大腸がん
当初は婦人科系の病気と思われていた若年女性
こちらの患者さんは、人間ドックの便潜血検査で陽性判定が出たことをきっかけに当院を受診されました。最初の大腸内視鏡検査で直腸が狭窄していることが分かりましたが、組織を採取して顕微鏡で見てもがんの確定診断には至らず、30歳代の女性によく見られる子宮内膜症による直腸の狭窄ではないかと考えられていました。
しかし、大腸がんの腫瘍マーカーであるCEAの数値が高かったこと、PET検査を行ったところ気になる所見が見つかったことなどから、実に4回も大腸内視鏡検査が繰り返され、ようやく確定診断に結びつきました。最初の受診から実際にがんが見つかるまでに3か月もかかった特殊な例でした。
人工肛門ではなく肛門を温存した手術へ
このケースでは患者さんが若いためにがんの進行が速く、確定診断が出た頃には進行がんとなっていました。また、がんのある位置も肛門に近く、縫合不全による腹膜炎が生じやすいと考えられたため、当院では患者さんに人工肛門をおすすめしました。
しかし、患者さんの「人工肛門は絶対に嫌」という希望を尊重し、腹腔鏡下手術で肛門を温存した手術を行うことになりました。リスクの高い手術だったので術後しばらく心配していましたが、縫合不全による腹膜炎もなく、術後化学療法によって再発も防ぐことができました。手術の数年後には妊娠・出産もされたと聞き、とても嬉しかったことを覚えています。
関連の症例
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40歳代でステージIVaと診断された直腸がん患者さん
こちらの患者さんは40歳代の男性で、腹痛・下痢・下血などの症状が悪化してきたことをきっかけに受診されて直腸がんが見つかりました。比較的若い患者さんでしたが、発見時には単発ではあるものの肝臓に転移が見つかっており、ステージIVaと診断されました。 直腸がんと肝転移を同時に切除 こちらの患者さんの場合、肝転移が1か所で、しかも肝臓の表面にあり手術で取りやすい位置と判断されました。そのため、直腸がんをロボット支援下手術で切除すると同時に肝転移も腹腔鏡下手術(ふくくうきょうかしゅじゅつ)で切除するという選択を取りました。 手術自体は合計9時間を超える大手術となりましたが、カメラを入れる穴として直腸切除時と肝臓切除時で同様の穴を使用できたことから術後の傷は小さく、合併症もありませんでした。手術でがんをしっかり取りきることができたため、現在は仕事に復帰することもできています。
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働き盛りの方の直腸がん
大腸がんの症例について、社会医療法人中央会 尼崎中央病院 副院長 兼 消化器センター長の松原 長秀(まつばら ながひで)先生にお話を伺いました。 働き盛りの方の直腸がん こちらの患者さんは直腸がんでしたが、まだ働き盛りの年齢だったこともあって肛門温存手術(こうもんおんぞんしゅじゅつ)を希望されていました。若い患者さんでは特に永久人工肛門に抵抗があり、肛門温存手術を希望する方が多いです。おそらく仕事など、社会的な活動をしていくうえでは不便を感じることが多いと考えるからでしょう。 私たちもできる限り社会復帰後の生活に影響がないよう肛門温存手術を行いますが、肛門温存手術をした場合でも術後は排便の頻度が高くなったり、便漏れなどが生じやすくなったりすることはあります。その懸念点も患者さんにはご理解いただいたうえで手術を行いました。 肛門温存手術後、日常生活に戻るために 肛門温存手術を行った方の場合、術後しばらくは排便のトラブルを抱えやすくなるため、さまざまな治療薬を使用しながら排便のコントロールを行います。 最近は便利なスマートフォンのアプリケーションがあるようで、この患者さんもアプリを活用して排便の記録を細かくつけてくださいました。地道にコントロールを続け、現在は治療薬などを服用しながら日常生活を送れるようになってきています。
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