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せきずいせいきんいしゅくしょう

脊髄性筋萎縮症

別名
SMA
最終更新日
2017年04月25日
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2017/04/25
掲載しました。

概要

脊髄性筋萎縮症(SMA)とは、運動神経系(運動ニューロン)が選択的に障害されることによって、必要な筋肉がだんだん痩せ細り、力がなくなっていく筋萎縮性の病気です。運動神経系は、脳から脊髄(あるいは延髄)につながる上位運動ニューロンと、脊髄(あるいは延髄)から先へつながる下位運動ニューロンに大別されます。脊髄性筋萎縮症は、この下位運動ニューロンが障害されることで発症します。

小児までに発症する患者数は、日本国内の発症率は10万人あたり1〜2人程度と考えられており、推定患者数は約1,000人という報告があります。なお脊髄性筋萎縮症は、難病および小児慢性特定疾患に指定されている病気のひとつです。

脊髄性筋萎縮症の症状は体幹や上下肢の筋萎縮や筋力低下で、重症度や発症年齢、臨床経過によってⅠ型からⅣ型にまで分類されています。早ければお母さんの胎内にいる頃から症状が出現する方もいる一方、成人になってから診断されることもあります。脊髄性筋萎縮症の治療では対象療法が中心となっていましたが、新薬も登場しています。また、各診療科で協力しあった医療体制が求められます。

原因

脊髄性筋萎縮症は、SMN1、UBA1、DYNC1H1、VAPB、SMN2と呼ばれる遺伝子の異常が原因だと考えられています。SMN1とSMN2遺伝子は、脊髄や脳幹部に存在する運動神経が正常に保持されるのに重要なSMNタンパクと呼ばれるタンパク質を産生します。

運動神経は、手足を動かしたり呼吸をしたりするのに必須な神経のひとつです。しかしSMN1とSMN2遺伝子に異常が存在すると、SMNタンパクの産生に悪影響が生じるようになり、神経細胞が死んでしまうため筋肉を動かせなくなり、筋肉がやせ細ってしまいます。なお患者さんによっては、正常よりも多いSMN2遺伝子を持つことがあることも知られています。遺伝子の数が増えるとSMNタンパクの量も増えることになり、病気の重症度が軽くなることもいわれています。

SMN1遺伝子異常に関わる脊髄性筋萎縮症は、常染色体劣性遺伝と呼ばれる遺伝形式を取ります。人の細胞には2本の遺伝子が存在していますが、遺伝子異常を1本だけもつ場合には保因者となるだけで病気を発症することはありません。しかし2本ともが異常な遺伝子を示すと、脊髄性筋萎縮症を発症します。

またUBA1、DYNC1H1、VAPBと呼ばれる各遺伝子の異常によっても、脊髄性筋萎縮症が発症すると考えられています。

これらの遺伝子は、神経の情報伝達や細胞内で蓄積される不要な物質の処理に関わっているため、遺伝子異常があることでこうしたはたらきが障害を受け、正常な運動神経活動が行えなくなってしまうのではないか、と考えられています。

UBA1遺伝子に関わる脊髄性筋萎縮症は、伴性劣性遺伝と呼ばれる遺伝形式を取ります。伴性劣性遺伝では、原因となる遺伝子がX染色体と呼ばれる性染色体に位置しています。男性はX染色体を1本しか持たないため、異常な遺伝子を持つと病気を発症します。女性はX染色体を2本持つため、1本なら保因者、2本持つと発症します。

DYNC1H1とVAPB遺伝子に関わるものは、常染色体優性遺伝と呼ばれる遺伝形式を取ります。常染色体優性遺伝では、1本異常な遺伝子を持つのみで病気が発症することになります。

症状

脊髄性筋萎縮症は、原因となる遺伝子、病気の重症度、発症年齢などによって4つのタイプに分類されています。いずれのタイプでも、主な症状は

  • 筋力低下
  • 筋肉のやせ細り(筋萎縮と呼びます)

です。
多くは小児期までに発症する病気ですが、大人になってから明らかになる方もいます。重症の場合、出生前の段階で胎動が少ないなどの症状を確認することがあります。
多くの場合は生後6か月ごろまでに発症し、

  • 自力で呼吸できない
  • ものを飲み込む力が弱い

などの症状が出ます。また、ものを飲み込む力が弱いことから誤嚥を起こしやすく、なかには肺炎や呼吸不全などをきたすこともあります。このタイプの予後は非常に悪いと報告されています。
その他のタイプでは、手足の筋力が弱いためお座りや、自力歩行が難しくなってしまいます。また、手足をうまく動かせないため、成長とともに関節が固くなったり、脊椎(背骨)が曲がったりすることがあります。呼吸や嚥下などの機能も低下するため、誤嚥し、肺炎に進展することもあります。
 

検査・診断

脊髄性筋萎縮症では、下位運動ニューロンに障害があるかを確認する検査を行います。具体的には、電気生理学的な検査を行いますが、針筋電図検査では年齢的な問題から実施が難しい場合もあります。また筋肉の生検により筋肉のやせ細り具合などを観察することもあります。

脊髄性筋萎縮症では関連遺伝子も判明してきているため、遺伝子検査を実施して原因遺伝子に異常がないかどうかを判定します。特に血液検査では患者さんの身体的負担は採血のみで済むため、まず遺伝子検査をして他の検査を実施するか判断することも多いです。

治療

脊髄性筋萎縮症では、これまで根本的な治療法はありませんでしたが、ヌシネルセンナトリウムというアンチセンス核酸医薬品が2017年7月3日に製造販売承認を取得して脊髄性筋萎縮症の一部に使用できるようになりました。

また、対症療法が行われます。筋力低下が著しく自力での呼吸が難しいなど呼吸障害がある場合には、鼻マスク人工呼吸を含めた呼吸管理を実施することがあります。胎児期や新生児期など早い時期に発症した患者さんで経口哺乳がうまくいかない場合には、チューブを利用した栄養投与が検討されます。患者さんがある程度成長すると、リハビリテーションや装具の着用などを早い段階で実施し、関節の動きの悪化・背骨の曲がりを防ぎます。

脊髄性筋萎縮症の治療は、長期的な全身フォローアップが必要になります。したがって、小児科・内科・整形外科など各科の垣根を越えた包括的医療体制が重要です。

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