院長インタビュー

船橋市の医療を牽引し続ける船橋市立医療センター

船橋市の医療を牽引し続ける船橋市立医療センター
茂木 健司 先生

船橋市立医療センター 院長

茂木 健司 先生

目次
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船橋市の人口は2020年に64万人を突破しました。街の成長に伴い医療に対するニーズも、より質が高く密度の濃いものへと変化しています。

船橋市立医療センターでは、大学病院と同等と認められた急性期診療機能を十分に発揮すべく、院長の茂木(もぎ) 健司(けんじ)先生総指揮のもと、さまざまな改革に取り組んでいます。本記事では船橋市立医療センターの概要や強み、将来像についてお話を伺いました。

外観
船橋市立医療センターよりご提供

船橋市立医療センターは、船橋市と医師会をはじめとする関連機関による綿密な協議と連携により、1983年10 月に開院しました。船橋市にお住まいのみなさんから寄せられる期待と信頼に対して、当院の理念である【相互信頼の医療】「私たちは、患者さんに信頼される医療を目指します」にもとづき、急性期医療、がん治療やその他の高度医療を提供することにより、地域のニーズに応え続けています。

2024年4月現在、当院は449病床、31診療科[注1]を有するまでに成長しました。開院当初から、当院の医師と患者さんのかかりつけ医が協同して診療(入院治療)するオープンベッドシステム(開放型病床)を導入しています。

当院では現在、患者支援センターを開設して、かかりつけ医の紹介状を預かっている患者さんからの電話予約、またはWEB予約を受けられるようにしました。地域の開業医の先生との連携をより強めることで、患者さんそれぞれに適した医療を提供しています。入院時また退院時の患者支援を行い、地域での生活にスムーズに戻っていただけるような仕組みづくりを行っています。

[注1] 記事中でご紹介する従業員の人数や配置状況は、現在の実態とは異なる可能性があります。ご了承ください。

2017年に「自治体立優良病院」の1つとして総務省大臣から表彰されました。自治体立優良病院とは、健全な経営や地域医療への貢献など一定の水準を満たす自治体病院のうち、特に「経営の健全性」「経営努力の状況」「地域医療に果たしている役割」について総務省から高い評価を得ている医療機関のことです。

自治体病院の経営状況は厳しく、2019年の調査では全国の公立病院の約2/3が赤字経営です。当院が健全な経営を維持できているのは、当院を信頼して受診してくださる患者さん、日々の診療や病院運営に携わる職員の努力のおかげです。

厚生労働省は、急性期医療病院(DPC病院)の診療実績を4つの判断基準[注2によって、大学病院本院群、DPC特定病院群、DPC標準病院群の3群に分類しています。当院は2018年度から、大学病院と同等の機能を有するDPC特定病院群(旧Ⅱ群)に指定されています。

[注2]4つの判断基準:診療密度、医師研修の実施、高度な医療技術の実施、重症患者に対する診療の実施

1984年に救急病院の指定を受け、1994年5月に救命救急センターを発足しました。以来、船橋市、鎌ケ谷市、習志野市、八千代市の4市約110万人の三次救命救急医療を支えています。2023年度では4,434台の救急車を受け入れました。

当院では北米型ERシステムを導入しており、自分で直接来院される患者さん、他院からの救急診療依頼そして三次救命医療まで、可能な限り受け入れて診療しています。

救急車
船橋市立医療センターよりご提供

当院では全国に先駆けて、船橋市消防局・船橋市医師会と連携して船橋市救急車医師同乗システム(ドクターカー事業)を運用しています。これは救命救急センター開設とほぼ同時期の1993 年に導入した制度で、病院敷地内に併設された船橋市消防局の救急ステーションが、救急指令室からの要請を受け次第、特別な訓練を受けた医師が同乗して直ちに現場に向かいます。2021年度の出動件数は1,674件にのぼりました。

ドクターカーによる迅速な処置が功を奏し、船橋市における心肺停止者救命率と搬送後の社会復帰率は全国平均を上回る良好な成績を維持しています。ドクターカーが治療成績に与える影響について、学会等でも積極的に発表してきました。

IMRT
船橋市立医療センターよりご提供

当院は2007年に地域がん診療連携拠点病院に指定され、地域のがん治療の拠点として質の高い医療を提供しています。

がん治療では新しい設備を積極的に導入し、患者さんの状態や病期(ステージ)に応じてがん治療の3本柱(手術、放射線治療、化学療法)を組み合わせる集学的治療法を行っています。例えば、手術では、ダ・ヴィンチ(腹腔鏡手術を支援する内視鏡下手術支援ロボット)を導入し、前立腺がん腎臓がん直腸がん、婦人科疾患の手術を行っています。放射線治療では複雑な形の腫瘍にも放射線の集中照射が可能な強度変調放射線治療機(IMRT)を導入し、従来よりも、放射線を当てるべき場所に正確に当て、正常組織へはなるべく当てない治療ができるようになっています。また当院は千葉県下でも数少ないがんゲノム医療連携病院に2023年2月に指定されており、院内にある検査室でがん細胞の遺伝子を手早く調べ、効果が期待できる薬剤が見つかった方には外来による化学療法での治療が可能です。

このような集学的治療を船橋市内で受けられるのは2024年現在で当院だけで、東京へ行かずとも同等のがん治療を受けていただくことが可能です。しかし、がんの治療で需要なのは“早期発見と早期治療”です。船橋市のがん検診の受診率は、肺がんで12.2%、大腸がんで11.5%(いずれも2019年のデータ)と、全国平均(例えば2022年の肺がん検診受診率は49.7%)に比べて非常に低くなっています。ぜひ検診を積極的に受診し、なにかあれば検診機関やかかりつけ医から当院を紹介していただくようお願いします。

当院は、現在でも死亡率が増え続けている肺がんと大腸がんの治療に力を入れています。

当院は呼吸器内科に8名、呼吸器外科に3名の医師を擁し、早期に発見されたがんは積極的に腹腔鏡下手術を行い、切開部をなるべく小さくして低侵襲(体に負担が少ない)な手術を実施しています。
また手術が難しい症例でも、呼吸器内科・腫瘍内科・放射線治療科が協力し、高精度の放射線治療や近年急速に進歩しつつある抗がん剤による化学療法など、集学的治療によって患者さんに合わせた治療を受けていただけます。なお、化学療法は入院ではなく外来による治療が可能なほか、遺伝子パネル検査の結果効果が期待できる薬剤が見つかったら当院で治療を受けていただくがんゲノム医療も提供しています。

大腸がんについては、消化器内科に11名、消化器外科に13名の医師がおり、肺がんと同様に腫瘍内科・放射線治療科との協力のもと、低侵襲な手術、ゲノム医療を含む化学療法、高精度な機器による放射線治療などの集学的な治療を行っています。とくに手術については、大腸ポリープや早期の大腸がん(結腸がん、直腸がん)に対しては術者に高いスキルが求められる粘膜下剥離術(ESD)などの低侵襲な治療を行っているほか、直腸がんではロボット支援下手術も行っています。

乳がん罹患率上昇を受け、乳がん治療にも力を入れています。当院の乳腺外科は乳腺専門医(日本乳癌学会認定)5名のほか、乳がん看護認定看護師(日本看護協会認定)2名、常勤の形成外科医師2名、常勤の放射線治療医師3名という千葉県内で見ても非常に充実した体制となっており、乳がんの症例数は298件(2022年度)と非常に多くなっています。

最近の主流となっている乳房温存療法では、当院では手術時にがん細胞を取り残さないよう病理医が迅速診断でチェックする体制、手術後に再発予防を目的とした放射線治療を実施する体制が万全です。

また、日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会による「乳房再建エキスパンダー実施施設」及び「乳房再建用インプラント実施施設」の認定を受けており、乳房を全摘出された方に対しても健康なときの乳房に近いかたちを再建できるよう、乳腺外科と形成外科が連携して取り組んでいます。

手術風景
船橋市立医療センターよりご提供

2009年に開設した心臓血管センターでは、循環器内科や心臓血管外科をはじめとする関連部門のスタッフがハートチームを結成して、密に連携して診療を行なっています。冠動脈インターベンション(PCI)、アブレーション、ステント留置術、ECMO(対外式膜型人工肺)、インペラ(補助循環ポンプカテーテル)などが実施可能な専門の医師と設備が揃っており、多くの患者さんが集まっています。

また、心臓リハビリテーションも併設しているため、診療から社会復帰までシームレスな対応が可能なことも当院の特長です。

脳卒中には脳梗塞脳出血があり、いずれも発症してからいかに早く治療を開始できるかが、回復と社会復帰の鍵を握っています。当院は日本脳卒中学会から一次脳卒中センター(PSC)コア施設の認定を受けており、緊急度の高い脳卒中に対し24時間365日体制で最善の治療を実施しています。2022年度では360件の手術を実施しました。

当院は2028年(予定)に新病院に移転します。移転先は現在地から南へ1km弱の海老川上流地区にできる“メディカルタウン”内で、病床数はICU12床、SCU15床、緩和ケア病床20床を含む500床、32の診療科を備えたこの地域の中核的な病院となります。現在当院が持っているがん診療や救急、その他の医療の強みをさらに広げる設計としつつ、患者さんとご家族の過ごしやすさや職員の働きやすさにも配慮した新病院で、当院は地域から求められる医療をより充実させていきます。
また、当院は現在も千葉県より地域災害拠点病院の指定を受けていますが、移転後はより地震や水害に強い設計となり、いざというときにこれまで以上に頼りになる病院となります。ご期待ください。

完成予想図
船橋市立医療センターよりご提供

当院は1997年より臨床研修病院に指定され、病院全体で研修医を育てる体制作りを推進しており、NPO法人卒後臨床研修評価機構(JCEP)による認定を取得して更新(2017年)を続けています。プライマリ・ケアのスキルと医療者としてふさわしいマインドを兼ね備えた医師の育成を目指す当院のスタンスが評価されて、全国から多くの研修医が集まっています。

船橋市立医療センターは多くの方々にご利用いただいていますが、開院から40年を経過し建物の老朽化や狭隘化も目立つようになってきました。そういう中でも高度な医療、最新の医療、よりよい患者サービスが提供できるよう、日々努力し、さまざまな改革に取り組んでいます。そして船橋市が進めるメディカルタウン構想の中核として、2028年には新病院の開設計画が進んでいます。

また当院は地域医療支援病院として、皆さんが普段かかられている地域のかかりつけの先生方と連携し、皆さんになにかあれば素早く当院に紹介いただける体制を作っています。かかりつけの先生からの紹介により当院で治療を受けたあとは、引き続きかかりつけの先生と当院の医師による“ふたり主治医制”でみなさまを見させていただくので、ご安心いただければと思います。

船橋市には、東京で働き仕事が終わると千葉県の自宅に帰ってくる、いわゆる「千葉都民」と呼ばれる方も大勢いらっしゃいます。一人でも多くの方に当院やこの地域の診療内容や取り組みを知っていただき、「地元で良い医療を受ける」という選択肢を持っていただければ幸いです。

当院の理念でもある【相互信頼の医療】は、当院を選んでくださった患者さんの権利を尊重して十分な説明と安全な医療を提供できたうえではじめて成立します。そして地域医療構想の実現に向けて、地域で医療を完結させるためには、近隣病院や開業医の先生方からの信頼も欠かせません。

相互信頼の医療、患者さんから信頼される医療を実現すべく自己研鑽に努めると共に、より良質なチーム医療を提供できるよう、職員それぞれが患者さんのために何ができるかを考えていきましょう。

実績のある医師をチェック

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