インタビュー

パーキンソン病の検査と診断

パーキンソン病の検査と診断
鈴木 正彦 先生

東京慈恵医科大学 内科学講座脳神経内科 教授、東京大学医科学研究所 非常勤講師

鈴木 正彦 先生

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この記事の最終更新は2015年10月11日です。

パーキンソン病の検査技術は近年大きく進歩しています。東京慈恵会医科大学葛飾医療センター神経内科診療部長の鈴木正彦先生に、最新の検査についてお話をうかがいました。

神経疾患の検査には、血液検査・X線検査・CT(コンピュータ断層撮影)検査・MRI(磁気共鳴画像)検査などがありますが、パーキンソン病はこれらの検査では殆ど異常がみられません。パーキンソン病と似た症状がみられる他の病気には、脳腫瘍、硬膜下血腫、脳梗塞脳出血などがあり、これらの病気を正確に鑑別する目的でCTやMRIなどの画像診断を行います。

脳機能をみるために血流SPECTという検査を行います。SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)は「単光子放射線コンピュータ断層撮影」とも呼ばれるシンチグラフィーの一種です。脳の断面の血流状態がよくわかり、機能低下部位を確認することができます。

PET(Positron Emission Tomography)は陽電子放出断層撮影と呼ばれる検査です。通常ブドウ糖を使いますが、パーキンソン病の診断ではブドウ糖の代わりにCFTやRACという薬剤を使います。CFTはドパミントランスポーターをRACはドパミンD2受容体機能を反映します。パーキンソン病ではCFTの異常が認められますがRAC集積は保持され、これがl-dopaなどの抗パーキンソン病薬が奏効する所以です。

パーキンソン病やレビー小体型認知症では線条体のドパミントランスポーター(DAT)が減少していることが知られています。したがってDATに親和性の高い薬剤を使うことで、ドパミントランスポーターの分布状態を画像化し、神経細胞の変性や脱落の程度を知ることができます。

ヨード123標識MIBG(メタヨードベンジルグアニジン)という物質の集まり方をみることで、さまざまなパーキンソン症候群の鑑別が可能です。パーキンソン病では自律神経障害のため、この薬剤が心臓に集積しにくくなります。

また、レビー小体型認知症でも同様にこの薬剤が心臓に集まらなくなりますが、アルツハイマー病では心臓の交感神経には異常がありません。このことから、レビー小体型認知症やパーキンソン病を、他の類似した症状を持つ疾患とはっきり区別することができます。

従来はパーキンソン病の診断の決め手となるような検査がなかったため、4大症状の有無やその程度を診断基準に照らして判断することが中心でした。パーキンソン病と似た症状を引き起こす他の疾患と区別するためにMRI検査による鑑別診断を行い、異常がなければパーキンソン病薬を服用して効果があるかどうかをみるという流れが一般的だったのです。

しかし、最近では前項で述べたSPECT/PETやドパミントランスポーターシンチグラフィー、MIBG心筋シンチグラフィーなどの検査によって、精度の高い診断が可能になりました。しかも、関連記事「パーキンソン病の症状」でお示しした通り、運動症状が発症する前に起こる特徴的な非運動症状に着目することで、発症前にこれらの検査を行なって実際にドパミン神経細胞の脱落・減少を確認することができる時代に突入したのです。

さらに、近年急速な進歩を遂げている遺伝子解析技術によって、患者さん一人ひとりの遺伝子タイプを明らかにできれば、特定の遺伝子多型(遺伝子配列の個体差)の方を選別し、有効な治療を提供することができます。

実際に、ある遺伝子タイプの患者さんに対してパーキンソン病の進行を抑制することができる治療について、私たちの研究グループの報告が大きな反響を呼んでいます。そのことについては、次の記事「パーキンソン病の治療」の中でお伝えします。

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