肝臓がん
薬物療法を行って手術可能になった80代女性の肝臓がん
肝臓がんの症例について、国立国際医療研究センター病院 理事長の國土 典宏先生にお話を伺いました。
薬物療法を行って手術可能になった80代女性の肝臓がん
こちらの患者さんは発見時すでに肺転移のある肝臓がんで、手術は難しいと判断されたため、分子標的薬などの薬物療法を行うことになりました。1年間薬物療法を行ったところ、肺転移の影が消えたほか、肝臓のがんも血流がなくなり小さくなったため、当院で手術治療を行うことになりました。
薬物療法によって手術可能になるケースもある
手術の結果、肝臓のがんをしっかり取り切ることができました。近年は肝臓がん治療における薬物療法の進歩が著しく、薬物療法を行うことでがんが小さくなり、手術が可能となる事例も増えてきています。このまま薬物療法の進歩が進めば、より多くの肝臓がん患者さんに対して手術治療を行い、根治が目指せるようになるのではないかと期待しています。
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化学療法を繰り返し行ったステージIVの転移性肝臓がん
東京都立多摩総合医療センターで外科部長を務める森田 泰弘(もりた やすひろ)先生に、肝臓がんの症例について伺いました。 化学療法を繰り返し行ったステージIVの転移性肝臓がん こちらの患者さんは直腸がん発見、すでに肝臓にも多発の転移があり、ステージIVと診断されました。また、40歳代の頃に憩室穿孔(けいしつせんこう)で腸の手術を行ったこともある方でした。ただし、直腸がんの診断時は肝臓以外への転移はなかったため、当院では根治治療を目指して手術を行うことになりました。 計7回の手術の後5年間再発なし 最初の手術では直腸の切除と肝臓の部分切除を行い、術後は化学療法をしながらより多くの肝臓を切除できるように、残せる肝臓の肥大化を行いました。ある程度肝臓が肥大化したところで、2度目の手術として右側の肝臓を切除しました。 その後肺や肝臓、肝門リンパ節に複数回転移が見つかりましたが、その都度部分切除と適宜化学療法を繰り返すことによって、がんを取り除いてきました。最初の手術から10年以上、最後の手術から5年近くが経過しましたが、今のところ再発はなく、お元気にしていらっしゃいます。
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サイズの大きい肝細胞がんを切除した高齢の男性
国立がん研究センター中央病院で肝胆膵外科の科長を務める江崎 稔(えさき みのる)先生に、肝臓がんの症例について伺いました。 サイズの大きい肝細胞がんを切除した高齢の男性 肝細胞がんで、当時80歳代の男性。肝臓内にがんが3つあり、一番大きいものは10cmでした。診断を受けた病院では切除ができるかどうか判断しきれず、診察をした医師から手術ができるか相談がありました。 肝臓はほかの臓器と違い、切除しても再生する能力があります。肝機能が十分に保たれていれば、肝臓の体積の60%程度までなら切除することができます。 この患者さんの場合、肝臓全体の70%程度の切除が必要な状態だったので、そのままでは切除はできませんでした。そのため手術の前に門脈塞栓術(もんみゃくそくせんじゅつ)*を行い、切除する体積を60%ほどに減らしました。この患者さんはご高齢でしたが体調が良好で、全身麻酔下の肝切除に耐えうると判断しました。 *門脈塞栓術:肝臓のうち、切除する予定の部分につながる門脈(胃や腸からの栄養を含んだ血液を肝臓へ送る血管)を塞ぐことで切除部位を委縮させ、逆に残す肝臓を肥大させて安全に切除できるようにする処置。 再びがんを発症しラジオ波焼却療法を行う 手術は無事に終了しました。しばらくは何事もなかったのですが、5年以上経ってから再び肝臓にがんが発見されました。経過から最初のがんとは別に新しく発生したがんだと思われました。 最初のがんが治った後に2つめ、3つめのがんができてしまう方は珍しくありません。この方の場合、2つめのがんに対してはラジオ波焼却療法を行いました。2020年12月現在は90歳を超えて、お元気にされています。
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