択をしていただければと思います。

私はSMA家族の会の代表者として、小さなことをコツコツと積み重ね、その経験を次の世代につなげる使命感をもって、ひとりでも多くのSMA患者さんのためになることをしていこうと思っています。何かお力になれることがあれば幸いです。

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