大腸がん
放射線治療の結果、手術可能になった60歳代男性
がん研有明病院 消化器センター・大腸外科部長の福長 洋介先生に、大腸がんの症例について伺いました。
放射線治療の結果、手術可能になった60歳代男性
こちらの患者さんは直腸がんで、腫瘍が大きく膀胱への浸潤(がんが周りの器官に広がっていくこと)がひどい状態でした。貧血や低タンパクなど体力も大きく落ちており、このような全身状態では手術治療はもちろん、抗がん剤治療を行うことすら困難です。以前受診していた医療機関では緩和ケアで様子を見ることをすすめられたとのことでした。
当院でも、この状態で手術を行うことは難しいと考えられましたが、まずはがんによる貧血や低タンパクを改善するため、入院で放射線治療を行うことにしました。
放射線治療で全身状態が改善し、手術が可能に
放射線治療を行ったところ、腫瘍が縮小したことにより貧血や低タンパクが改善し、全身状態がよくなってきました。そこで当院では、放射線治療から1か月経過し体力が回復した後、手術を行うことになりました。
前述のとおり、膀胱への浸潤がひどい状態だったので直腸・膀胱・前立腺を全て摘出する“骨盤内臓全摘術”を行い、排泄のための人工肛門・人工膀胱の2つのストーマを造設しました。現在手術から5年ほど経過しましたが、再発なく元気に生活していらっしゃいます。
放射線治療後の手術は組織が脆く手術の難易度が上がりやすいという特徴があります。しかし当院では、さまざまな技術やチームワークを生かして、このような難しい手術にも挑戦しています。
関連の症例
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40歳代でステージIVaと診断された直腸がん患者さん
こちらの患者さんは40歳代の男性で、腹痛・下痢・下血などの症状が悪化してきたことをきっかけに受診されて直腸がんが見つかりました。比較的若い患者さんでしたが、発見時には単発ではあるものの肝臓に転移が見つかっており、ステージIVaと診断されました。 直腸がんと肝転移を同時に切除 こちらの患者さんの場合、肝転移が1か所で、しかも肝臓の表面にあり手術で取りやすい位置と判断されました。そのため、直腸がんをロボット支援下手術で切除すると同時に肝転移も腹腔鏡下手術(ふくくうきょうかしゅじゅつ)で切除するという選択を取りました。 手術自体は合計9時間を超える大手術となりましたが、カメラを入れる穴として直腸切除時と肝臓切除時で同様の穴を使用できたことから術後の傷は小さく、合併症もありませんでした。手術でがんをしっかり取りきることができたため、現在は仕事に復帰することもできています。
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救急車で運ばれてきた60歳代男性
こちらの患者さんは血尿や尿に便が交じる糞尿の症状があり、救急車で運ばれてきたことをきっかけに当院を受診されました。検査をしてみると進行した直腸がんで、がんが膀胱に浸潤しているために糞尿(尿から大便が混じる)が生じていることが分かりました。 化学療法によってがんが小さくなり手術が可能になった このケースでは、発見された時にはすでにがんがかなり進行していたため、手術でがんを取りきることは難しいと考えられました。ただ、糞尿の症状を抑える必要があったため、まずは一時的に人工肛門を造設する手術を行い、便が膀胱に流れ込むことを防ぐ治療を行いました。 次に術後3か月化学療法を行ったところがんが小さくなり、幸いにも手術でがんが取れるほどの大きさになりました。そこで再度手術を行い、膀胱と肛門を残したままがんを取りきることができました。手術後5年以上経ちますが、再発なく元気に過ごされています。
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