肝臓がん

薬物療法を行って手術可能になった80代女性の肝臓がん

最終更新日
2021年06月21日

肝臓がんの症例について、国立国際医療研究センター病院 理事長の國土 典宏こくど のりひろ先生にお話を伺いました。

薬物療法を行って手術可能になった80代女性の肝臓がん

こちらの患者さんは発見時すでに肺転移のある肝臓がんで、手術は難しいと判断されたため、分子標的薬などの薬物療法を行うことになりました。1年間薬物療法を行ったところ、肺転移の影が消えたほか、肝臓のがんも血流がなくなり小さくなったため、当院で手術治療を行うことになりました。

薬物療法によって手術可能になるケースもある

手術の結果、肝臓のがんをしっかり取り切ることができました。近年は肝臓がん治療における薬物療法の進歩が著しく、薬物療法を行うことでがんが小さくなり、手術が可能となる事例も増えてきています。このまま薬物療法の進歩が進めば、より多くの肝臓がん患者さんに対して手術治療を行い、根治が目指せるようになるのではないかと期待しています。

国立国際医療研究センター病院

〒162-8655 東京都新宿区戸山1丁目21-1 GoogleMapで見る


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