肺がん検診とは、健康な人を対象に肺がんの有無を確認する定期検査のことです。

肺がんは数あるがんの中でも死亡率が高く、進行するほどに治療成績(予後)が悪くなります。しかし、多くの場合、早期には自覚症状が現れません。症状がないうちから早期肺がんを発見するためにも、定期的な肺がん検診を受けることは重要です。

肺がん検診は男女共に40歳以上の健康な人を対象とし、1年に1度の間隔で受けることが推奨されています。

肺がんを発症すると、息切れ、長引く咳、声枯れ、胸痛、血痰(血が混ざった痰)などの症状が出ることがありますが、このような症状がある場合には検診を待たずに、すぐに医療機関を受診する必要があります。

  • 喫煙者、もしくは喫煙経験者
  • 咳や痰がよくでる人
  • 家族が肺がんにことがある人
  • 息苦しいことがよくある人
  • 職業上、アスベスト、放射線、コールタール、ディーゼル排ガスなどに暴露されている人

肺がん検診における主な検査には、問診、胸部X線(レントゲン)検査、喀痰細胞診、低線量CT検診があります。

一般的には、まず問診で肺がんのリスク評価を行い、次いで肺がんのリスクが高い人(ハイリスク群)は胸部X線検査と喀痰細胞診を、ハイリスク群でない人は胸部X線検査を行います。

ハイリスク群は、原則として50歳以上で喫煙指数(1日の喫煙本数×喫煙年数)が600以上の人を指します。たとえば、1日に30本のたばこを20年間続けている場合は30×20=600となり、ハイリスク群に該当します。

また肺がんの早期発見をめざし、一部の医療機関では低線量CT検査が行われることもあります。この検査は各自治体(市区町村)で行われる一般的な肺がん検診とは異なり、検査費用が全額自己負担となります。

胸部X線検査

胸部X線検査は、X線を胸部全体に照射して肺などの胸部の臓器の異常を調べる検査です。肺全体を映すために息を大きく吸い込み、呼吸を止めた状態で撮影します。

胸部X線検査では、肺にがんや炎症などの異常があると白い影が見られます。また、肺がんだけでなく、肺炎や肺結核、胸水、気胸など、さまざまな肺の病気を発見することができます。

喀痰細胞診

喀痰細胞診はハイリスク群の人に推奨される検査です。肺がんがあると、がん細胞が痰の中に混じることがあるため、痰を採取してがん細胞が含まれるかを調べます。

なお、肺がんにかかっている場合でも、痰の中にがん細胞が発見されないこともあります。

検査前の3日間、起床時の早朝に自分で痰を採取し、専用の容器に入れて提出します。

低線量CT検診

低線量CT検診は、肺がんの早期発見を目的とした検査です。従来の胸部X線検査や喀痰細胞診だけでは発見が難しい小さな病変を検出することができ、肺がん発見率は胸部X線検査の10倍ほどといわれています。また、後述の精密検査に用いられる胸部CT検査と比べ、放射線の照射線量が抑えられていることも特徴です。

検査方法としては、寝台の上に仰向けに横たわり、息を吸った状態で呼吸を止めて撮影を行います。肺がんはもちろん、そのほかの呼吸器疾患が見つかることもあります。

胸部X線検査ではX線を使用しますが、X線の被ばく量は極めて少なく、体への悪影響はほとんどありません。しかし、妊娠中あるいは妊娠の可能性がある人は胎児に影響が出る恐れがあることから、検査を受けられない場合があります。

喀痰細胞診については痰を採取するだけのため、特別注意すべきことはありません。

胸部X線検査では、肌着あるいはシャツ1枚になって撮影を行います。

金属などがあるとそれが映って検査の妨げになってしまうため、肌着やシャツ、下着は無地で金属(ファスナー、ビーズ、ラメなど)やボタンがないものを着用しましょう。また、ネックレスなどの服飾品は着けないでおきましょう。

なお、胸部X線検査、喀痰細胞診を行うにあたって食事や内服薬の制限はありません。

胸部X線検査の場合、数分~10分程度で終わると考えられます。喀痰細胞診は自宅で痰を採取して当日提出するだけで、時間はかかりません。また、いずれの検査も痛みを伴うことはありません。

肺がん検診の費用については、お住まいの市区町村による住民健診、職場で行う検診などによって異なります。市区町村が実施している肺がん検診を受ける場合には、事前にホームページなどで確認しておくとよいでしょう。

一般的な医療機関において自費で検査を受ける場合の費用は、胸部X線検査が2,500円〜3,500円程度、喀痰細胞診が1,500〜3,000円程度と想定されます。なお、低線量CT検診を受ける場合は、15,000〜30,000円程度が目安となります。

肺がん検診の結果は、後日文書で通知されるのが一般的です。結果の表記は医療機関によって異なります。

なお、国の政策として行われる肺がん検診では、A~Eまでの5つの“判断区”が示されます。Aが“読影不能”、Bが“異常所見を認めない”、Cが“異常所見を認めるが精査不要”、Dが“異常所見を認め、肺がん以外の疾患で治療が必要”、Eが“肺がん疑い”とされます。

そのうち、Aの場合は検査をやり直す必要があり、DとEの場合には精密検査が必要となります。

検査で異常が見つかった場合、精密検査として胸部CT検査や気管支鏡検査が行われます。

胸部CT検査は、X線を用いて体の断面図を撮影する検査です。胸部X線検査もX線を利用した検査ですが、胸部CT検査では低線量CT検査と同様、肺内部をより鮮明に見ることができます。

気管支鏡検査は、口または鼻から気管支鏡(先端に小型カメラが付いた細長い管)を挿入し、肺や気管支の状態を体内から観察する検査です。必要に応じて病変が疑われた部位の組織や細胞を採取し、悪性かを調べます。

肺がん検診は、男女共に40歳以上の人が1年に1度の間隔で受けることが推奨されています。1度の肺がん検診、精密検査で肺がんでないことが分かった場合でも、毎年検診を受けるようにしましょう。

また、肺がんの最大のリスク因子は喫煙です。たばこを吸う年数が長く、本数が多いほど肺がんのリスクが高くなるため、減煙あるいは禁煙に取り組むことも大切です。

本記事で採用している検査名称はより一般的な表現を採用しておりますが、医療機関や検査機関によって異なる場合があります。また名称が異なる場合、検査内容も一部異なっている場合があります。

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