船橋市のがん医療

船橋市のがん医療

写真:PIXTA

人口が増加していく中、
がんの診療体制をどう整えていくか

船橋市は千葉県北西部に位置し、2024年3月時点の人口は約65万人にのぼります。全国的に人口減少が続く中、同市は人口の増加が続き、2033年まで微増を続けると見込まれています。高齢化率も徐々に上昇しており、2022年時点では24.0%のところ2033年には26.1%、2053年には33.1%まで上昇する見通しです。人口増加と高齢化が進むなか、がんを包括的に診療できる医療機関が充足しているとはいえず、東京都内などほかの地域の医療機関を受診するがん患者さんも少なくありません。地域においてしっかりとがん診療を提供できる体制を整えていくことが求められています。

船橋市の医療を支える
船橋市立医療センター

船橋市の医療を支える船橋市立医療センター

“相互信頼の医療”をモットーにがん診療連携拠点病院としての役割を果たす

船橋市立医療センターのモットーは“相互信頼の医療”です。患者さんに信頼される医療を目指し、患者さんの権利を尊重し十分な説明と同意を得ること、水準の高い診療を行うこと、地域医療に貢献することを大切にしています。
がん診療においては各診療科が連携して集学的治療を行い、がん診療連携拠点病院として船橋市のがん診療を支えています。2024年現在、当院にはがんを専門とする医師が多数在籍しており、診療から治療、緩和ケア、がん相談などに幅広く対応しています。さらに、当院は多くの診療科を有する総合病院であるため、心臓疾患や糖尿病などの併存症のある患者さんにも安心してがん治療を受けていただける体制を整えています。全国的な臨床試験グループである“日本臨床腫瘍しゅよう研究グループ(JCOG)”にも参加するなど、研究活動にも力を入れています。
将来的には新病院への移転を予定しています。新病院はプライバシーに配慮して多くの病床を個室にし、手術室を増やすなどしてより高度ながん治療を導入していく予定です。今後も地域医療にますます貢献できるよう発展してまいります。

院長プロフィール
茂木 健司 先生のインタビュー記事

船橋市立医療センターの
前立腺がん・乳がん・
肺がん・大腸がんの治療

前立腺がんの治療

新たな検査機器を導入し診断精度の向上を実現

前立腺がんは、男性で罹患数が最も多いがんです(2020年時点)。主に60歳以上の方に多くみられます。他のがんと比較してゆっくり進行するため、早期発見・治療で根治が見込めます。船橋市では50歳から5年ごとに検診の対象となるため、当院を受診される患者さんは検診で異常が見つかったり、排尿障害や頻尿をきっかけに近隣のクリニックを受診して紹介されたりするケースが多いです。検診をきちんと受けるとともに、気になる症状がある方はぜひ早めの受診を検討していただきたいです。

新たな検査機器を導入し診断精度の向上を実現

前立腺がんが疑われる場合はMRIを撮影後、確定診断のために前立腺の一部を採取して調べる前立腺針生検を行います。生検の診断精度をより高めるために新たに「標的生検」を2025年5月から開始しました。この検査には、MRI画像と超音波画像を融合させたイメージ画像を使用します。イメージ画像をリアルタイムに確認しながら針を刺すことでがんの疑いがある部位をより正確に狙って採取することが可能になります。

ロボット支援による精密な手術で傷を小さく機能回復も早める

画像診断によってがんの進行具合(ステージ)を判断し、結果を基に手術、放射線治療、薬物療法の3つから治療を選択します。ごく簡単に言うと、転移がなければ手術もしくは放射線治療、転移があれば薬物療法が検討されます。

ロボット支援による精密な手術で傷を小さく機能回復も早める

当院では2018年に手術支援ロボット「ダヴィンチ」を導入し、現在前立腺がんに対する手術は全てロボット支援下で行っています。ロボット支援手術は開腹手術と比較して傷が小さいため、体への負担が少なく早期の社会復帰が可能になります。術後の後遺症として気にされる方が多い尿失禁についても、手術精度の向上により骨盤内の筋肉群をできるだけ損傷させず、膀胱と尿道をきちんとつなぐことで開腹手術よりも失禁から回復するまでの期間が短くなることが期待できます。
また、当院には、「執刀経験40例以上」などの条件を満たした“泌尿器ロボット支援手術プロクター*”が在籍しています。さらに手術のレベルを高く保つために手術動画を共有するなどして、医師全員が日々研鑽に努めています。
前立腺がんは高齢の方が多い病気ですので、手術の負担が少なくなったとはいえ、体力的に手術が難しい場合もあります。その際は放射線治療や薬物療法を行います。治療方法は、それぞれの効果やメリット・デメリットを丁寧に説明し、患者さん一人ひとりの生活状況やご希望を伺いながら、一緒に決めていくことを心がけております。
前立腺がんは転移がない段階で手術をした方の生存率は極めて高く、長い予後が予想されることから、手術後のQOL(生活の質)をなるべく低下させないことが大切です。当院では後遺症に配慮し、リハビリテーションも丁寧に行います。地域のがん診療連携拠点病院として、患者さんに寄り添いながら治療を進めていくことをモットーにしていますので、ぜひお気軽にご相談ください。

泌尿器ロボット支援手術プロクター:日本泌尿器科学会、日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会認定。ロボット支援膀胱全摘除術・前立腺全摘除術の執刀経験数が要件の1つとされる。

解説医師プロフィール

乳がんの治療

患者さんの状況に合わせて検査や手術日程を迅速・柔軟に調整

患者さんの状況に合わせて検査や手術日程を迅速・柔軟に調整

写真:PIXTA

当院の患者さんとしては、しこりを自覚、あるいは検診で要精密検査となった方や、地域のクリニックなどで乳がんの診断となった方、診断が困難だった方などがいらっしゃいます。
精密検査(針生検:病変の一部を採って調べる検査)が必要な場合は当日あるいは1~2週間以内に行えるようにしています。
クリニックで確定診断がついている場合は、なるべく早くがんの性状や転移の有無を調べるために基本的に当日中に超音波検査を行ない、手術日を決定します。若い患者さんが多い乳がんだからこそ、検査や手術の日程は、お仕事や家庭の状況に合わせて柔軟かつスムーズに決めていくことを心がけています。そのほか、マンモグラフィで発見された石灰化(カルシウムが沈着したもの)の病変に対しては、必要に応じてステレオガイド下マンモトーム生検も行っています。超音波検査では分かりにくい石灰化をより正確に診断するのに有用な検査です。

乳腺専門医や乳がん看護認定看護師による手厚いサポート体制

当院の強みは5人の乳腺専門医*と2人の乳がん看護認定看護師**、2人の形成外科医、3人の放射線治療医、産婦人科専門医***など各分野の専門家が在籍していることです(2025年5月時点)。日々のカンファレンスはもちろん、診察の合間にも患者さんの病状や治療状況、家庭環境などの情報共有を密に行うことでチーム一丸となって患者さんを支える体制を整えています。

乳腺専門医や乳がん看護認定看護師による手厚いサポート体制

乳がんの治療に関しては、分業制(手術は乳腺外科、抗がん薬は腫瘍内科など)を取っている病院もありますが、当院では主治医となる乳腺外科医と2人の乳がん看護認定看護師が、診断から手術・薬物療法、再発したときの治療や緩和ケアまで一貫して責任を持って担当します。双方利点がありますが、当院では一貫して担当することで患者さんがより安心感を持って治療に向き合っていただけると考えこのような体制を取っています。

乳腺専門医:日本乳癌学会認定

乳がん看護認定看護師:日本看護協会認定

産婦人科専門医:日本産科婦人科学会認定

整容性と根治性の両立を目指し術中病理診断に注力

手術法の一つである乳房温存療法では、術中病理診断を行います。採取した細胞を顕微鏡で調べる細胞診によって、切除した乳腺の断端にがんがないことを手術中に速やかに確認します。少しでもがんが残っている疑いがあるときは、より詳細に確認する組織診まで行い、がんを取り残さないように努めています。これにより再手術の可能性、乳房内再発のリスクを最小限にできるようにしています。術中病理診断は時間と手間がかかる作業ですが、切除範囲の的確な見極めに努めることは整容性の維持にもつながるため、当院では乳腺外科医と病理医が緊密に連携し、特に力を入れて行っています。
乳房全切除が必要になる患者さんには、同時、または術後の乳房再建手術も対応可能です。同時再建を受けるか悩まれる方には形成外科医が「入院の当日までに決めてもらってもいいですよ」とお声がけすることもあります。患者さんの気持ちに寄り添いながら進めていきますので、分からないことや不安がある方はご相談ください。
また、小さな乳がんに対するRFA(ラジオ波焼灼しょうしゃく療法:切らずに直すことを目指す治療)、遺伝性乳がんの患者さんに対する発症していない側の乳房の予防切除や、免疫チェックポイント阻害薬、遺伝子パネル検査などの新しい検査や治療法を積極的に導入し、よりよい治療選択ができるよう努めています。

整容性と根治性の両立を目指し術中病理診断に注力

乳がん治療は、一度の手術で終わりというわけではありません。多くの患者さんが術後の薬物療法や定期的な検査など、長期にわたるケアが必要になります。特にお仕事をされている方や子育て中の方にとっては、通院しやすく、住み慣れた地域で治療できることは大きなメリットだと考えています。当院は、がん専門の病院にも劣らない体制を整えられるよう常に努力し、医師、スタッフ一同、患者さんに真摯に向き合っています。“治療が大変な患者さんも断らない”ことをモットーに予約のない患者さんも受け入れていますので、ぜひ頼りにしていただければと思います。

解説医師プロフィール

肺がんの治療

多数の診療科が連携して肺がん治療にあたる

当院では、呼吸器内科、呼吸器外科、腫瘍内科、放射線治療科などが連携して肺がん診療にあたっており、週に一度カンファレンスを行っています。場合によっては整形外科医や病理医なども参加し、それぞれの専門性を生かして患者さんごとに適切な治療計画を立案しています。総合病院である当院の肺がん治療の強みは、多くの診療科がそろっているたるめ、患者さんがもともと患っている病気や肺がん治療の副作用に対しても適切に対処できることです。高齢患者さんに多い心臓の併存症は循環器内科、皮疹ひしんやホルモン分泌異常など薬物療法の副作用は皮膚科や代謝内科といったように、呼吸器以外の併存症や症状に対しても専門の診療科と連携して対処できる体制が整っています。

肺がんの治療

1つの小さな傷で行う鏡視下手術を積極的に実施

手術では積極的に鏡視下手術を行っています。鏡視下手術は皮膚を小さく切開し、胸腔鏡と呼ばれる棒状のカメラを挿入して病変部をモニターに映しながら手術をする方法です。その場にいる医師や看護師が、同じ画面を見て情報を共有しながら手術ができるため、高い安全性が期待できることが鏡視下手術の大きなメリットだと考えています。また、通常の鏡視下手術では3~4か所切開しますが、当院では1か所の切開で行う“単孔式手術”を行っています。傷が少ない分、術後の痛みの軽減につながります。

肺がんの治療

院内で遺伝子パネル検査ができる環境を備える

当院は2023年にがんゲノム医療連携病院に指定され、肺がんの遺伝子パネル検査を院内で行えるようになりました。遺伝子パネル検査は、がん細胞の遺伝子変異を調べてどのような薬が効きやすいのか判別する検査です。特に進行がんや術後の再発など、治療を早急に開始する必要がある場合は迅速に検査を行い、2日ほどで結果を出せることもあります。緊急度に応じた柔軟な遺伝子パネル検査の実施も、がんゲノム連携病院としての当院の役割の1つです。

がん専門病院にも劣らない診断・治療を提供

手術、薬物療法、放射線療法などのさまざまな治療法に対応でき、他地域にあるがん医療を専門に行う病院にも劣らない治療を提供できると自負しております。抗がん薬治療を専門に行う腫瘍内科医が在籍しているため、免疫チェックポイント阻害薬などの新しいタイプの抗がん薬にも対応可能です。

肺がんの治療

早期発見・早期治療のためにも、持続する咳や痰などの症状がある場合にはお近くのクリニックなどで構いませんので早めに受診するようにしてください。もしそこで肺がんの疑いを指摘された場合は、すぐに当院にご来院ください。クリニックをとおして、または患者さんご本人でも予約を取っていただけます。もし予約がなくても、紹介状を持って来院いただければ呼吸器を専門とする医師が診察いたしますので、遠慮なく受診ください。

解説医師プロフィール

大腸がんの治療

外科と内科が協力して治療計画を立て、集学的治療を行う

大腸がんは男女共に2番目に多く、男女合計ではもっとも罹患数が多いがんです(2019年時点)。
当院では複数の診療科が連携して大腸がんの集学的治療を行っています。週に一度外科と内科でカンファレンスを行い、患者さんごとに治療計画を立案し、切除が可能かどうか、手術前後に化学療法や放射線療法を行うかなどを検討します。当院では外科と内科がそれぞれの意見を出し合いながら、より適切な治療ができるように努めています。

幅広い大腸がん治療に対応、負担の少ない腹腔鏡・ロボット手術に力

大腸がんがごく早期で粘膜にとどまっている場合、お腹を切らずに肛門こうもんから電気メスの付いた内視鏡を挿入して大腸がんを切除する内視鏡治療を行います。大腸の表面だけを取り除くため、大腸が短くならずに済むことが大きなメリットです。内視鏡治療が可能かどうかを見極めるためには検査が非常に重要です。

大腸がんの治療

がんが粘膜より深い場合、切除可能であれば手術を行います。当院では患者さんの負担が少ない腹腔鏡ふくくうきょう手術を積極的に行っています。腹腔鏡手術は、お腹を数か所小さく切開し、腹腔鏡というカメラを挿入して病変を観察しながら行う手術です。開腹手術と比べて患者さんへの負担が少ないうえ、大腸が空気に触れにくいため術後の消化管の機能回復も早くなります。また、直腸がんでは、腹部に開けた穴からロボットアームを入れて操作する“ロボット手術”を2023年8月から実施しており、結腸癌に対しても2025年5月から導入しています。腹腔鏡手術と同様に傷が小さく済むほか、繊細な操作がしやすいことが特徴です。

大腸がんの治療

薬物療法では、がん細胞の遺伝子変異の有無や大腸がんの生じている場所などによって使用する抗がん剤を決定しており、免疫チェックポイント阻害薬を使用する場合もあります。当院はがんゲノム医療連携病院に指定されており、がんの組織を解析して複数の遺伝子を調べる“遺伝子パネル検査”を院内で行っています。必要に応じて遺伝子パネル検査を行い、標準治療以外の選択肢を探ることも可能です。

大腸がん検診を毎年受診し、便潜血陽性の場合は精密検査を受けて

大腸がんの治療

大腸がんの早期発見のため、大腸がん検診を毎年受けましょう。大腸がんの多くは良性のポリープが次第に大きくなってがん化したものです。そのため、良性のポリープのうちに発見して内視鏡で切除してしまえば、大腸がんを未然に防ぐことも可能です。
大腸がん検診で便潜血陽性となった場合、必ず精密検査(大腸内視鏡検査)を受けていただきたいと思います。大腸内視鏡検査というと抵抗感を強く感じる方が多く、なかなか検査に踏み出せない方も多いかと思います。当院では精密検査を行う前に患者さんに丁寧に説明し、ご納得いただいたうえで検査を受けていただくことを心がけています。不安なことがあれば何でもお気軽にご相談ください。

解説医師プロフィール
  • 公開日:2024年4月25日
  • 最終更新日:2025年6月26日
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