外科
大腸がん~9割の患者さんに腹腔鏡下手術を行う 確かな技術力~
府中病院は、大阪府和泉市に位置する急性期総合病院です。2009年4月には大阪府によって大阪府がん診療拠点病院に指定され、地域のがん医療の拠点としてさまざまながんの治療に携わっています。今回は副院長と外科センター長を兼任する内間 恭武先生(写真右)と、外科センター 医長の平田 啓一郎先生(写真左)に、府中病院の大腸がんに対する取り組みについてお話を伺いました。
大腸がんの一般的な治療方法についてはこちら
治療・取り組み
当院では大腸がんに対する腹腔鏡下手術に力を入れており、初発大腸がんのおよそ85%に腹腔鏡下手術を行っています。
大腸がんの腹腔鏡下手術
当院では、お腹の中を立体的に観察できる3D内視鏡を使用して手術を行っています。腹腔鏡下手術はお腹を切り開いてがんを取り除く開腹手術よりも術者の視野が狭く、鉗子をうまく操って治療する必要があるため、専門のトレーニングが必要な治療です。
そこで、当院では日本内視鏡外科学会の技術認定医が手術を担当し、治療を行っています。日本内視鏡外科学会技術認定医の資格取得は難しく、合格者は志願者のおよそ2~3割ともいわれています。当院では積極的な資格取得を促し、数多くの合格者を輩出しています。
直腸がんのロボット支援下手術も実施
当院では直腸がんのロボット支援下手術も実施しています。直腸がんに対するロボット支援下手術が2018年に保険収載されて以来、当院でも積極的に実施しています。なお、ロボット支援下手術の術者になるためには、前述の日本内視鏡外科学会技術認定医の資格が必要です。そのことからも、当院では資格取得に向けた指導を盛んに行っています。
メリットと注意点
腹腔鏡下手術のメリットとしては、以下のような点が挙げられます。
- お腹に複数の小さな穴を開けて治療を行うため、傷が小さく患者さんの体への負担が小さい
術後の痛みも軽減されるほか、早く回復することが期待できるため、開腹手術よりも早期に退院できることがあります。
- ロボット支援下手術の場合、より正確な手術を目指せる
ロボット支援下手術は鉗子が多関節なので細かい動きに対応しやすいほか、カメラも自動で操作できるため、術者が見たい位置に動かしやすいなどの利点があります。
一方、手術にあたっての注意点として以下のことを頭に入れておく必要があります。
- ロボット支援下手術は直腸がんのみ適応
大腸がんのうち、ロボット手術が保険収載されているのは直腸がんのみです。
- 肥満の方の場合、お腹に開ける穴の数が増える場合がある
腹腔鏡下手術の適応
当院では手術ができる患者さんへの第一選択として、まず腹腔鏡下手術を検討するため、およそ9割は腹腔鏡下手術が行われます。一般的に、肥満体型の方は腹腔鏡下手術が行いにくいため開腹手術を検討することもありますが、当院では可能な限り腹腔鏡下手術を検討します。
開腹手術が検討される例としては、進行した大腸がんの方や過去に開腹手術を経験している方が挙げられます。
腹腔鏡下手術の入院期間・費用
腹腔鏡下手術を行う場合、個人差がありますが入院期間は10日間程度です。
また、腹腔鏡下手術は保険適用があり、高額療養費制度を利用することで費用負担を少なくすることができます。
腹腔鏡下手術以外の大腸がん治療について
- 開腹手術などそのほかの手術治療
- 内視鏡治療
- 化学療法などの薬物治療
- 放射線治療 など
必要に応じて、これらを組み合わせた治療(集学的治療)が行われることもあります。
診療体制・医師
当院では、大腸がんの診断や早期大腸がんの治療を消化器内科、進行した大腸がんの治療を消化器外科が行っています。消化器内科で進行した大腸がんと診断された方や内視鏡治療の結果手術が必要と判断された方は、消化器外科で治療を行うことになります。
消化器外科では、手術治療・薬物治療・放射線治療を組み合わせて行う集学的治療に力を入れています。手術治療だけでなく、薬物治療や放射線治療の計画も外科医が立てるため、常に幅広い知識が必要となり勉強が欠かせません。そのため当院では大学病院などと連携し、定期的に大腸がん治療の勉強会を行っています。集学的治療が進歩した結果、10年前だったら手術できなかった患者さんが薬物治療や放射線治療によって手術ができるようになってきています。
また、最近保険収載された遺伝子パネル検査などを用いた治療に関しては、近畿大学と連携して治療を行っています。
大腸がんに対する腹腔鏡下手術の実施件数
2020年:116件(うちロボット支援下手術31件)
2019年:123件(うちロボット支援下手術25件)
2018年:120件(うちロボット支援下手術10件)
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受診方法
当院では予約制を取っております。初診時は可能な限り予約をお願いいたします。また、外科センターは午前中に予約のない方の診察も行っております。予約のない方は8:00~11:45の間に受付を行ってください。診療開始は9:00からですが、予約の方が優先となりますので、予約がない方は待ち時間が長くなることをご了承ください。
初診時は健康保険証のほか、お持ちであれば紹介状もご持参ください。
休診日
日曜・祝日・年末年始
紹介状
当院は紹介状がなくても受診が可能です。しかし、紹介状をお持ちでない場合には、以下の選定療養費を別途お支払いいただきます。
選定療養費
初診時選定療養費
初診の際にほかの医療機関からの紹介状をお持ちでない場合、通常の診療費以外に5,500円(税込)を頂戴しております。
再診時選定療養費
以前当院を受診され、ほかの医療機関へ文書による紹介を行った後に引き続き当院を受診する場合、通常の診療費以外に2,750円(税込)を頂戴しております。
診察を担当する医師について
当院では外科と消化器内科の2科を中心に大腸がんの診断・治療にあたっています。外科では、計4人で大腸がんの治療を担当しており、手術治療や薬物治療では担当となる看護師などのスタッフと協力して診療を行います。
特に化学療法では、副作用などが生じていても医師に相談しづらいと感じる患者さんもいます。そのため、看護師・薬剤師がコミュニケーションを取ることで、患者さんの気持ちを伝えやすい環境づくりを配慮しています。
診察・診断の流れ
検診などで大腸がんの疑いがある場合、まずは大腸内視鏡検査によって大腸の内部の様子を調べ、組織を採取し、がんの確定診断を行います。現在は鎮静剤を使用して内視鏡検査を行うことが一般的で、検査中の不快感は少なく、眠っているうちに検査が終わることもあります。内視鏡検査以外には大腸CT検査を行い、大腸ポリープや大腸がんの診断をしています。がんと診断された場合には、CT・MRI検査などの画像検査によってがんの大きさや広がりなどを確認します。
治療方針の決定方法
『大腸癌治療ガイドライン』の最新版を基に治療方針を決定します。ただし、薬物治療に関しては変化が速く、日本のガイドラインでは新しい情報に追いついていない部分もあります。そのため、必要に応じてアメリカやヨーロッパの治療ガイドラインを参考にして治療を検討することがあります。
そのほか、当院では患者さんの意思を尊重することを心がけています。治療方針を決める際には、実際の当院でのデータや、治療方法それぞれのメリット・デメリットを伝え、患者さんに一度考えていただいてから決めるようにしています。
入院が必要になる場合
大腸がん治療の中で、入院が必要になるのは一般的に手術のみです。内視鏡治療や薬物治療、放射線治療は外来で受診いただくことが一般的です。
患者さんのために病院が力を入れていること
当院では、医師の知識・技術の向上や地域の医療機関との連携に力を入れています。
医師の知識・技術の向上
ほかの大学病院などと共に定期的な勉強会を実施しています。勉強会では手術の画像を持ち寄り、技術についてのフィードバックが行われることもあるほか、症例の勉強や新しい治療薬についての勉強なども実施されています。
地域連携
地域の医療機関と連携を取り、紹介してもらった患者さんの経過なども報告するなど、密にコミュニケーションを取っています。
先生からのメッセージ
がんの治療にはいくつか選択肢がある場合もあるので、治療方針を決める際は担当医としっかり話し合い、自分の希望を伝えていくことが大切です。当院では消化器内科・消化器外科の医師を中心に、患者さんとコミュニケーションをしっかり取り、医療従事者間でも協力して治療にあたることを心がけています。
手術が必要な大腸がんの場合、当院では手術治療から薬物治療、放射線治療まで消化器外科医が行うため、必然的に一人ひとりの患者さんと関わる期間が増えます。その中で、どんなことでも相談していただけるような存在になりたいと思っております。病気のことや治療のことで不安点・疑問点が生じたときは、どんなことでもご相談ください。