大腸がん

多数の肝転移があった結腸がん、手術で根治を目指した30歳代男性

最終更新日
2021年08月25日

がん研有明病院 消化器センター・大腸外科部長の福長 洋介(ふくなが ようすけ)先生に、大腸がんの症例について伺いました。

多数の肝転移があった結腸がん、手術で根治を目指した30歳代男性

こちらの患者さんは発見時すでに肝臓に転移があるステージIVの結腸がんでした。肝転移の個数が30~40個と非常に多かったことから、以前受診していた医療機関では手術ができないと言われ、当院を受診されたそうです。

確かに肝転移の数が多い場合、肝臓を切除しすぎてしまうと肝機能が低下し命に関わることがあるほか、仮に手術がうまく行っても再発リスクが高いなど手術をためらう理由はあります。しかし、抗がん剤による薬物治療を行うことでがんが小さくなり、肝転移の数も少なくなってきたため、当院では手術治療を行うことにしました。

残す肝臓を肥大化して肝機能を維持

抗がん剤によって多少肝転移は少なくなったものの、肝臓の切除範囲が広く命に関わることが懸念されました。そこで当院では、肝機能を維持するために残す肝臓を肥大化させる治療を併せて行いました。

こちらの患者さんの場合、肝臓の右側に多くの腫瘍(しゅよう)があり、左側は腫瘍が少ない状態だったので、1回目の手術では左側の腫瘍を取り除いたうえで右側の肝臓へ行く血管を塞栓(そくせん)して右側の肝臓を小さくし、左側の肝臓を大きくする処置を実行。左側の肝臓がある程度大きくなったところで2回目の手術を行い、腫瘍が多くあった右側の肝臓を取り除きました。その後5年以上経過しましたが再発はありません。

このように、大腸がんでは他臓器への転移があっても根治が期待できる場合があります。

がん研究会有明病院

〒135-8550 東京都江東区有明3丁目8-31 GoogleMapで見る

前の症例

がん研有明病院 消化器センター・大腸外科部長の福長 洋介(ふくなが ようすけ)先生に、大腸がんの症例について伺いました。 放射線治療の結果、手術可能になった60歳代男性 こちらの患者さんは直腸がんで、腫瘍が大きく膀胱への浸潤(しんじゅん)(がんが周りの器官に広がっていくこと)がひどい状態でした。貧血や低タンパクなど体力も大きく落ちており、このような全身状態では手術治療はもちろん、抗がん剤治療を行うことすら困難です。以前受診していた医療機関では緩和ケアで様子を見ることをすすめられたとのことでした。 当院でも、この状態で手術を行うことは難しいと考えられましたが、まずはがんによる貧血や低タンパクを改善するため、入院で放射線治療を行うことにしました。 放射線治療で全身状態が改善し、手術が可能に 放射線治療を行ったところ、腫瘍が縮小したことにより貧血や低タンパクが改善し、全身状態がよくなってきました。そこで当院では、放射線治療から1か月経過し体力が回復した後、手術を行うことになりました。 前述のとおり、膀胱への浸潤がひどい状態だったので直腸・膀胱・前立腺を全て摘出する“骨盤内臓全摘術”を行い、排泄のための人工肛門(じんこうこうもん)・人工膀胱の2つのストーマを造設しました。現在手術から5年ほど経過しましたが、再発なく元気に生活していらっしゃいます。 放射線治療後の手術は組織が脆(もろ)く手術の難易度が上がりやすいという特徴があります。しかし当院では、さまざまな技術やチームワークを生かして、このような難しい手術にも挑戦しています。

次の症例

がん研有明病院で肝・胆・膵外科部長を務める高橋祐(たかはしゆう)先生に、胆管がんの症例について伺いました。 患者さんの年齢はさまざま、ときに80歳代でも手術を行うことも 当院にいらっしゃる肝門部胆管がんの患者さんの平均年齢は70歳前後ですが、若い方では40歳代の患者さん、お年を召した方では80歳代の患者さんもいらっしゃいます。手術を検討する場合、年齢で判断をするのではなく、がんの状態や体力、患者さんの希望や意志を総合して検討します。そのため、体が元気で本人が治療に対し意欲があれば、80歳代の患者さんでも手術を行うことがあります。 肝門部胆管がん患者さんの多くは、がんによって胆管が詰まることで生じる“黄疸(おうだん)”をきっかけに発見されます。そのほか、別の病気で病院を受診中に血液検査で異常が生じて、肝門部胆管がんが見つかるケースもあります。 手術治療が唯一の根治治療 肝門部胆管がんが発見された場合、可能な限り唯一の根治治療である手術治療を検討します。 肝門部胆管がんの手術治療は体に負担がかかる大手術となることが多く、術後の回復には時間がかかります。しかし、綿密な手術計画と術前管理、過不足ない手術、徹底した術後管理により、手術前と同じ生活に戻ることは十分可能です。また胆管がんは膵臓(すいぞう)がんと同様に難治がんの1つですが、リンパ節転移のない方の5年生存率は50~60%程度あり、十分根治も見込めます。当院では内科・外科・画像診断科などの各専門科がそれぞれの技術を持ち寄り、協力して治療を行っています。


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