インタビュー

「1人で悩まず、まずは行動を」——脊髄性筋萎縮症(SMA)の子どもを育てるなかで感じた思い

「1人で悩まず、まずは行動を」——脊髄性筋萎縮症(SMA)の子どもを育てるなかで感じた思い
メディカルノート編集部 [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

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脊髄性筋萎縮症(せきずいせいきんいしゅくしょう)(spinal muscular atrophy:SMA)は、遺伝的な要因で運動神経細胞が変化することにより筋肉の緊張や筋力が低下し、次第に筋肉がやせ細っていく病気です。今回メディカルノート編集部は、脊髄性筋萎縮症(SMA)と診断された2人のお子さんを持つ親御さんにインタビューをさせていただきました。脊髄性筋萎縮症(SMA)のお子さんを育てるなかで、どのような悩みに直面し、どのようにして乗り越えてきたのでしょうか。また、どのような思いをもって脊髄性筋萎縮症(SMA)と向き合っているのでしょうか。

息子さんの場合――“経過観察”で診断が遅れた

「あれ、何かがおかしい」。最初にそう感じたのは、息子が生後3~4か月のときです。当時、未就園児の育児サークルに通っており、同月齢の子どもたちと一緒に遊ぶ機会が多かったのですが、同月齢の子どもと息子には成長の差がありました。息子以外の子どもたちはもう踏ん張る動作ができているのに、息子はまったく踏ん張らないのです。「発達がゆっくりめなのだろうか」とも思いましたが、それ以上の違和感が心に残って消えませんでした。

生まれたときにいわゆる頭血腫(ずけっしゅ)*が少し大きかった息子は、念のため生後1か月から定期的に病院で診察を受けていました。そのため、まずはその病院の主治医に相談したのですが、やはり発達の個人差であろうということで“経過観察”となりました。

それからしばらくの間“経過観察”を続けましたが、一向に息子の状況は変わりませんでした。「本当に大丈夫だろうか」という不安に駆られていろいろと情報収集をしているうち、脊髄性筋萎縮症SMA)の身体的特徴である“フロッピーインファント**”の画像をSNSで偶然発見。その瞬間、「これかもしれない……いや、これだ」という嫌な予感がしました。その画像に写る子どもの体は、息子の体とまったく同じ状態だったからです。

「もしも何か重い病気だとしたら、発見が遅れることは避けたい」という強い思いがあったので、当時お世話になっていた先生には何度か「専門的な病院で詳しく診ていただきたいです!」とかなり強く訴えましたが、知能面には問題がないこともあり、やはり“経過観察”が続きました。過去に唯一、たった1日だけですが、うつぶせの状態から顔をあげた奇跡の日があったので、先生も病気の可能性を疑わなかったのかもしれません。

しかし、その後も病状は進行。一時はきちんと座っていた首が徐々に座らなくなってきたことで、ようやく先生も異変に気付いてくれたようでした。生後10か月のときに専門的な病院へ紹介を受け、生後11か月で脊髄性筋萎縮症(SMA)と確定診断されました。

それから治療を開始し、現在は定期的に薬物治療を受けたり、リハビリテーションを続けたりしながらも明るく元気な子に成長しています。

*頭血腫:生まれてくるときに頭部が圧迫されてできることがある柔らかいコブ。骨膜下血腫。

**フロッピーインファント:筋緊張低下のために体が極端に柔らかく、ぐにゃぐにゃしているように感じる状態の子ども。

娘さんの場合――出生前診断が早期診断・早期治療につながった

娘のときは、もし脊髄性筋萎縮症(SMA)だった場合でもすぐに治療を開始できるように出生前診断を受けたため、その時に分かりました。

もともと息子にきょうだいを作ってあげたいという思いはありましたが、2人目を作ることについて、正直最初は悩みました。脊髄性筋萎縮症(SMA)はきょうだいともに発症する可能性がある“常染色体劣性(潜性)遺伝”の病気だと聞いていたので、その時から「おそらく、次に生まれてくる子も脊髄性筋萎縮症(SMA)だろう」という感覚がなんとなくあったのかもしれません。けれど「次に妊娠した子がまた脊髄性筋萎縮症(SMA)だったらどうする?」と自分に問いかけたとき、返ってきた答えは「そうだとしても産もう」でした。生まれてすぐに治療が開始できる環境が作れるのであれば、きっと大丈夫だろうと思ったのです。

出産後、できる限り早く脊髄性筋萎縮症(SMA)の治療が受けられるよう先生にお願いして、多くの方にご協力いただきながら娘を出産。すぐに脊髄性筋萎縮症(SMA)の確定診断がなされ、従来の薬による治療を生後9日目に開始しました。また、その後しばらくして脊髄性筋萎縮症(SMA)の新しい薬が使えるようになったため、新しい薬による治療も生後3か月で受けることができました。出産後ずっと成長の様子を見守っていますが、早期診断・早期治療ができたこともあってか、おかげさまで今のところ発達の遅れもなく、元気にすくすくと育っています。

息子のときは「やっぱりな」と思いました。自分自身でもある程度情報を調べていたので、ショックだったというよりも、何かできることがあるなら早く次のステップに進みたいという気持ちが強かったです。

ただ、診断が遅れたので、「やっと治療やリハビリができる!」という期待が膨れ上がる反面で、「私たちが死んだ後、この子はどうなるのだろう」という将来への漠然とした不安も消えませんでした。息子と接しているときは前向きな気持ちになれましたが、1人になった時にふと後ろ向きの考えが浮かんできてしまったこともありました。

一方で娘の場合は出生前診断だったため、不安よりも、「早く治療できる!」という期待のほうが大きかったです。

自分の“勘”を信じて

早期診断のために重要なことは、心の中で疑問を抱くだけではなく、声を大きくして行動することだと思います。

もしもあのとき息子を最初に診ていただいた病院で、もう少し強く「専門施設で診てもらいたい」と先生に訴えていたら、もっと早くに脊髄性筋萎縮症SMA)と診断されて、もう少し体が力強い状態を保てたのではないかと思うと、後悔せずにはいられません。

子どもに対する親の“勘”は何よりも正確なものだと思います。ですから、ほんの少しでも「おかしい」と思ったら、その“勘”を信じて子どもを病院に連れて行ってください。そして、一刻も早く専門的な検査を受けたいと先生に相談してほしいです。

脊髄性筋萎縮症(SMA)は常染色体劣性(潜性)遺伝性疾患の1つであり、その変異遺伝子を持っている人が全員病気になるわけではないものの、遺伝子自体が消えてなくなることはありません。ですから、脊髄性筋萎縮症(SMA)のように治療法があって早期発見できるかどうかが子どもの将来に大きく影響するような病気においては、新生児マススクリーニングなど、生まれた後すぐにできることを行うのも必要な方法だと思います。今後、脊髄性筋萎縮症(SMA)が新生児マススクリーニングの対象として公的に追加されることを強く願っています。

息子については、今も4か月に1回の頻度で薬を投与しながら病状をコントロールしています。成長と共に少しずつできることも増えてきて、短時間であれば自分で坐位もできるようになりました。嚥下機能(えんげきのう)にも問題はありません。

気になっている点は、体幹が弱いために後弯(こうわん)*が出始めてきていることと、筋肉量が少ないために体調管理が難しいことです。たとえば息子の場合は、活発で活動量が多いのにとても食が細いので、よく低血糖になってしまいます。

背骨に関しては整形外科の先生に診ていただいており、低血糖に対しては小まめに補食の回数を増やすなどの対策を行っています。

娘については、定期的に運動機能および心理発達の評価をしていただいています。現在のところ運動機能や心理発達に遅れもなく、順調に成長していると思います。

取材後編集部追記:取材から約4か月後の2021年3月、お母さまより、お子さん方の近況についてご連絡をいただきました。

お母さまによると、息子さんは装具を装着しながら自立し、手を使えるようになりました。その結果、最近では戦隊物のヒーローが変身する動作もできるようになったとのことです。

装具付きで自立する息子さんの姿

また、娘さんは自然に歩行を開始しました。現在、ハイハイはほとんどしなくなっており、歩行中に一度座り込んでも自力で立ち上がってはまた歩いているとのことです。

歩行する娘さんの姿

そうした我が子の成長を見守る中で、お母さまは「やはり脊髄性筋萎縮症SMA)は早期診断が重要な病気であり、おかしいと思ったら様子見はせず、一刻も早く病院に行ったほうがよい」とあらためて思われたそうです。

*後弯:背骨が後ろに曲がっている状態。

成長の状況

息子は現在、訪問リハビリと通院リハビリを併用で行っています。

今のリハビリの内容は、立位台に立つ、装具をつけて自分の足で立ち体幹のバランスを取る練習、膝や背骨が拘縮(こうしゅく)しないためのストレッチなどです。息子は時々嫌がる日もありますが、基本的には楽しみながらリハビリを行っていると思います。ヨガボールに乗って背筋を伸ばしたり、装具をつけてダンスをしたりと、先生方が上手に遊びを交えながらリハビリをしてくださるので、本人にとってはリハビリというより遊びの延長線のような感覚かもしれません。

「この子たちの主治医はどなたですか」と聞かれたら、1人に決まっていないかもしれません。脊髄性筋萎縮症(SMA)の専門医の先生や実際に治療をしてくださる先生のほかにもいろいろな方々にお世話になっており、たとえばリハビリは別の病院に通っていますし、背骨のケアをしてくださるのはまた別の病院です。病院以外では療育も利用しており、発達のことで悩んだときは療育スタッフの方に相談することもあります。そのように考えると、主治医・リハビリの先生・整形外科の先生・理学療法士・作業療法士・療育の方々と、皆さんがチームになって息子を診てくださっているのだと感じます。

また、それぞれの先生方からいただいた情報は私たちに集約されるので、その情報をチームの皆さんに共有することが親である私たちの役割といえるかもしれません。

医師の方々は医学的なことに対する質問には答えてくださりますが、子どもとの生活を送るうえで生じるリアルな悩みに対しては明確な答えを持ち合わせない場合もあります。生活面で悩みが出てきたとき、“脊髄性筋萎縮症SMA)家族の会(以下、家族の会)”はとても頼りになる存在だと感じます。

家族の会には息子が脊髄性筋萎縮症(SMA)と確定診断されてすぐに入会しました。それ以降、困難な壁にぶつかったときはいつも家族の会の会員さんたちに相談し、助けていただいています。先輩のお母さんたちが実際に経験したことを教えてくれるので心強いですし、1人で悩まなくても大丈夫だと感じることができます。

息子も娘も、治療の効果はどんどん現れてきていると感じています。このまま元気に成長して、ゆくゆくは私たちが普通にしていること——たとえばものを取る、行きたいところに自分で行くなど——を、誰かにお願いせずとも自らの力でできるようにしてあげたいです。もちろん、まだ症状が見られることはありますし、全て100%上手くいくだろうと期待ばかりしているわけでもありませんが、この子たちがこれから力強く生きていけるようになるために、親として今できることを精一杯していきたいと思います。

2021年4月より、息子は念願かなって地域の幼稚園に入園する予定です。たくさんの園を1軒1軒あたり、何軒も断られ続けて、ようやく受け入れ先を見つけることができました。見学させていただいた際、息子はバギーに乗りながらも園の子たちと一緒に楽しく遊んでいたのが印象に残っています。私たちが思っていた以上に子どもたちは分け隔てなく接しているということに驚きつつ、嬉しかったです。

そこへの入園が決まるまでさまざまな施設に相談させていただいたのですが、ほとんどが“歩けないから”という理由で断られてしまい、まだまだ日本はハンディキャップがある子どもたちにとって生きづらい世の中なのだと実感せざるを得ませんでした。

歩けないハンデがある子どもも、そうでない子どもも、社会性を身につけることで将来の可能性をより広げられると思います。これからはよりいっそう脊髄性筋萎縮症SMA)などの子どもたちへの理解が進み、社会全体が変わっていってくれることを願っています。

よりよい社会生活のために社会全体で障がい児への理解が進んだ社会を願う

地域の病院の先生方をはじめ、子育て支援センターに勤める方や新生児訪問を行う保健師さんなど、赤ちゃんとかかわる職種の方や赤ちゃんの相談を受ける職種の方には、一般家庭の親から「子どもの様子が気になる」と相談を受けたとき、「すぐに専門機関へ紹介すべき病気の可能性がある」ことを意識してくださると嬉しいです。

治療を開始するためには診断をつけなければなりません。しかし、親がどれほど自分の子どもの状態に疑問を抱いて病院に相談しても、先生に“経過観察”と言われてしまえば、その間にどんどん病気が進行していってしまいます。息子の場合も、発達の遅れと思われて“経過観察”が続いたことで診断が遅れ、治療も遅れてしまいました。ですから、脊髄性筋萎縮症SMA)の子どもたちとその親にとって“経過観察”は怖い言葉なのだということを先生方にも知っておいていただきたいです。

ほんの少しでもお子さんの様子に違和感があり、今まさにスマートフォンで脊髄性筋萎縮症(SMA)のことを調べていたという方がいらしたら、その気持ちと行動力を病院に向けてみませんか。そして、スマートフォンに打ち込んでいた不安な気持ちやお子さんの症状を、そのまま先生に伝えてください。繰り返しになりますが、我が子に対する親の“勘”は何よりも間違いがありません。ですから、もしそこで先生から「経過観察しましょう」と言われても、どうか自分自身の“勘”を信じて、「脊髄性筋萎縮症(SMA)ではないでしょうか? 専門的な施設できちんと調べたいです」と強く訴えかけていただけたらと思います。病気と診断されるのは怖いことかもしれませんが、病気の発見が遅れることはもっと怖いことです。もし、病気でなければそれはそれでよいのですから。

きっと今、不安と期待が入り混じった気持ちでいらっしゃるだろうと思います。私たちも子どもたちが脊髄性筋萎縮症(SMA)と確定診断された直後に抱いた思いは、治療を開始できる喜びだけではありませんでした。いくら心の準備をしていたとしても、いざ診断されると不安や緊張、困惑といった感情が出てきますし、それは無理やり消せるものでもないと思います。

脊髄性筋萎縮症(SMA)の子どもを育てることは、つらいことや悲しいことばかりではないですし、子どもたちの笑顔に元気をもらいながら支え合って生きています。ですから、どうかお子さんが脊髄性筋萎縮症(SMA)と診断されたことを悲観的にとらえすぎないでほしいです。

最後にお伝えしたいのは、「あなたは決してひとりではない」ということです。不安なときや悩んだとき、手を差し出したら周りにはその手を掴んでくれる仲間がいます。頑張ろうとしなくても大丈夫ですから、同じように脊髄性筋萎縮症(SMA)の子どもを育てている仲間と一緒に、あなたのお子さんを見守っていきましょう。

子どもが脊髄性筋萎縮症(SMA)と診断されたばかりの親御さんへ

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