頭頸部がん 上顎洞がん

40歳代女性ステージIVの上顎洞がん

最終更新日
2022年10月07日

患者さんはステージIVの進行した上顎洞がんで、通常であれば上顎を全摘する手術が必要な状態でした。しかし自分の顔が変わってしまうことを恐れ、医師に手術の話をさせてくれないほど手術治療を嫌がっており、とても手術を提案できる様子ではありませんでした。

そこで当院では、がんに栄養を送っている動脈に直接抗がん剤を注入する超選択的動注化学療法と放射線治療の併用療法による治療を提案しました。

超選択的動注化学療法と放射線治療の併用療法によってがんが完全寛解

超選択的動注化学療法と放射線治療の併用療法では、抗がん剤“シスプラチン”とともにチオ硫酸ナトリウムという薬剤を注入します。これによって抗がん剤による副作用を小さくすることができ、従来より高い頻度で抗がん剤治療を行えます。また、放射線治療も併せて行うことでがんの根治性がより高まります。

患者さんは、この治療によってがんを寛解することができ、手術のような機能や整容の変化もなく、現在もお元気に過ごされています。

北海道大学病院

〒060-8648 北海道札幌市北区北十四条西5丁目 GoogleMapで見る

次の症例

こちらの患者さんは膵臓がんと診断される前の検査や、診断後の黄疸(おうだん)の症状を取る処置などによって膵炎(すいえん)を引き起こしてしまい、通常であれば手術ができる状態であったにもかかわらず、手術ができなくなってしまいました。どのような治療を受けるか患者さん自身も悩んでいる様子でしたが、いろいろと調べていくなかで重粒子線治療という治療方法があることを知り、私たちのアドバイスもあって最終的に他施設で重粒子線治療を受けることになりました。 手術をしない患者さんに対してもフォローアップを実施 当院では、患者さんが重粒子線治療を受ける前後のサポートを徹底して行いました。治療前は重粒子線治療の準備として、黄疸を取り除くために胆管に入れていたステント(筒状の器具)を金属からプラスチックへ変更し、術後は当院で抗がん剤による補助療法を受けていただいています。このように外科の医師が手術をしない患者さんを長く診ていると驚かれることもありますが、私たちはどんな状況でも患者さんを最後までしっかり診ることを大切にしています。こちらの患者さんの場合、幸い重粒子線治療によってがんは快方に向かっており、臓器を切除していないこともあってお元気に生活されています。当院では今後も患者さんのフォローアップを行っていく予定です。


関連の症例

  • 小児の悪性腫瘍

    ごく珍しいことではありますが、まれに小児の頭頸部の悪性腫瘍(あくせいしゅよう)の患者さんがいらっしゃることもあります。 この患者さんはほかの医療機関で肉腫が疑われ、当院の陽子線治療の相談にいらっしゃり、当院のキャンサーボードで話し合いをした結果、念のため再検査を行うことになりました。 再検査の結果、横紋筋肉腫と診断 再検査を行ったところ、横紋筋肉腫という悪性腫瘍であることが分かり、抗がん剤治療と陽子線治療を実施することになりました。 このように小児の悪性腫瘍は診断が非常に難しいため、当院のようにキャンサーボードなどのカンファレンスでさまざまな専門家が相談しながら集学的治療を行う体制は非常に大切です。 小児の悪性腫瘍の患者さんがいらしたときは、通常の頭頸部がんのキャンサーボードのメンバーに加え、小児科の医師も参加して意見交換を行っています。

    続きを読む