肝臓がん
薬物療法を行って手術可能になった80代女性の肝臓がん
肝臓がんの症例について、国立国際医療研究センター病院 理事長の國土 典宏先生にお話を伺いました。
薬物療法を行って手術可能になった80代女性の肝臓がん
こちらの患者さんは発見時すでに肺転移のある肝臓がんで、手術は難しいと判断されたため、分子標的薬などの薬物療法を行うことになりました。1年間薬物療法を行ったところ、肺転移の影が消えたほか、肝臓のがんも血流がなくなり小さくなったため、当院で手術治療を行うことになりました。
薬物療法によって手術可能になるケースもある
手術の結果、肝臓のがんをしっかり取り切ることができました。近年は肝臓がん治療における薬物療法の進歩が著しく、薬物療法を行うことでがんが小さくなり、手術が可能となる事例も増えてきています。このまま薬物療法の進歩が進めば、より多くの肝臓がん患者さんに対して手術治療を行い、根治が目指せるようになるのではないかと期待しています。
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大腸からの転移性肝がんで計5回の手術を行った男性
国立がん研究センター中央病院で肝胆膵外科の科長を務める江崎 稔(えさき みのる)先生に、肝臓がんの症例について伺いました。 大腸からの転移性肝がんで計5回の手術を行った男性 大腸(S状結腸)のがんが肝臓に転移した方で、60歳代の男性でした。 一般的に遠隔転移したがんは手術の適応とならない場合がほとんどです。しかし、大腸からの転移性肝がんは肝臓以外に転移していることが少ないため、手術の適応となる場合が多いのです。 この患者さんの場合は、大腸のがんと転移した肝臓のがんを一度の手術で切除。大腸外科と協力し6時間ほどで取り切ることができました。 4回の再発を手術で乗り超え回復へ その手術から半年後、再び肝臓にがんが見つかりました。目に見えないがんが残っていたために再発したと思われました。抗がん剤治療をしながら様子を見ていたらがんは増えなかったので、再び手術を行いました。 その後も再発を繰り返しましたが、いずれも切除可能で肝臓を切除した回数は計5回となりました。現在、5回目の手術から5年以上経っていますが、再発はありません。がんを取り切れたものと考えています。長い闘病が大変であったことを忘れかけているほど、現在は体調が良好とのことです。
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サイズの大きい肝細胞がんを切除した高齢の男性
国立がん研究センター中央病院で肝胆膵外科の科長を務める江崎 稔(えさき みのる)先生に、肝臓がんの症例について伺いました。 サイズの大きい肝細胞がんを切除した高齢の男性 肝細胞がんで、当時80歳代の男性。肝臓内にがんが3つあり、一番大きいものは10cmでした。診断を受けた病院では切除ができるかどうか判断しきれず、診察をした医師から手術ができるか相談がありました。 肝臓はほかの臓器と違い、切除しても再生する能力があります。肝機能が十分に保たれていれば、肝臓の体積の60%程度までなら切除することができます。 この患者さんの場合、肝臓全体の70%程度の切除が必要な状態だったので、そのままでは切除はできませんでした。そのため手術の前に門脈塞栓術(もんみゃくそくせんじゅつ)*を行い、切除する体積を60%ほどに減らしました。この患者さんはご高齢でしたが体調が良好で、全身麻酔下の肝切除に耐えうると判断しました。 *門脈塞栓術:肝臓のうち、切除する予定の部分につながる門脈(胃や腸からの栄養を含んだ血液を肝臓へ送る血管)を塞ぐことで切除部位を委縮させ、逆に残す肝臓を肥大させて安全に切除できるようにする処置。 再びがんを発症しラジオ波焼却療法を行う 手術は無事に終了しました。しばらくは何事もなかったのですが、5年以上経ってから再び肝臓にがんが発見されました。経過から最初のがんとは別に新しく発生したがんだと思われました。 最初のがんが治った後に2つめ、3つめのがんができてしまう方は珍しくありません。この方の場合、2つめのがんに対してはラジオ波焼却療法を行いました。2020年12月現在は90歳を超えて、お元気にされています。
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